7.予兆
喫茶店でお茶をして帰る予定だったが、予想以上の混雑の為今日の所はそのまま帰る事にした俺達。帰りの電車の中では、これからの学校生活についての会話をしていた。
「ねぇ、やっぱり晴樹は高校でも野球部に入るんだよね?」
「おう、勿論だ!俺から野球と美香取っちまったらただの成績の悪くてモテない凡人だぜ?それにスポーツ推薦で入ってるんだから、部活を辞める=退学だからな。普通科に編入も出来なくはないけど、俺の頭じゃそんなの無理だしな。それに天城の奴とはいつか大会で戦おうって約束もしたしな」
元々中学時代でさえ天城の投げる直球はかなりの威力があった。それが今の身長と合わせてどんな球に成長してるのか。想像するだけでもワクワクと身震いが止まらない。
「そうだったんだ、天城くんとそんな約束を………負けず嫌いな晴樹らしいよ。まさにライバル、なんだね」
ん?天城くん?美香と天城に接点は無かったと思うけど……いつの間にそんな呼び方するようになったんだ?前は、大会で当たったエースの人、なんて呼び方してたのに。
「あぁ、今度こそリベンジしてやる!あいつに勝つ為にこの高校を選んだんだ。なんとしてもエースになってやる。……ってか、天城のこと覚えてたんだな、美香」
「あ…………うん、前の大会の後、外で晴樹を待ってる時に声かけられたんだ。でも勘違いしないでね?ちゃんと晴樹一筋だって断ってるんだから!」
そんな事が……なに人の彼女口説いてんだあの優男は!!でも、美香がしっかり断ってると聞いて心が落ち着くと同時に、少し不安になってしまった自分を恥じた。
「そうだったんだ。でも、そんな風に言ってもらえて安心した。……美香は、マネージャーとかはしないのか?」
こんな話を続けるのもアレなので、話を変えてみる。
「う、うん。断るに決まってるじゃない!私は春樹の彼女なんだから。でも、マネージャーはやらないかな。資格の勉強とかに早くから取り組みたいし……それに、同じ部員なのに晴樹にだけ贔屓しちゃったら他の部員に失礼でしょ?晴樹専属のマネージャーなら良いけど、ね?」
からかうような笑顔にドキッとしてしまう。
「じゃあ俺は、専属のトレーナーや管理士が付いてもおかしくないくらいの選手を目指すよ。」
俺は、大好きな子にサポートされ、大好きなスポーツで食べていく。そんな大層な夢を見ていた。
実は作中での1年前くらいから………?
次回辺りから時系列が大幅に進むかもしれません。