7.山に雲
山にやってきた、ショウくんとタオ。
雲行きが怪しくなり…
真っ青な空の夏の日でした。
タオとショウくんは、山に登っていました。
緑が競いあうように伸びた、木々の葉。斜面を突き抜けるようにそだった草花たち。とても気持ちのいい、なだらかな山道を二人は登っていきました。
「空気もきれいだし、気持ちのいい日だね」
ショウくんが、タオに言いました。
「うん、緑がきれいで、気持ちまでさわやかな気持ちになるね。少し、疲れたから休もう」
タオが答えます。二人は、ちょうどいい大きさの石に腰を掛け、持ってきたお茶とショウくんのもってきたひと口ケーキのおやつを食べました。
「おいしいね」
「うん。ショウくん、ケーキありがとう」
休憩の後、二人はまた歩きだしました。すれ違う人もありません。そうして、頂上まで登ってきました。
「あ、頂上についたよ」
タオがぶっきらぼうに話します。
「うん。見て、タオ。すごく景色がいいよ。
街中を見渡せるよ。あれ僕の家だ。あそこに学校も見える。川もキラキラしながら流れていてきれいだね」
「ああ、僕の家も見えるよ。ほんとに街中がみえるんだな」
しばらく二人で街を眺めていました。すると、空が暗くなってきました。雲が、山腹からわいてくるように広がり、遠くで雷も鳴り始めました。
「タオ、どうしよう。雷まで鳴ってるよ。こわいね」
泣きそうな声で、ショウくんが言います。
「大丈夫、なんとかするよ」
タオは、自信たっぷりに言うと、空を見上げました。そして、雲を一つずつ指さして、一か所にまとめていきました。その雲のかたまりを、手元に寄せて両手を広げてたぐりよせました。タオの腕の中にスッポリと収まった雲を、今度は小さくまとめていきます。そして、最後に両手の中に収まった雲をポンとたたくと、あとかたもなく消えてしまいました。
「ほら、これで大丈夫。また、青空がみえているよ」
ショウくんは、びっくりしてタオの手元と空を交互にみているのでした。
雲もすっかり…さて、どうなったのでしょうか。