13.さよならと再会
ようやく幼馴染みout。最後にヒロインin。作者の描写力の不足により出番が来なかったヒロインです。可愛いと思ってもらえるように試行錯誤してます。
翌日。俺は考え事をする為、かなり早めに家を出て学校へ向かう。当然、まだ誰も来ていない。一人の教室で考えるのは、美香との別れをどう告げるのか、と言う事。俺の中で、もう別れると言う結論は確定している。
だが、伝え方が問題だ。しっかりと理由を伝えなければ美香は納得しない。しかし、直接二股について言及して晒し上げる様な真似はしたくない。甘いとは思う。原因は向こうにあるのだから、糾弾する権利はあるだろう。それでも俺は、好きだった子を直接貶めるような真似はしたくないのだろう。
「今の俺にとって1番大切な物。それは……野球」
これしかないだろう。正直、あの出来事のせいで野球に打ち込んで来た自分さえも否定された気がして、情熱が消えかけてしまっている。だが、この理由が1番俺らしい。そんな事を考えていると…………
バシッ!背中を誰かに叩かれた。振り向くと、清水沙織が立っていた。
「よっ!おはよう、高橋!って、朝っぱらからなんて顔してんのよ」
「……なんでもないよ」
「そうは見えないわよ。………美香ちゃんと、何かあった?」
「……っ、なんで…」
「わっかりやすいなぁ…高橋は…。なんて、実は昨日、光から聞いて知ってたんだけど」
あんの野郎………まさか詳細に話したんじゃないだろうな……
「あはは、違う違う、かなりぼかして話されたよ。でもさぁ、高橋が落ち込む理由なんて野球か彼女しか無いじゃない。すぐ分かったよ」
そんな分かりやすいか、俺…………
「関係ない私が直接何かしたりは出来ないけど………はい、これあげる。勿体無いからちゃんと使いなよ?そんじゃね!」
これは……バッティングセンターの無料券?何でこんなもんを清水が……って聞く前に消えやがった。嵐のような奴だ…………まぁせっかく貰った物だ。放課後にでも行ってみようか。だが、先にやることを済ませなければ。
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「晴樹、どうしたの?話がしたいって……」
俺は昼休みに、体育館の裏に美香を呼び出した。
「あぁ……単刀直入に言うぞ。美香、俺と別れてくれ」
言ってしまった。もう後戻りは出来ない。
「えっ…………?何で?晴樹、どうしたの?何で急にそんなこと言うの?」
白々しい…とは言わない。だが、心当たりくらいあるだろうがよ……。
「しばらく野球に集中したいんだ。だから……ごめん。」
「そっ……か。うん、分かった。頑張ってね、晴樹」
そう言って美香は走り去っていった。その表情は何故か酷く辛そうで、少し心が痛んだ。でも、これでいい。これでいいんだ……。
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放課後、例のバッティングセンターに来た俺は、建物の豪華さに驚いていた。
「これ、本当に最新の施設だろ………。」
投手の映像とリンクしてさまざまな角度からの投球、3球種のランダムに、速度計付きのストラックアウト。捕手のキャッチング用ゲージまである。不覚にも、ちょっとワクワクしてきた。
「ふう……無料券どころか、結構使っちゃったな」
やっぱり、無心でかっ飛ばすのは気持ちがいい。沈んだ気分もバットを振れば紛れるんだから、我ながら現金だ。……もういい時間だ。そろそろ帰らないとな。
「すみませーん、バットの返却したいんですけどー!」
『はーい、少々お待ちください!すみませーん!』
明るい声が響く。この声、女の人か?珍しいな。
「すみません、お待たせしまし……っ!たっ、高橋君!?」
えっ?何で俺の名前を…………?
長々と書いた幼馴染みあっさり退場。最初からあっさりで良かったですね。今思えば。
多分しばらく出ません。次の出番は報いを受ける時(?)