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0003:冒険者登録

「た、助かった……」


カイは剣を放り出し、腰が抜けたようにその場で座り込む。

女性は懐から身分証を取り出して確認する。


「あんた……何者?見た目は冒険者だけど、ハンド2匹相手に手も足も出なかったって事は少なくともgランク以下よね?それに、私火魔法なんて使えなかったんだけど、あんたが何かしたんでしょ!?」


女性は早口で捲し立てる。


「(敵性1に変わったか……?)」


「ちょっと待ってくれ、いきなり色々質問されても答えられない。それに君は誰だんだ」


カイは女性がいた事を思い出し、刺激しないようにゆっくりと剣を拾い立ち上がる。


「はぁ、そうね。当面の危険は去ったようだし……。私はアリーセよ。あんたは?」


「俺はカイだ。さっきこの洞窟?の中で目が覚めたんだが……どうもここが何処なのかも思い出せない。名前も身分証?を見て分かったくらいだ。職業は冒険者ではなかったな」


アリーセは怪訝そうに眉をひそめる。


「記憶喪失の一般人ってこと?」


「そういうことになるな……色々教えてくれると助かる」


「さっきのスキルメイカー?てのは何よ?」


「良く解らないっていうのが正直な答えだな」


「良く解らない物を私に使ったの!?」


「そりゃ悪いとは思ったけど……そうしないと2人とももっと酷いことになってたと思うが?」


「その通りだけど……実験台にされた訳だからお礼を言うのは嫌ね……なぜ自分に使わないの?」


「自分には使えないらしい……それより、ここは安全なのか?」


「安全な訳無いじゃないの。ダンジョンの中よ?あぁ、記憶喪失だったのよね……とりあえず地上へ戻るわよ。あんたの……カイの腕の治療も必要でしょ」


そう言って歩いていくアリーセの影を踏まない程度の距離を保ってカイは付いて行く。


「外に出れるのか……」


「あんた、お金は有るの?」


「少しくらいは」


「そう」


「(冒険者というのは……魔物と戦うことでお金を得るというよく小説に出てくるあの職業で間違いないらしい。魔物というのは体内に魔石を持った動物の総称か……。犬だと思っていたのはハンドという魔物らしい。それにしても頭の中に辞書があって知りたいと思ったことがパッと出てくるっていうこの感じが簡易鑑定か?気持ち悪いな……)」


「来るわよ!」


アリーセは前方からハンドが来るのを察知して剣を構える。


「また火魔法で追い払えないのか!?」


「……2匹くらいだから大丈夫よ一人で倒せるわ!」


 アリーセは火魔法が使えるようになった事を忘れていた様でバツが悪そうにしながら剣を振るう。

一度に2匹を相手にしないように1匹を叩き飛ばしてからもう1匹の頭蓋骨を叩き割る。

 戻ってきたハンドにも剣を叩きつける。


「終わりね。魔石と討伐証明だけ取っちゃうから待ってなさい」


「(魔石は魔物の体内にある石で魔道具の材料になると……電池のように使われるらしい)」


「他はそのままで良いのか?」


「ほっとけばスライムが片付けてくれるわ。行くわよ」


その後3回ほどハンドの襲撃にあったがアリーセが難なく撃退していった。


「なんでさっきはピンチになってたんだ?余裕そうじゃないか」


「私は前衛職だけど盾じゃないの!5体も同時に抱えられないわよ」


「そういうもんか」


「当たり前じゃないの……」


「(ゲームのイメージが強いから出来そうな気がするが、たしかに現実ではターン制でもなければ、攻撃を食らえば空きができるな……)」


「ここを登れば出口よ」


「ん?珍しいな、アリーセがパーティとは」


ダンジョンの入口へ立っていた武装した男性はカイ達を見ると声を掛けて来た。


「迷子の保護よ。記憶喪失だって。後は任せるわ」


「門番の仕事じゃねぇよ……ギルドにでも連れてってくれ」


「(ダンジョンの門番はダンジョンから魔物が溢れ出さないようにするために居る人か)」


「えぇ……はぁ、いいわ。どうせギルドへは行くから連れて行ってあげる」


「あ、ありがとう」


アリーセはなんだかんだ言っているが面倒見が良いらしい。


「何してるの。早く来なさいよ」


「あ、あぁ悪い」


カイは門番に会釈をしアリーセの後を追う。


------


「ここが冒険者ギルドよ」


そう言ってアリーセは大きな建物の中へ入っていく。


 中はアニメなどに出てくる冒険者ギルドと対して変わらないようだ。

正面には受付がいくつかあり、左手には酒場、右手には簡易的な治療院が併設されていた。

今の時間は冒険者が帰ってきていないのか酒場や掲示板にまばらに人が居るくらいだ。


「とりあえずお金有るなら先に治療して来なさい」


そう言って治療院へとからだを固くしたカイを引っ張っていく。


「こいつハンドに噛まれたみたい。治療お願い」


「ハンドの噛み傷か……大鉄1、5000リーンだ」


「(大鉄は大鉄貨の事で、日本円で5000円程だつまり1リーンは1円だ)はい」


カイはイーリスからもらった革袋から鉄貨大を取り出し渡す。


「はい、たしかに。■■■■■、■■■、■■■■■■■、■■■■■、■■■■■ヒール!」


治療院の職員が長々と詠唱をして回復魔法を発動させる。

するとカイの腕へ光が集まってきて傷が跡形もなく消える。


「おぉ……」


「はい、またどうぞ」


「はい、ありがとうございました(いや、また来るってことは怪我してるじゃん。来たくないわ)」


カイは手を開いたり閉じたり、肩を回したりしているが全く違和感がないようだ。


「ほら、次は受付行くわよ」


「今日はどうされました?」


「魔石の買取とハンドの討伐証明よ」


「冒険者証をお出しください」


「はい。後こいつ、記憶喪失らしいわ。(いぬ)の洞窟の1層にいたの」


「(狗の洞窟はさっきまで居たダンジョンの名前らしい)」


「ちょっとまってくださいね……ちょっと魔石と証明部位の査定よろしく!……私は受付のエリーゼです。あなたは身分証などはお持ちでしょうか?」


「これでいいですか?(身分証は神様の不思議技術で他の人には名前と年齢、賞罰位しか見えないらしい。安心して渡せるな)」


「確認しますね。カイさんですね?記憶喪失とのことですが身分証の職業欄にギルド名もないですし……まぁ、ギルドも無い程田舎出身だとどうしてもギルド証は持ってませんよね……。

どうしますか?何か出来ることが有るのでしたら何処かのギルドへ登録して、そちらの職業に就く事も可能かと思いますが……特に無いのでしたら冒険者ギルドへの登録をオススメしていますが……」


「えぇっと、冒険者ギルドへ登録をお願いしたいのですが……」


「かしこまりました。登録ですね。ではまず登録料として小銀1頂いております。登録タグも無料(ただ)では無いのでご協力お願いします」


「よろしくお願いします」


カイは革袋から小銀貨を渡す。


「こちらが冒険者の心得になります。本当に基本的なルールだけが書いてあるので目を通してください。もし文字が読めなければ説明いたしますが如何しますか?」


「いえ、読めるので大丈夫です(日本語では無いけど問題なく読めるな……スキルの影響かな?)」


「はい、ではこちらが登録票ですね。ここに血液を1滴垂らして下さい」


エリーゼはナイフと登録証をカイへと渡す。


「(血を一滴と言われても困るな……肩にまだ付いてるコレじゃだめかな?)」


カイの肩に付いていた血を登録証に塗ろうとするが、エリーゼに腕を掴まれ止められてしまう。


「他人の血液の可能性もあるので今ここでお願いしますね。自分でやるのが怖いなら私が刺しますよ

?」


「えっと、自分でやります……」


カイは恐る恐るナイフで親指の先を切り登録証へ垂らし、ナイフを返却する。


「はい、登録完了です。カイさんは11歳ですのでiランクからの開始です。師弟制度はアリーセさんで登録しますね」


「はぁ!?どうして私がこいつの面倒を見なきゃいけないのよ!」


「だってアリーセさんが連れてきたんじゃないですか。それに、アリーセさんもうeランクですよね?ギルドとしてはそろそろパーティに腰を落ち着けて欲しいのよ。ランクの査定もあるし……」


「っく……」


 アリーセはいかにも『不本意です。不機嫌です。』といった様子で胸の下で腕を組むので強調された胸に周りの冒険者達の視線が集まるが、わざわざ近寄ってこようという人は居ない様だ。


「(火魔法の件もあるからすぐ離れて会えないのは嫌なんだが……)」


カイがアリーセに目線を向けると火魔法の事を思い出したのか観念する。


「仕方ないわね……」


「アリーセさんありがとうございます。こちら査定結果です。いつもの様にギルドカードに振り込んでおきました」


「ありがと……あんた宿取ってないでしょ?行くわよ」



今日はもう1話8時頃に投稿します。(予定)


------

冒険者心得

・ランクは貴族用のG~Sランクと平民用のi~sランクに別れる。

・冒険者は自分のランクより1つ上の依頼まで受けることが可能。

・貴族用Sランクや平民用sランクは基本的に生きている間は成る事が出来ない。

・死亡した場合1ランク昇格する。

・iランクは子供用であり。この国の徴税用に登録される(他のギルドの場合もある)。

・iランクは人並み以下という事でhランクの下である。

・iランクは成人である12歳を超えるとランクアップ申請が可能。

・一定の成果を上げる毎に申請とランクアップ試験を受けることが可能。

・Cランク以上から指名依頼を受けることが可能。

・iランク以外では街の危機などに強制クエストを受ける義務が生じる

・ランクに限らず法律は守らなければならない

・hランクに上がった直後またはhランクに上る前は師弟制度があり、現役の冒険者に付いていく義務が生じる。

・冒険者登録証の売買禁止

・依頼失敗時には罰金あり


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