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34話:イベント開始したんだけど

 『ブラッドプリズナー』開始から3時間。


 街は戦火に包まれていた。


 といっても、実際に火が燃えたぎっているわけではない。

 あちこちで争いが起きているというだけだ。


「……ほんとにここから動かなくていいの?」

「大丈夫大丈夫」


 現在、俺は点心さんと共にイベントフィールドの一角で身を潜めていた。


 イベント『ブラッドプリズナー』

 このイベントでは参加プレイヤー同士はお互いのネームタグの認識ができなくなり、また顔にはヘルメットのようなものがついているせいで、容姿による判別ができない。

 体格に関しては分かるので、女か男か、大柄か小柄かくらいの判別は簡単にできる。


 更には声に関しても、加工がなされているせいで判別ができない。


 しかし、今回俺が手を組んでいるのは、点心さん一人。

 そのため、ハンドサインを知っていて合言葉を知っている女性、ということで簡単に見つけることができた。


 その時点で、1時間が経過していた。


「それにしても、なんでこんなイベントフィールドなんだか」

「多分だけど、こういうステージも今後実装する、って意味じゃない?」

「……こんなビルのステージを?」


 点心さんは、俺の言葉に難しい顔をしているのだろう、返答はない。

 今回のイベントの会場は、荒廃した都市だった。


 東の荒野のような何もない枯れ果てた風景に立てられた、ビルの数々。

 既に人が住むのは不可能だと言わんばかりの風化具合。

 今にも崩れそうなそんなビルの一つに俺たちは身を潜めている。


「景色を見る限り、同じ世界であるのは間違いじゃないんだけどねぇ」

「私達がアニメよろしく知識を伝達しろってこと?」

「見るんだ」

「一応見るね」


 世間話も交えながら、このフィールドを観察していく。


 A B C D

 E F G H

 I J K L


 フィールドは結構広大で、長方形のマップである。

 4×3で区切られていて、それぞれにアルファベットが割り当てられている。


 俺らはマップで言うとLに在中している。

 戦火がひどいのは、主にFとGの中心で争いは起きている。


 それをLの中でも一番高いビルから眺めている。


「それにしても、なんで最初からあんなに争ってんの?」

「うーん、大型のチームが襲われている風に見えるねえ」


 見えている様子では、ざっと100人以上がある人の集まりが、仲間割れをしているように思える。


「それにしても、あれは絶対シオリじゃん」

「あ、あの人シオリっていう人か。

 知ってる」

「多分襲われてるのってカイザーだよね。

 うわぁ、装備が目立つからかなり狙われてるじゃん」

「カイザー……あぁ、多分聞いたことある」


 点心さんが丁寧に戦火の中心を解説してくれているのを、俺は横で相槌を打つ。


「……有名プレイヤーとか知らないの?」

「……お恥ずかしながら」


 点心さんは、俺の適当な相づちを察したのか、質問してきてくれた。

 正直、一人で情報見ながらプレイしていると、有名プレイヤーの情報とか入ってこないんだよ。

 それにおれトーガのところで一人で気ままにやってたし。


「まずシオリ。

 女性プレイヤーの中で多分一番人気。

 生得スキルが様々な能力持ちすぎてどういうことなのか未だに解明されてない」


 シオリ、というのは戦火の中心で人を切っては捨て、切っては捨てを繰り返している人だ。

 俺と同じく双剣を扱い、空を駆けている。


「空を走っているのですが、あれは」

「後は見えないシールド出したり、見えない何かに突き飛ばされたりするらしいよ。

 空気を操作する系の生得スキルのはずなんだけど、あんまりにも色々できるせいで全貌が不明」


 立体軌道、という言葉が非常に似合う彼女は、その無双っぷりでかなりのプレイヤーを倒している。


「彼女は今回のイベントではチームを一切組まないって言ってたし、ここで襲うのは分かるけど」

「問題はセイバー、って人だよね」


 セイバー。

 こいつに関しては俺は結構知っている。

 イベントで一緒にプレイしてくれる人を探している最中にちょくちょく見かけた。


「レベル最高値の†絶望の騎士†を始めとして、結構な強さとコミュ力で一番大きなコミュニティを作っている人」


 騎士だと言わんばかりの装備は、顔を隠していても確認できる。

 そんな騎士さんが大勢のプレイヤーから襲われて、その対応をしている。


「まぁ負けないと思うけど、結構人減るだろうね」

「そうだねぇ。

 なんでこんなに最初から飛ばしているんだか」


 現在は運営側からと思われるアクションはまだ何も起きていない。

 時間的にももうすぐイベントは起きるだろう。


 普通に考えれば、このイベントは初期で何かことを起こすのは面倒である。

 勝ったとしても、運営からの何らかのイベントによって死んでしまったからもとも子もないのだ。


 そのためには、まずは大人数を生かしておくことで、イベントを回避しつつ、最後の時間で方を付ける。


 それこそが定石だ。


 だが、目の前で起きているのは、争い。


「全く、やってくれたし見つけるの大変だし」


 そこで、後ろから声がかかる。


 ここはビルの屋上の一つ下の部屋。

 窓ガラスもなく、このいい景色の中、俺と点心さんは二人で双眼鏡アイテムを構えて見ていたせいで、背後からの接敵に気づかなかった。


「お、なになにどうしたの?」


 俺はその声に少しおどけながら返答する。

 点心さんは驚いて後ろを振り返ると、顔を引き締める。


 俺も後ろを振り向くと、そこにいたのは、5名のプレイヤー。


 男3人、女2人。


 いや、


 大柄な男2人と、


 ショートヘアの女が二人と、


「アカリ」


 アカリ一人だ。


「この騒動、起こしたの君?」

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