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壁13

 村を囲んで生成した防壁には、魔物の接近を知らせるセンサーの類がない。

 俺がそういう製品に詳しければ部品を生成して作ってしまえるのだろうが、残念ながらそこまでの知識はない。

 というわけで、屋上に見張り台を設置した。高さ8mの見張り台というと、3階から見渡すような高さである。周囲が1階建て(4~5m程度)ばかりなので、十分に防壁まで見通せる。

 あとは交代で見張ればいいだけだ。といっても昼間は村人も起きているから、気づいた人が知らせてくれればいい。1日中ぼーっと待っているのも退屈なので、農作業の手伝いをしながら過ごすことにした。夜だけ4人で交代で見張りを立てる。6時から6時まで12時間、3時間ずつの交代だ。


「来たぞ! 魔物だ!」


 村人が知らせに走ってきたのは3日目だった。

 だが防壁があるから慌てることはない。

 新たに生成した床に乗って空を飛び、現場に向かう。


「なかなか壮観じゃな。」


 100匹のゴブリンが壁の向こうに群がっているのを見て、壁子さんが言う。

 俺たちには余裕があった。ポーションを生成できるようになった事が大きいだろう。アクアさんが魔法を連発してもいいし、ナクルさんが暴れてもいい。俺が巨大牛のときのように壁を落としまくってもいいが、それは2人から止められてしまった。


「マカベさんはポーションを出してくれるだけで十分です。

 大魔法を連発しますから、たくさん使いますからね。」

「取りこぼしは任せて。」


 そこから先は、戦闘というより蹂躙だった。

 アクアさんが範囲魔法を連発して殲滅していき、わずかに生き残った魔物もナクルさんが突っ込んでサップバットで殴り絶命させていく。俺は2人にポーションを渡しながら、適当な位置へ飛んでいくだけだ。

 まるで空爆だった。一部のゴブリンが魔法を飛ばしてきたが、対空攻撃を予想していた俺は、床材をタングステンと超々ジュラルミンと炭素繊維の複合材にしておいた。結果、ゴブリンの魔法はまるで通用しなかった。


「ブリザード!」


 アクアさんが唱えると、冷気が吹き荒れ、バキバキと音を立ててゴブリンの群が凍っていく。


「あ、1匹だけ生き残ってるよ。あれ上位個体かな?」


 見れば少しだけ大きい個体がいて、アクアさんの魔法に耐えて動いていた。

 だがナクルさんがサップバットで殴ると、倒れてそのまま動かなくなった。


「上位個体というのは?」

「魔物は進化することがあるんです。ゴブリンからゴブリンソルジャーやゴブリンマジシャンなどに進化するんですが、たぶんあれはソルジャーの上のゴブリンチーフですね。」

「ゴブリンはDランクだけど、ゴブリンチーフはCランクだよ。」

「Bランク上位が相手では、ひとたまりもないのぅ。」


 かくして不測の事態はあっさりと収束した。


「ありがとうございます! 調査だけでなく討伐までやってくださるなんて!」

「頑丈な壁で村を囲んでくれたおかげで、これからも安心して暮らせます!」

「農作業まで手伝ってもらって、本当に助かりました。」


 感謝の念が集まったので、俺は合唱した。


「全ては壁の神ぬりかべ様のお導きです。」


 自分でやってて大根役者だなあと思うが、おお……! と謎のどよめきが起きて、ぽつぽつと「ぬりかべ様……」と聞こえてきた。

 滞在した小屋を消去して、下水を流し込んだ穴を埋め、俺たちはすぐに村を出発した。

 そして十分に村から距離を取ったところで、ずっと黙っていた壁子さんが、がばっと顔を上げた。


「やったあああ! 信者獲得なのじゃ!」


 両手を挙げて飛び跳ねるほどの喜びようだ。


「少しは神通力も戻った?」

「うむ。心を読む程度の神通力は戻ったのじゃ。

 それと、真壁よ。そなたが作った壁であれば、そこに届く音を拾うことができるようになったのじゃ。これからは見張りを立てずとも、壁を作るだけでわらわが音を拾ってやるのじゃ。」


 つまり俺が作った壁の周囲の音が聞こえるわけか。


「おお……! それは便利だな。」


 夜中の12時から3時までの見張りに立つのは、正直しんどいものがあった。睡眠時間がぶつ切りになるのだ。ちょっと寝不足で、どうもスッキリしない感じがある。

 通信機として使うこともできるだろう。スマホぐらいの壁を持たせて美人姉妹を別行動させ、壁子さんが美人姉妹の声を拾って俺に報告。俺は持たせた壁を変色させて、絵や文字を表示することでメッセージを送ることができる。もっとも、文字はこれから覚えないといけないが。


「この調子でどんどん信者を増やすのじゃ!」


 壁子さんは上機嫌に高笑いする。


「まあ、焦りは禁物だよ。大きい成果を出しても、日頃の行いが悪いと信頼して貰えない。

 地道に依頼をこなしていこう。できるだけ他の人が敬遠するようなやつを、率先してやっていくといいんじゃないかな。」

「そうですね。お金に困っているわけでもありませんし、それがいいでしょうね。」

「それじゃあ、とりあえずドブ掃除やる?」


 Eランクの依頼だが、Dランクの俺でも受注はできる。受注できないのは、自分より上のランクの仕事だけだ。だからBランクの美人姉妹が俺と同じ依頼を受けることもできている。


「やってみようか。」

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