魔法人形は・・・
ダンタリオンの命令に従って自分とその主人以外のすべてを抹殺しようと魔法人形は動きかけたが、急に動きを止めてそのままの形で床に落ちるとピクリとも動かなくなる。
一瞬、なにが起こったのかわからないようにダンタリオンも魔法人形と同じように固まっていたが、
「なんだ?どうしたというのだ!?おい、しっかりしろ!」
顔面蒼白になったダンタリオンがあげる悲鳴が俺の耳に心地よく響いてくる。
う~ん、いい声だ。この慌てようが見たかったのだ。と言ってもただ眺めているわけで芸がない。俺はこの瞬間にダンタリオン心の隙をついて『自白の強制』を完全なものにする。
これでこいつは俺の質問には絶対に真実で答える事になったはずだ。
そうしている間にもダンタリオンは魔法人形をなんとか動かそうと、一心不乱に揺さぶったり、ひっぱたいたりしているが全然動かない。
「あれえ?おかしいなあ?ねえ?動いてよ?」
魔法人形をひっくり返して覗き込んだりしながらなんか可愛い声掛けをしているが、どうやっても動かないぞ。そいつは別に壊れたわけじゃないからな。
その魔法人形は内蔵されていた魔力を使い果たしてエネルギー切れになっているだけだ。
もちろんさっきの俺との戦いでエネルギー切れになったわけではない。
そんな短時間でエネルギー切れなる物をダンタリオンも作るわけがないのだ。
これは俺がこの玉座の間に範囲指定でかけた『認識操作』による結果だ。
簡単に言うとこの玉座の間という空間に三百年の時がたったと認識させたのだ。
パワーはめちゃくちゃすごいが、そのぶん燃費がかなりの悪そうな魔法人形だったからな。
三百年も時間が経てばエネルギー切れを起こして当然だ。
範囲指定でかけているのでダンタリオンもその範囲に入っているがダンタリオンはその効果に気づいていない。
だが、それはダンタリオンが弱いからじゃない。
強いからだ。
なんだかんだいってこいつも魔将だからな。このくらいの奴になると俺の『認識操作』も効果がないのだ。
自らに効果がなかったためにダンタリオンはこの魔法人形がエネルギー切れを起こした事に気づけないのだ。
まあ、効果があったらあったでこいつは三百年飲まず食わずだった事になってさすがに弱っていただろう。魔族なので寿命的には三百年程度ではたいしたことはないから死ぬことはないが。
これで魔法人形は無傷で抑えることができた。ダンタリオンを始末したら俺の物にしよう。魔力を入れなおしたらまだまだ使えるからな。
「ダンタリオン、お前の負けだ。お前の計画をすべて話すんだな」
「何をバカな!私はまだ負けてなどいない!全て話すから一言も漏らさずに聞いておくのだぞ!」
しっかり『自白の強制』にかかっているダンタリオンは負け惜しみを言いながら無意識に語り始めたのだった、




