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ダンタリオンの切り札

 「ダンタリオン、いろいろとコソコソとやっていたみたいだな。まあ、そういう事がお前のようなインケン野郎にはお似合いだがな」


 俺はダンタリオンに語り掛けながら『自白の強制』と『憤怒』の精神魔法をその声にのせていく。

 ただし、それとわからないようにごく軽い効果のものを少しずつかけている。


 普段のダンタリオンなら俺がいくら巧妙に隠してもそれに気がついただろうが、今まで黙って精神魔法を防いでいただけの俺が急に話しかけたことで意識の隙ができている。


 「それはこちらのセリフだ!貴様のせいで私の計画は全て水の泡だ!ただでは殺さんからな」


 案の定、俺に精神魔法を防がれ続けていてイライラしていたダンタリオンは俺の軽口で簡単に『憤怒』状態になる。


 『憤怒』は喜怒哀楽の中で怒る事を優先させる精神魔法で正常な判断がしにくくなるものだ。

 もちろん正常な判断がしにくくなると言っても、『狂戦士』のように戦い以外なにも考えられなくなるわけではない。

 ただ、冷静な状態であればしない行動を怒りに任せてしてしまいやすくなるだけだ。


 「ただでは殺さないってなにかくれるのか?俺はお前なんかにもらいたいものなんてないぞ?」


 俺の挑発に『憤怒』状態のダンタリオンはこれまた簡単にのってくる。


 「その減らず口もそこまでだな。いでよ、我がしもべよ!」


 ダンタリオンの声に呼応して漆黒の魔法人形が空間転移で出現する。


 ・・・なんだ、これ?


 俺が目を見開いているとダンタリオンは満足そうにうなずいている。


 「これは本来は魔将相手に使う予定だったのだが、特別に貴様を葬り去るのに使ってやろう!ありがたく思え!」

 

 俺を魔将扱いしてくれるって事か。そりゃ、ありがたいね。

 まあ、それだけでなく『憤怒』のおかげで俺に使うつもりなかったこの魔法人形を使うことになったんだろうがな。


 っていうかこいつやっぱりクロス城の聖なる力の事を隠していた事といい、この魔法人形といい、魔王軍に対して良からぬことを考えていたようだな。


 でも、俺が驚いたのはそう言うことじゃないぞ。問題はこの魔法人形の形状だ。


 一つの頭に顔が四面についているが、その顔には鼻も口もなく黒く底光りしている目しかついていない。

 それだけでも異様だがタルの様な胴体にはやたらに長細い腕が8本も生えているくせに足は一本もない。

 その腕についている手の形状はそれぞれ大きさも形も違っている。恐らくそれぞれに別々の仕掛けがほどこしてあるのだろう。

 まあ、空中に浮いているから足は必要ないかもしれないがそのおかげで余計にバランスの悪さが目立っている。

 

 「はーはっはっはあー!驚いたか!」


 ああ。驚いたな。まさか、ここまで趣味の悪い物を出すとは思わなかった。


 「もうちょっと、デザインがどうにかならなかったのか?」


 俺が呆れた声を出すと、ダンタリオンは自尊心を傷つけられたように顔を引きつらせていたが、やがて思い直したように魔法人形の解説をし始める。


 「ふ、ふん!強がりもそこまで言えれば大したものだな!だが、この魔法人形は特別製だぞ!ドワーフどもやエルフどもにに200年もかけて作らせたのだ。まあ、頑張らせ過ぎて完成するまでに3000人以上は死んだが、やつらもこの素晴らしい魔法人形を作る犠牲になったなら本望だろう」


 こいつ・・・精神魔法でドワーフやエルフを操って、無理やりこの魔法人形を作らせていたな。

 そうでなければ犬猿の仲のドワーフとエルフが協力して同じものを作るわけがないからな。


 だが、卓越した金属加工技術を持つドワーフの技術で外身になる人形を作って、洗練された魔力の持ち主であるエルフがプログラムした魔力を注入されている魔法人形となるとなかなか厄介かも知れないな。普通ではありえないものだからな。


 「それはスゴイな。いったいどんな能力なんだ?」


 「まずは見ての通り、こいつは空中浮遊しているから貴様のわけのわからん落とし穴の魔法を通用しないぞ!」


 まあ、そうだろうけどあれをよけるだけなら飛べる魔族なら誰でも大丈夫だろ。そんな事を威張られても何の参考にもならんな。見ればわかるし。


 「他には?」


 「知能は私の命令を聞くだけしかもっていないが、パワーはすごいぞ?その防御力と攻撃力は肉弾戦タイプの魔将すら軽く上回っているのだ。そして炎や雷、氷にも強いボディになっている。さらに八本の腕にはそれぞれ強力な魔力の仕掛けを施しているし、魔法人形なので貴様の得意とする精神魔法も効かない上、生命をもたないから当然、貴様の切り札としている『死の宣告』の即時発動も効かないぞ!」


 ダンタリオンはドヤ顔で解説を続けてくれる。


 なんかとにかく強くしようと設定をゴテゴテと盛り込み過ぎているのがまるで子供の発想だ。


 子供の発想でも普通に戦ったら強いんだろうけど。


 だが、残念だったな。


 この魔法人形は他の魔将には有効だったかもしれないが、俺相手にはめちゃくちゃ相性が悪いって事を教えてやるよ。

 大人の俺がな。

 

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