0008:奴隷選択
「うちの従業員が失礼いたしました。この事は内密にお願いします」
「えっと……助けてくださってありがとうございました」
「いえ、私はこの店のオーナーのデニスです。従業員の管理が行き届いて無くて誠に申し訳ございませんでした。お詫びと致しまして貴族様用を除く商品を無償で提供させていただきます。つきましては今回のことは内密に……」
「カイです。えっと、冒険者です(まだ縛っただけだったとはいえ、罪も借金もない一般人を奴隷にしようとしたとなると流石に国の法律に触れるか。簡易鑑定の知識によると、最低でも実行犯とオーナーの奴隷落ち、最高では店全員とその親族の処刑か)」
「あ、どうぞこちらにお座りください。まだお若いのに冒険者とは、将来有望ですな」
デニスは何としても今回のことを揉み消したいらしく平身低頭といった具合でカイを席へ案内する。カイはなかったことにして良いのか悩んだが、商会レベルを敵に回して良いことが有るとは思えないのでもみ消す事にしたようだ。この紹介は貴族向けにも奴隷を扱っているので、何かあると貴族も出てくることになったのでカイの選択は正しかったと言える。
「えっと、奴隷を買いに来たんですが……」
「えぇ、えぇ、我が商店自慢の奴隷をお見せいたしましょう!貴族様用だけは勘弁して頂きたいですがそれ以外ならぜひとも!今回は迷惑料込みで無料に致しますので」
「失礼します。お茶をお持ちいたしました」
メイド服を着た女性はデニスが中に居るのを見ると一瞬目を見開いたがその後何事も無かったかの様にお茶を置き、デニスの後ろに控えた。
「どうでしょう?彼女は当商会でもご貴族様用に劣らない最高ランクの永久奴隷でございます。もちろん夜のお世話も可能です」
「えっと……良いんじゃないでしょうか?」
「おっと、お気に召しませんでしたか……今回はどの様な奴隷をご消耗でしょうか?永久奴隷でしょうか?契約奴隷でしょうか?」
「えっと、奴隷を購入するのは初めてなので説明からお願いしたいのですが……」
「なるほど、まず奴隷制度についてです。奴隷は犯罪奴隷と借金奴隷の2種類があります。犯罪奴隷は犯罪を犯した者を強制的に労働させるための制度です。犯した犯罪に酔って期間が決まり一定以上の犯罪では永久に奴隷になります」
デニスはお茶で唇を濡らし続ける。
「借金奴隷は借金が返せずに奴隷になった場合です。強制労働させ、借金を返却させます。こちらは返せない金額だと判断された場合に永久奴隷になります。」
「なるほど……」
「永久奴隷ではない契約奴隷の場合主人が衣食住を保証しなければならず、奴隷にもある程度の拒否権があります。しかし、永久奴隷の場合はどの様な扱いをしても問題はありません。まぁ、周囲に悪評が立つのでそこまで酷い扱いをする事は稀ですが。この奴隷は永久奴隷ですが、戦闘も夜のお世話も可能です。いかがですか?」
「えぇっと……」
「なるほど、お気に召さないようですね。こんかいはどの様な奴隷をお探しでしょうか?」
デニスはいつもどおりの説明をして少し落ち着きを取り戻したのか顔に笑みが戻ってきた。
「まず、ずっと一緒に居て欲しいので永久奴隷の子がいいです。後は私が冒険者なので冒険者家業をやってもいいと思っている子がいいですね。それと……お恥ずかしい話なのですが人間、特に大人の女性が少し怖くてですね……出来れば小さな子がいいです」
カイは永久奴隷の条件以外は赤裸々に条件を語っていく。
「(ここで失敗して嫌いな奴隷とずっと一緒にいるのは避けたいからな……)」
「なるほどなるほど、下がって条件に合う中級から最高級の子を全員連れてきなさい」
「え、いえ、そんな高級な奴隷でなくても……」
「これは私共のケジメなので口止め料ということでどうかご理解ください」
「あ、えぇ……その。分かりました」
カイはデニスの真剣な表情に勝てず了承してしまう。
「失礼します」
外で待っていたかのようなタイミングで新たな奴隷が11人程入ってくる。
新しく入ってきた奴隷たちはメイド服ではなく、きれいな貫頭衣を着ていた。
「こちらがカイ様のご希望の奴隷です。どの奴隷も12歳未満となっています。脱ぎなさい」
デニスが奴隷たちに服を脱ぐように指示を出すと全員が脱いで行く。
カイは慌てて目をそらすとデニスに話しかける。
「この中で犯罪奴隷の方は居ますか?」
「犯罪奴隷は右から5人でございます。右から2人が傷害、3人が窃盗でございます」
「えっと、お話を聞いても良いでしょうか?」
「えぇ、大丈夫ですよ」
カイはデニスに確認をとってからなるべく顔だけを見るようにして奴隷たちに話しかけた。
「ちなみに今言われた犯罪をやってないって人はいる?」
「「「「「……」」」」」
「じゃあ、とりあえず傷害の2人はちょっと……」
「下がりなさい」
「俺はそんなお金持ちじゃないから、いい生活はさせてあげられないし、初めのうちは武器や防具もまともにない状態でダンジョンに行くことになると思う。俺に買われるのは絶対嫌だって人は出ていってもらえる?」
流石に絶対に裏切れないようになっているとはいえ、敵意や害意を持ってる人間は近くに居てほしく無いだろう。嫌なら出ていけという言葉に反応して5人程が退室していった。
最終的に残ったのは少女が3人だけだった。
「1人目から自己紹介してもらってもいいかな?」
「私はエラ、非処女でーす。夜のお勤めは任せてよっ!絶対気持ちよくしてあげるから!聞きたいこと、何でも教えてあげるわよっ」
「うーん、別にいいや。次」
「なんでよ!ちゃんと聞きな「黙りなさい」」
エラはデニスに止められると途端に話すのを止めた。喋りたいけど喋れないと言ったように口をパクパクさせている。
「(なるほど、これが奴隷に対する強制力か……エラはちょっと苦手なタイプだ)」
「えっと、私はフィリーネです。10さいです……処女です……おっぱいはぺったんこです……。得意な武器は……苦無です苦無っていうのは短剣みたいなのでえっと……前衛ではなくて斥候になるんです。よろしくおねがいします」
「最後の子は……窃盗の子か(なんで処女であることを主張するのか。売りだからかな?)」
「フィネーネ……処女でおっぱいはそれなり。そこのちんちくりんよりは役に立つ。重戦士……」
「(うん、これはダメだな……)」
「では、フィリーネをお願いします」
「え?その、さっき下がったこの中にももっと良い子がいますよ?フィリーネはギリギリ中級といった具合で……もっと高い子を選んでくださっても……」
「いえ、大丈夫です」
「かしこまりました。では契約の準備を致しますのでそのままでお待ち下さい」
デニスはそう言ってフィリーネだけを置いて外へ出ていった。
明日も更新……できるかなぁ。
「やれ」
なんか最近態度デカくね?
「は?」
まぁいいや。