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壁14

 誰もやりたがらない仕事を選んで引き受けること1週間。受付嬢の対応がだんだんと柔らかくなってきている。笑顔が増えて、ちょっとした情報を余分にくれたり、好意的になってきているのだ。処理に困る依頼を片付けてくれるから、という事だろう。


「地味ぃ~に信仰心が入ってきておるのじゃ。」


 壁子さんに地道な活動の効果が現れているらしい。

 そして、冒険者ギルドに登録した初日に出しておいた昇格試験の依頼が、とうとう受注された。


「それでは、Dランク冒険者マカベさんのCランク昇格試験を始めます。」


 今回も、試験の内容は「俺の防御は突破されるのか」という事だ。違うのは、前回の試験官がDランク冒険者だったのに対して、今回の試験官はCランク冒険者ということだけ。

 当然その攻撃は、より速く強くなっているわけだが、Bランクの美人姉妹に認められた俺の壁は、Cランクの攻撃など通さない。

 ……と思っていたのだが。


「ラスティーアーマー。」


 ローブ姿の試験官が、俺の壁に魔法をかけた。

 何かマズイぞ、という直感が働いたが、見た目にはなんともなっていないので、対処方法が分からなかった。結果、俺は様子を見ることにした。どうせこれは試験だから、死ぬ事はない。ならば、どういう効果があるのか、しっかり見て学んだほうがいいと思ったのだ。


「アーマーピアシング!」


 槍を構えた試験官が、その壁を突く。

 俺は槍が壁に弾かれると思ったのだが、予想に反して槍が壁を貫いた。


「えええ!?」

「なんと!? 何が起きたのじゃ!?」

「防御力低下のデバフをかけられて、貫通力特化の攻撃を受けたのです。」

「あれをまともに喰らったら、金属でも貫通するよね。」


 なるほど。そんな魔法があるのか。さすが異世界。

 でも、どういう効果なんだろうか? 防御力低下……金属を貫通できるようにする……? たとえば鉄を豆腐のように柔らかくする魔法があるとしたら、それを物理的に考えると分子結合が弱められたという事だろう。

 だとすると、そもそも分子結合の強さで防御力を発揮するタイプの壁は使わないほうがいい。つまり土嚢の壁ならデバフの効果を受けないわけだ。中身が砂なんだから元から分子結合ゼロである。


「もう1回お願いします。壁生成。」


 タングステンの壁を再生成した。

 ただし今回は、タングステンを粒状にしてある。そのままだとバラバラになってしまうので、壁を固定する能力によって表面だけを固定してある。


「ラスティーアーマー。」

「アーマーピアシング!」


 ドスッ! と砂を突いたような音がして、槍は壁にめり込んだが、貫通はしなかった。

 やはり分子結合を弱める魔法だったようだ。粒状物質なら元から分子結合なんてものは利用していない。それに衝撃力を運動エネルギーに変換して散らしてしまうから、貫通特化の攻撃もうまく吸収したようだ。要するに地面に杭を打つのと同じ。浅くなら簡単に刺さるが、深く刺すには強い力が必要になる。

 別の対策法として、槍の長さより分厚い壁を作るという方法もある。そっちのほうが単純だが、俺の能力は壁の体積に応じて魔力を消費する。コスパが悪いということだ。


「あっさり対策された……。」

「降参。」


 今度は試験官の2人が驚く番だった。

 事前に用意していなければ、対応できない。それが、この世界の冒険者の常識だ。途中で装備を変更することはできない。予備の装備を持ち歩く余裕がないからだ。対応できない攻撃を確認した場合は、撤退して対策した上で再挑戦という事になる。

 が、その点、俺は即座に壁を変更できる。問題なのは変更内容が有効かどうかだ。今回はうまくいった。

 試験官が降参してくれたので、俺はCランクに昇格することになった。

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