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壁11

 俺は天才かもしれない。

 ポーションが存在するという話を聞いて、じゃあ魔力回復ポーションもあるんじゃないかと思ったのだ。

 そして、実際それはあった。青色の液体だ。体力や傷を治すポーションが赤色なので、赤ポーション・青ポーションと呼び分けられているらしい。

 効果の強さに応じて青色が鮮やかになり、一番強いやつだと輝いているように見えるほどだ。値段も効果に応じるが、一番効果が強いやつを1つ購入した。なんと金貨10枚だ。10万円の栄養ドリンクと思うと恐ろしく高いが、それで命が助かる場面があるかもしれないと思うと、いざという時のために1つは持っておきたい。

 だが、そんなポーションを、俺は怪我もしていない、魔力も満タンの状態で開封する。


「まず、これを飲む。……ぐびぐびっと。」


 飲む。つまり、口の中でポーションに触れる。


「そして壁生成。」


 現れるポーションの壁。輝くような鮮やかな赤と青。

 魔法を使う、ポーションの壁で回復、傷と体力と消費した魔力が回復する……無限ループの完成だ。


「マカベさん、結婚して下さい。」

「お姉ちゃん!?」


 突然の求愛に、俺も理解が追いつかない。


「青ポーションを無限に生み出せる魔法なんて、魔力が無限になるのと同じじゃないですか!

 そんなの、魔術師だったら誰でも喉から手が出ますよ!」

「ふはははは!

 わらわの神通力の素晴らしさが分かってきたようじゃのう!」

「はい、壁子様。それはもう、しっかりと。」


 増長する壁子さんと、それに乗っかってしまうアクアさん。

 さらにナクルさんまで何かブツブツと言い始めた。


「確かに赤ポーションが無限に貰えるなら、体力無限の不死身になるんだから、実質私も無敵じゃ……?

 マカベさん、私とも結婚してよ!」


 ナクルさんまでおかしくなった!

 美人姉妹が2人して俺に詰め寄ってくる。

 なんだ、このカオス……。


「ちょっと待って。」


 美人姉妹がちょっとおかしいのは、そういう価値観だからと納得することにして……問題は、俺がそれを受け入れるかどうかだ。

 これだけの美人姉妹に求婚されて、悪い気はしない。冒険者としても戦力は高いし。ポーションを提供することで2人の戦力増強になるなら、仲間として提供を拒む理由はない。短い付き合いだが、性格も付き合っていくのに困るような事はなさそうだ。パーティーは今後も組んでいきたい。

 だが、結婚するとなると話は別だ。美人で、強くて、性格に問題がない。俺が美人姉妹を評価できる部分は、これだけだ。付き合いが短くて、まだそれだけしか知らないから、これは仕方のない事だ。だが条件が合えば他の誰かでも構わないという事になる。ろくに調べていない企業に入社面接を受けに行って「なぜ我が社を?」と言われたときのような気分だ。つまり、どうしてもこの人でなければ、という強い理由がない。

 まあ、相手が俺を好いてくれるというのなら、それでも構わない。だが、美人姉妹が俺を求める理由は、俺を好いているからではなく無料で無限のポーションが欲しいからだ。同じ事ができれば他の誰かでも構わない。ポーションを生成するのは無理でも、ポーションを潤沢に購入してくれる金持ちがいたら、そちらでも構わないわけだ。


「とりあえず落ち着こうか。

 ポーションが欲しいだけなら結婚しなくていいでしょう? パーティー組んでる仲間なんだから、ポーション出すぐらい惜しまないですよ。」


 そう言うと、美人姉妹はちょっとだけ落ち着いた様子で俺から離れた。


「まあ、そう言うなら、とりあえず……。」

「そうだね……。」


 だいぶ渋々といった様子だ。

 解せぬ……。ポーションが欲しいだけなんじゃないのか……?


「ナクル、絶対にマカベさんを逃がさないようにしましょう。」

「うん、お姉ちゃん。ポーションをその場で生成なんて、あり得ない便利さだよね。」

「持ち運ばなくていいというのは大きいですね。」

「重くないし、かさばらないし、瓶が割れる心配もないからね。」

「解毒剤や貴重な鉱石なども、わずかに手に入れればマカベさんに増やして貰えるわけですし。」

「私たちが知らない素材も出せるもんね。サップバットとか何でできてるんだろ?」

「どうやらマカベさんは自分の価値に気づいていないような気がしますね。」

「なんとか籠絡しないとね。他の女とくっついてパーティー脱退なんて事は絶対に避けないと。」


 美人姉妹がなにやらボソボソと話し合って、力強くうなずき合っていた。

 なんだかちょっと我が身の危険を感じるような気がするが……気のせいだよな?

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