ダンタリオンの告白
「ところで私の計画の何が知りたいのだ?」
「お前は魔王軍に逆らう事になってでも、クロス城に聖なる力がはたらいている事をなんのために黙っていたんだ?」
「そんな事は決まっているだろう。あの城の力を使って、他の超上位魔族を殺すためだ。私以外の超上位魔族は全て殺すために魔法人形も作ったのだ」
断言するダンタリオンだが、それがわからない。
他の超上位魔族を殺してさらに出世するつもりだったのか?
俺と違ってこいつは魔将からリストラされたわけでもないし、今の地位は実力以上のものだろうに。
現状に満足することはあっても、不満を持つなど理解しがたい。
こいつ程度の実力で今以上の地位を望むのは無謀を通り越して、もはや考えなしのバカとしかいいようがないぞ。
「他の超上位魔族を倒してどうするつもりだったんだ?まさかお前が魔王にでもなるつもりだったのか?」
さすがにそれはないだろうがこいつのバカさ加減を見ているとそんな心配すらしてしまう。
「違う!そんな大それたことが私程度にできるはずがないだろう!」
うーん、『自白の強制』を使っているから真実なのだろうがずいぶんと自分がわかっているじゃないか。
「じゃあ、何のためにしたんだ?」
「・・・怖かったのだ。実力のない私が魔将としての地位にいることに。私は魔将としては強い方ではなかった。むしろ弱い方だろう。それなのに魔将が12魔将から8魔将に減ったときにも私は魔将として残った。さらに元魔将であるアンドロマリウスを部下として迎え入れる事にもなった」
「なんだ、自慢か?いい事ばかりじゃないか」
実力がなくても高い地位を得られて優秀な部下にも恵まれる。なにが怖いんだかわからんぞ。
「これだから実力で強い奴は困るのだ。考えてもみろ。自分よりもはるかに強いアンドロマリウスが部下になったのだぞ!そんな事は不安要素でしかない。・・・あいつは私が軍勢を使っても苦戦していた都市国家をたった一人で制圧したのだぞ?いつ、この私を脅かす存在になるかわかったものではないわ!」
「だから、自分よりも強いと思われる超上位魔族を始末しようって考えたのか?」
「そうだ。そうすれば私が弱くてもそれ以上の存在がいなければ問題なくなるからな」
うーん、なかなか理解しがたい思考だな。まあ、強力な魔法人形作ったり、聖なる力を利用しようとするその努力は認めるが、もっと他にやり方はなかったのかね。
「そもそも、なんでそんなに実力がないのにお前は出世したんだ?」
こいつはゴマすりインケン野郎だが、それだけでそんなに上から認められるとは思えない。魔王軍もそこまで腐ってないだろう。
「それは私の特殊魔力のおかげだ。貴様にもあるだろう。魔族としての特殊魔力が。私の特殊魔力は『阿諛』だ」
一定以上の力を持った魔族は固有の特殊魔力を発現させる。
俺の場合は『認識操作を範囲指定として使ったときの範囲が異常なほど広い』のが特殊魔力だが、こいつは『阿諛』、つまり相手にゴマをする事で実力以上の評価を得る事ができるというわけか。
ダンタリオンも精神魔法を得意としているからそれに関連した特殊魔力だと思っていたがまさか『阿諛』だったとはな。
ただ、『阿諛』は精神魔法でもそれほど重要視されていない。
あくまでゴマすりをすれば実力以上の評価を得られるが、他の精神魔法と違って相手の根本までは操ることできないからだ。
せいぜい、出世が少し早くなる程度だろう。
「ふっ、『阿諛』程度が特殊魔力と知って私を侮っているだろう?だが、私の『阿諛』特別だぞ。・・・『阿諛』は他の精神魔法と違って格上にも効果があるのは貴様も知っているだろう?」
ダンタリオンの言うように精神魔法は基本的に強力な効果を持つものほど格上には効かない。効果が緩やかなものでも同格くらいまでしか効かないのがほとんどだが、『阿諛』はその性質上、格上にも効果があるのだ。
まあ、ゴマすりの魔法が格下にしか効かなかったら意味がないからな。
「それは知っている。だが、限界があるだろう」
『阿諛』効果があるのはせいぜい自分より多少上の相手だけだ。実力に差がありすぎたらやはり効果はないのが普通だ。
「その顔・・・。『阿諛』程度でどこまでできるかと思っているだろう?だが、その認識は甘いぞ。さっきも言ったが私の『阿諛』は特別なのだ。何しろ魔軍統括司令にも効いたのだからな!」
マジかよ!すっごいな。
魔軍統括司令、つまり大魔王様の息子に精神魔法が効いたのか?!
俺の『認識操作』じゃあ、自分より少し弱いのダンタリオンにすら効果がないのに、こいつの『阿諛』はめちゃくちゃ格上の魔軍統括司令にも効くのかよ!
「驚いているようだな」
そりゃ、驚くわ!っていうかこいつが魔将として残ったのはまさか・・・。
「そうだ。私が魔将として残ったのはこの『阿諛』の力のおかげだ」
俺の疑問がわかったのかダンタリオンは衝撃の告白をする。
マジかよ・・・。『阿諛』、侮れないな・・・。
「それだけではないぞ。十二魔将から、八魔将になったのも私が『阿諛』を使って魔将の数を減らすように進言したからなのだ。魔将の数を減らせば私が魔将から外れると思っていたのだが、『阿諛』が効きすぎて結果私は残ることになってしまったがな」
「な、な、な・・・・・・」
俺はショックを受けすぎて言葉が出てこない。
お前のせいだったんかい!と心の中で突っ込む事しかできなかった。




