11.痛み
『ちょっと君、こんな時間に何してるんだ?大丈夫かい?』
警察官に肩を叩かれて我に帰った。俺、どんだけ固まってたんだ……?時計を見ると、23時を回る所だった。なんと、2時間以上もここで立ち尽くしていたことになる。
「す、すみません。ちょっと考え事してて、ボーッとしてたんです。もう帰るので、大丈夫です。」
「そうか、もう夜も遅い。君、高校生だろう?こんな時間に学生が出歩くのは感心しないよ。気をつけて帰りなさい。」
「はい、すみません。ありがとうございます」
心境的には全然大丈夫じゃないが、こんな所で補導なんて冗談じゃない。とりあえず帰ろう。と言っても、もう終電は行ってしまっている。家まではそこそこに距離があるけど、徒歩で帰ろう。
歩く事2時間半ほど。いつもの家から通学する時の通り道に出た。この辺まで来ると街灯はほとんど無くなり民家の明かりが少し漏れてくる程度の真っ暗な道になる。
一人夜道を歩いていると、どうしても黒々とした感情が湧き上がってくる。なんかの勘違いって事はないのか?勘違いで何でキスするんだよ。脅されてたりするのか?どう見たって受け入れてた。つーか自分からもしてた。見間違える要素がない。断ったんじゃなかったのかよ。何処をとっても彼氏彼女のそれだった。
「くっそ………全部嘘だったのか?好きって言ってくれたのも全部……」
自然と、涙が溢れてくる。側から見れば、そんな事で……と思われるのかもしれない。自分でも女々しいと思ってしまう。でも、本当に大切だと思ってたんだ。大好きだったんだよ…………
自宅に着いた俺は、着替える事もなくベッドに飛び込んだ。眠りに落ちて行くのと共に、思い出が色を無くしていく。そんな感覚がした。
次回辺りから、新キャラ投入予定。