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森の中で

 うーん、ここはどこだ?


 確か俺は魔王城の自室の片づけをしていたはずなんだが、完全に緑豊かな森の中にいるぞ。


 俺は手に持ったままだった『癒されたいあなたに贈る、最高のバカンスを』と書いてあった魔道具を改めて見てみる。

 

 ん?裏になにか書いてあるな。


 『この魔道具は転移用アイテムです。バカンスに行きたい場所を言って頂くと自動的に発動してその場所に転移します。ただし、魔力は片道分しか含まれていませんので2個セットでお使いください』


 なるほど。さっき俺が「どこか緑の多いところでのんびり過ごしたいよ・・・」とつぶやいたのが発動条件に当てはまったということか。


 つまりこいつはバカンスを楽しむための魔道具というよりは、バカンスをするための場所に行くための魔道具というわけだ。


 しかし、なかなかアブない魔道具だな~。


 つぶやいだだけで転移させられるなんて失踪事件になりかねないぞ?


 まあ、俺は普通に転移魔法が使えるから何の問題もなく元の場所に戻れるが・・・。


 あれ?もしかしてこの魔道具、俺にとっては何の意味もなくね?ものすごく無意味じゃねえ?


 ・・・やっぱり、深夜のテンションで買った通販なんてこんなもんか。


 まあ、いいか。せっかくだからこの急なバカンスを楽しんでみるか。

 なにしろこっちは絶賛失職中だ。

 時間はいくらでもあるのだ。

 今まで働きづめだったからなあ。

 たまにはこういう所でのんびりと散歩をするのも悪くないかもしれないな。


 緑がいいなあ。なんだか心が休まるよ。


 小鳥たちの鳴き声や風に吹かれて揺れる木立の音も心地いい。


 こうやって自然の声に耳を傾けるのもいいもんだなあ。


 今まで気づかなかったけど、ホント自然っていろんな音を出していたんだなあ。


 小川の流れる音、虫の声、木の葉を踏む音、そして時おり聞こえてくる人間どもの悲鳴と魔獣の咆哮・・・。


 ん?人間の悲鳴と魔獣の咆哮!?


 俺は耳を澄ましてその場所を把握するととりあえず近くまで転移する。


                 *  

                   

 

 「姫、お逃げ下さ、ぐああああ!」


 俺は木陰がら見ているのだが、人間どもの集団が巨大な魔獣に襲われている。


 あれは・・・アーマードグリズリーか。簡単に言うとデカい熊だ。

 まあ、大きさは普通の熊の5倍はあるが。


 これだけ大きな個体になると人間どもにはかなり脅威だろうな。


 アーマードグリズリーはその名の通り鱗状の装甲が全身を覆っているので人間どもが普通の剣で倒すのはなかなか骨がおれるだろう。


 この鱗がくせもので、火炎や、氷系などの元素魔法もかなり効き目が薄い。

 防御力が鉄壁で、力があるわりに動きも素早いのでこいつを数人ががりでも倒せるようになれば、まあまあ強い人間だと言ってもいいだろう。


 おっ。また、人間の騎士が突撃して吹っ飛ばされてるな。頭と胴が別々に。

 

 次の奴は・・・。おおっ!一撃当てたな!まあ、装甲に弾き返されて傷一つつけられていないが。

 そいつ自身は反撃されてぐちゃぐちゃに傷だらけの肉塊になってるけどな。

 

 残るは女騎士と姫?かな。


 おーおー。女騎士さん手が震えてるぞー。姫さんの方はなんか祈ってるみたいだな。

 この後に及んで神頼みか?

 いやあ、神はいないと思うぞ?

 いたとしてもいきなり現れてアーマードグリズリーを始末してくれるような神はいないだろう。

 人間が祈ったくらいで現れて助ける神がいたら数十の国を滅ぼした俺だって今頃無事じゃねえはずだからな。


 おおっと、アーマードグリズリーが思いっきり右手を振り上げて・・・。

 

 女騎士の頭が吹っ飛ぶ!

  

 とはならなかった。


 アーマードグリズリーの右手は見えない壁に阻まれるようにして止まっている。


 おおっ!聖域か?珍しい物を使うなあ。

 祈ってたように見えたのは聖域を張るためだったのか!

 

 聖域を作れる人間はかなりレアなので俺も思わず身を乗り出してしまう。

 

 ガサッ!


 俺の踏み出した音にアーマードグリズリーが反応する。

 どうやら俺も獲物に見えているらしい。

 まあ、俺も人間タイプの魔族だから仕方ないのか?

 

 アーマードグリズリーは知能の低いバカだから聖域の中の二人をとりあえずあきらめて俺に狙いを定めてくる。


 ホント・・・バカだなあ。


 俺は突進してくるアーマードグリズリーに静かに一言告げる。


 「我は汝に宣告する・・・。カウント、ゼロ」


 「ぐっ!」


 アーマードグリズリーは一声うめいて絶命した。


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