旅立ち
「本当に行くのね?」
見送りに来ていたジャンヌは珍しくしおらしい態度だ。
「まあ、こいつもいるし大丈夫だろ」
俺の背後に控えるように浮遊している魔法人形を見返りながら言うと
「まあ、そうね。魔法タイプのあんたがそいつを連れていると敵なしでしょうね」
ジャンヌも俺がダンタリオンからぶんどったこの魔法人形の強さは認めている。
というか魔力の再充填の際にジャンヌも手伝ってくれたのだが「少し遊ばせなさいよ」とちょっかいをかけてきたジャンヌと魔法人形はいい勝負をしていたのだ。
熱くなったジャンヌが本気になって壊される前に俺が止めたこともあるが、それでもジャンヌ相手に互角と言っても過言ではない戦いをしていた。
改めてダンタリオンの奴はめちゃくちゃな物を作っていたんだなと思う。
「あたしも付いて行ってあげようか?」
「いや、いいよ。ジャンヌがいたらそれこそすぐに暗黒魔界も制圧できそうだからな」
そう。俺がこれから向かうのは暗黒魔界だ。ジャンヌは『つまらない場所』だと言っていたがやはり俺としては魔族の発生の地であり、今でも強力な魔族が跋扈している言われる暗黒魔界に興味があるのだ。
ダンタリオンに「今後はどうするんだ?」ときかれたときに思わず答えたのがこの暗黒魔界行きで、それが、妙にしっくりきたのだ。
ただ、その場所すらも『つまらない場所』と言い切ったジャンヌを連れていては、単なる観光旅行になってしまうだろう。
「あんたもダンタリオンを見習って少しはおべっかをいうようになったの?」
ジャンヌは笑いながらからかってくるが、あいにく俺は本気だ。
「そういうわけじゃないんだか・・・。それに連れはもういるしな」
「どういうこと?」
ジャンヌが怪訝な顔をしていると、
「お待たせしましたー!」
大きな荷物を背負ったリィンが立派なものを揺らしながら走ってくる。
「あんた、まさか・・・」
「仕方ないだろ。連れて行かないと死ぬって言うんだから・・・」
リィンは俺と約束した『クロス王国を救ってくれたら私の全てを差し上げます』を逆手にとって、自分の命はすでに俺のものだから「連れて行かないと死にます」と脅迫してきたのだ。
本来なら人間の小娘が死んでもどうとも思わなかったはずだが、しばらく一緒に過ごしているうちに俺も少し人間に対して甘くなったらしい。
死なれるくらいなら連れて行くと約束したのだ。
「それなら、あたしも付いていくわよ!連れて行かないと・・・」
なんだ?お前も死ぬとでも言うのか?
「・・・殺すわよ?」
・・・ですよねえ。
「しょうがないな。言っておくが俺がリーダーだからな。それは譲れないからな」
「もちろんよ。ちなみにあたしが副リーダーね」
ジャンヌが念を押すようにリィンに言うと、
「わかりました」
リィンは素直にうなづいている。
うんうん。序列が理解できるのはいいことだ。さすがに人間がジャンヌにケンカを売ってもどうにもらならないからなあ。
「私はリーダーの奥方ということで」
!!?何を言い出すんだ?リィンは?
ジャンヌがめっちゃ眉間にしわを寄せてぴくぴくさせてるんですけど?!
「じゃあ、リーダーはこの魔法人形と交代よ!あたしは魔法人形派としてクーデターを起こすわ!この決定に文句があるならあたしが相手になるわよ!」
「おい!なにが悲しくて魔法人形をリーダーにしてそれに付いて行かないといけないんだよ!・・・ってなんで嬉しそうにしてるんだ!魔法人形の癖に!やろうってのうか?この野郎!」
・・・こうして俺の暗黒魔界への旅立ちは始まった。
超強力な魔法人形と大魔王の娘と聖女を連れた元魔将が暗黒魔界でどう過ごしたかはまた別のお話。
最後まで読んでいただいてありがとうございます。
初めて一人称に挑戦したのですがとても難しかったです。一人称で書ける人はすごいですね。
あと、エロとギャグも多めにと頑張ってみましたがこれも難しかった・・・。




