表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/25

壁06

「それで、結局2人は、冒険者の中ではどれぐらい強いんですか?」


 改めて尋ねると、美人姉妹の姉アクアさんが説明を再開してくれた。

 冒険者ギルドに登録すると、最初はEランクからのスタートになる。ランクというのは、冒険者ギルドが決めた制度で、AからEの5段階に冒険者を分類している。一定数の依頼を受けて完了するか、試験に合格するか、特別な功績をあげてギルドに認められると、ランクが上がる。


「実際には貢献度という数値で決まるそうです。」

「どうやって数値化するのか謎だけどね。」


 真面目に働くか、試験を受けるか、力を示すか。どの方法でも「自分は役に立つ人材だ」とアピールすればいいわけだ。ギルドがそれを認めたらランクが上がる。つまりランクは、その人の強さというよりは、ギルドから認められている度合いといったところだ。ギルドが保証する、その冒険者の信用度と考えたほうがいいか。


「つまり、本質的に「戦力」と「ランク」は関係ないが、傾向としては比例していると?」

「その通りです。」

「ちょっと何言ってるか分からない。」


 姉のアクアさんが肯定する一方で、妹のナクルさんは首をかしげている。


「……ナクルさんって、残念って言われませんか?」

「あー、よく分かったね。」


 そりゃ……な。

 アクアさんの説明はさらに続く。

 冒険者ギルドが斡旋する仕事にも、同様にAからEの5段階でランクが設定されている。これは危険度による分類だ。そして冒険者は自分のランクより上のランクの仕事は受注できない。


「弱い冒険者が危険な仕事に挑戦しても死ぬだけだからね。」

「冒険者ギルドの側にも事情があるようです。」

「なるほど……。」


 3つぐらいはすぐに思いつく。

 第1に、低ランクの依頼を受注する人員の確保。危険度による分類があるということは、危険手当のような報酬の加算もあるはずだ。逆に低ランクの仕事はドブ掃除や薬草採取など、安全だが報酬が安い仕事ばかりだろう。少々危険でも割のいい仕事をやりたいと思うのが人間の心理である。結果、報酬が安くて時間もかかるドブ掃除や薬草採取などは見向きもされない。ところがドブ掃除を怠れば雨水や排水があふれて街の生活が悲惨なことになるし、薬草が不足すれば冒険者が使うポーションだって作れなくなってしまう。ギルドとしては、こうした依頼を受注する人員を確保したいはずだ。そのためにレベルキャップ的な制度を設けたのだろう。

 あ、ちなみにポーションがあるんだそうだ。飲むか傷にかけると傷が治る液体で、鮮やかな赤色らしい。ゲームみたいだな。

 第2に、冒険者ギルドの信用度の維持。失敗が続くと信用が落ちる。冒険者ギルドに依頼しても成功しないなんて思われたら、経営状態が悪化してしまう。そうなれば依頼があまり来ない田舎の支部から順に閉鎖することになる。職員は路頭に迷い、田舎の客は依頼するのに不便になり、ますます依頼が減ってしまうだろう。

 第3に、これから冒険者になろうという人材の、間接的な確保。冒険者の死亡率を抑制することで、冒険者という仕事が危険な仕事だというイメージを抑える。せめて兵士と同等ぐらいに見て貰えれば、志願者も確保できるだろう。


「といったところでしょうか?」

「なるほど、分かんない。」

「マカベさんは賢いのですね。」

「それで、結局おぬしらのランクはどうなのじゃ?」


 そう、それだ。正確な実力別のランクではないとはいえ、傾向としてはそうなっているのだから、だいたいの偏差値が分かる。


「私たちはBランクです。私が魔術師で、妹が武闘家ですね。」

「もう少しでAランクになれると思うんだけどね。」

「上から20%ぐらいの位置にいると考えて構いませんか?」

「そうだね。」

「ランクでいえばそうですが、冒険者全体の人数から言えば、もう少し上かと。」

「真壁よ。真ん中より上になる人間がそう多いわけがないのじゃ。

 おそらく大半がCランクで、次がD、BとEが同じぐらいで、Aはほんの一握りじゃろ。」

「その通りです。」


 さすが壁子さん。無駄に長生きしているだけあって、そういう事はよく知っている。


「Bランク上位の2人が『結構名前が売れてるみたい』という程度なのじゃから、推して知るべしじゃな。

 真壁よ、とりあえずBランクを目指すのじゃ。そうすれば、それなりに名前が売れるはずじゃ。そこまでいけば、あとは爆発的に布教できるはずじゃ。」


 布教活動か……ブレないな、壁子さんは。

 俺は安全に暮らせればそれでいいんだが……とはいえ、どんな危険がある世界か分からない。壁子さんの神通力を取り戻しておかないと、対処できずに詰むこともあるだろう。やるしかない。


「そうだな。

 すみませんが、冒険者ギルドの場所を教えて貰えませんか?」

「いいよ。てか、このアークブルを運んで貰う先も冒険者ギルドだしね。」

「行き先は同じですよ。」


 美人姉妹は柔らかく笑う。

 しばらく歩いて、俺たちは街に入った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ