5.タオとあめふらし
タオとショウくんがであった不思議ないきものの(?)お話
少し蒸し暑い日でした。
タオをショウくんが迎えにきました。今日は、公園でバスケットボールをして遊ぶ約束をしていたのです。
二人が公園に着くと、人も少なくひっそりしていました。
「静かだね。」
ショウくんが、話します。
「そう、ちょうどいい。コートもひとりじめできそうだからね」
タオは、笑って言いました。
二人はしばらく黙って、ボールをパスしあいました。ウオーミングアップです。そして、軽く息があがったところで、横並びで走りながらパスをして、シュートします。次は、いよいよ一対一の、対面での練習です。ドリブルをしながら、ディフェンスをかわし、ゴールをねらいます。攻守を交代しながら、30分程度体を動かしました。
「ちょっと、休憩しよう」
タオが声をかけました。そうして、コートのはずれの芝生の上に座り込んで汗を拭き、持ってきたスポーツドリンクをごくごく飲みます。
「よく体が動くね」
ショウくんが言います。
「何を言うんだよ。何度もボールをとられちゃったじゃないか」
タオが答えます。
「あれ?雨が降ってきたよ」
ショウくんが、濡れないようにタオルをかぶりながら話します。
「ん?ほんとだ。ちょっと待ってて。さっき『あめふらし』が、いたな。そのせいだね。僕、つかまえてくる」
と、タオは言いながら、茂みの方に歩いていきます。ショウくんは、わけがわからないまま、タオについていきます。タオは、しばらく茂みの中をゴソゴソさがしていました。
「あ、いたいた。『あめふらし』だ。もう大丈夫、つかまえたよ。このビニール袋にいれておこう」
でも、ショウくんには、なんにも見えません。上を縛った、からっぽのビニール袋が見えるだけです。
コートのそばにもどってきたタオに、ショウくんが聞きます。
「タオくん、『あめふらし』ってなんなの?僕にはみえないんだけれど…」
「え、そうなの?ここにいるよ。2センチくらいの茶色い虫みたいなやつだよ。ときどき出てきて、雨を降らすんだ。でも、こうやって捕まえて袋にいれると、雨を降らす力がなくなっちゃうんだ」
気づけばもう、雨がやんでいます。
ショウくんは、不思議そうに、空を見上げた後、『あめふらし』のいる袋を見ました。タオの持っている袋から、カサコソという音だけがしていました。
不思議ないきもの(?)は、どんなことをするのかしら…