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18/25

壁18

 オーク帝国の討伐から数日、参加者の貢献度に応じた報酬の分配も終わり、俺たちは平常運転に戻っていた。すなわち、誰も受けないような依頼を受ける。

 その日も、そういう依頼を求めて冒険者ギルドに出向いたのだが――


「マカベさんのBランク昇格試験が受理されました。」


 受付嬢が教えてくれた。昇格試験の試験官が決まったと。

 ならば昇格試験に挑むのみだ。

 今度の昇格試験の試験官はBランク冒険者になる。だがそれは美人姉妹ではない。パーティーを組んでいる仲間では、昇格のために不正を働く可能性がある。美人姉妹が信用されていないという事ではなく、過去にそういう方法で不正に合格しようとした冒険者が居たという事だ。

 それ以来、試験官が受験者と何の関係もないという事を調査した上で、試験官になる依頼を受注する処理を進めることになっているらしい。実力不足で不正に昇格しても、そいつの身が危なくなるだけだろうに、そこまでして収入を増やそうと思うだろうか? 失敗する確率も高くなるのに……。

 ……いや、思うんだろうな。日本でも立ち入り禁止の看板を無視して侵入する奴けっこう多いもんな。海岸とかで、波にさらわれる危険があるから立ち入り禁止になっている所へ、勝手に侵入して釣りを始める奴とか居るんだよな。致死率の高い流行病が発生して政府が外出自粛を呼びかけていてもパチンコ屋へ押しかけるアホや子供を連れてデパートへ行くバカも大勢いる。あいつら自分や子供の命が惜しくないのか? と、いつも不思議に思うんだが、自分だけは大丈夫だと勝手に思い込んでるんだろうな。自分がキャリアーになって他人を殺す可能性だってあるのに、それはないものと勝手に思い込んでいるんだろうな。バカだよなぁ……。他人の所有する山に不法侵入して山菜を盗んでいく奴も後を絶たない。あれなんか外出自粛要請を無視するのと違って、完璧に犯罪だからな。やってる事が空き巣と同じなんだよ。不法侵入と窃盗なんだから。

 閑話休題。


「では、Cランク冒険者マカベさんの、Bランク昇格試験を始めます。」


 例によって今回も、Bランク冒険者の攻撃に耐えれば合格だ。


「壁生成。」


 Bランクといえば美人姉妹と同格。

 俺は油断なくタングステンをベースにした複合素材の壁を生成した。


「ほう……? これはだいぶ頑丈だな。」


 戦士が感心したように言う。


「大した強度だ。」


 武闘家がニヤリと笑う。

 こいつら、なんで見ただけで分かるんだろう? 込めた魔力の量とかか? 俺の能力だと体積に応じて魔力を消費するから、多くの魔力を使って同じ体積でより強固な壁を作るとかはできないんだが。タングステンもこっちの世界では利用されていない金属だし。もしかして一流の戦士は見るだけで相手の強さが分かるとか、そういう経験則的なアレだろうか?


「誰から始める?」


 魔術師が仲間たちに尋ねた。


「まずは俺から行こう。」


 棍棒を手にした僧侶が前に出る。


「ゴッドストライク!」


 僧侶は棍棒に大量の魔力を込めて振り下ろした。

 アンデッドなら一撃で消滅するだろう威力が、俺の壁に直撃する。


「……ふむ。無傷ですか。」


 俺の壁はアンデッドではないから、攻撃力は半減する。

 それでもかなりの衝撃が加えられたらしく、ゴワァァァン! と凄い音がした。まるで銅鑼を鳴らしたような音だった。しかし壁には何の変化もない。


「まあ、そのぐらいは耐えてもらわないとな。防御専門って言うんだったら。」


 武闘家が前に出る。

 確かに僧侶は防御や回復が専門で、攻撃力は控えめだ。俺と同じようなものだな。


「ファイナルストライク!」


 武闘家が、構えた拳に魔力を集め、壁を殴った。

 壁に亀裂が入る。信じられない攻撃力だ。素手で金属を割るとは。さすがファンタジー。たいした攻撃力だ。


「……大した防御力だ。一撃じゃ壊れないか。」


 武闘家が納得したように下がる。

 入れ違いに、戦士が前に出た。


「ディレイスラッシュ!」


 上段に構えた大剣を振り下ろすと、無数の分身がそれに続いて同じ箇所を攻撃した。

 けたたましい金属音のあとで、バキン! と割れるような音がして、壁に大きな傷ができる。貫通はしていないが、もはやギリギリだ。


「おお……! ディレイの10連撃に耐えるとは。」


 今の攻撃に自信があったらしく、戦士は驚いた様子で下がる。

 今度は魔術師が前に出た。


「嘗めてかかれない壁ですね。

 メテオストライク!」


 詠唱と同時に頭上に魔方陣が現れ、そこから隕石かと思うような炎の塊が落ちてきた。

 壁に直撃して爆発――熱風と爆風を撒き散らし、壁をバラバラに破壊する。


「まあ、ざっとこんなものですね。」


 得意げに髪をかき上げる魔術師だが、次の瞬間には驚愕に目をむいた。


「なっ!? あ、新しい壁!? 二重に展開していたのですか!?」


 当然Bランク相手に油断はしない。美人姉妹と同格の相手なら、俺も全力だ。


「あれほどの防御力を誇る壁を2重に……!?」


 試験官の冒険者たちが驚いているが、2重どころではない。壁は全部で5重になっている。青ポーションの壁を使えば無限に壁を生成できるが、今回は試験会場のスペースの都合で5重だ。

 1枚の壁を破っただけでは、俺に攻撃は届かない。2枚目の壁に挑戦している間に、1枚目の壁を再生成すれば元通りだ。もちろん青ポーションの壁を使えば、再生成で消費した魔力も回復できる。


「デタラメだな。」

「降参だ、降参。」

「なんてずるい能力なんだ……。」

「壁として生成……地面と垂直でなければ作れないとかの制限があるのかな? ……まあ、あってないようなものだろうけどね。」


 その通りだ。作ってから不要な部分を削除すれば、どんな形状の壁でも作れる。そして青ポーションの壁で魔力を回復し放題。実質、無制限だ。


「では、マカベさんのBランク昇格試験は合格です。」


 こうして俺はBランクになった。

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