戦い⑤
ロバートの上段からの攻撃をアンドロマリウスはあえて大刀で受けずに半身でかわすと、大刀を横切りに斬りつけるが、それはロバートに読まれておりあっさり聖剣で止められる。
だが、そこで終わるアンドロマリウスではない。
受け止められた大刀を片手に持ちかえると、空いた左手で小刀をロバート飛ばす。
それをロバートは体勢を崩しながらもなんとかかわして距離をあけるが、すぐに踏み込んで今度は中段から突き上げるようにアンドロマリウスの首を狙っていくが、これは受け止められて聖剣と大刀が火花を散らす。
なかなかいい勝負をしているじゃないか。
ロバートとアンドロマリウスが戦うのを俺はのんびり眺めていた。
・・・別にさぼっているわけじゃないぞ?
俺が参加する必要がないのだ。この城の聖なる力によって弱体化し続けているアンドロマリウス相手ではロバート一人で十分だ。
実際、かなりいい勝負をしている。
魔気だけでなく、肉体的な弱体化も進行しているので今のアンドロマリウスはロバートよりも身体能力でも劣るくらいだが、その剣技でごまかして互角に戦っているにすぎない。
逆に言えば身体能力が落ちてきているアンドロマリウスを仕留めきれないロバートがふがいないくらいだ。
もうちょっと頑張れよ、弟子!師匠は悲しいぞ。!
「聖なる封印!」
「あっ、おいリィン!」
決着がつかない事と何もしない俺にしびれを切らしたのかリィンが聖なる封印を使う。
あーあ、せっかくロバートを実戦で鍛えようと思ったのに・・・。
リィンの唱えた聖なる封印は一瞬ではなく完全にアンドロマリウスの動きを止めている。
もう聖なる封印を破るだけの力が残されていないのだ。
悔しそうにうめいているが声も出せないアンドロマリウスにロバートは無情にも聖剣を振り上げる。
「このような終わり方は本意ではないが・・・覚悟!」
ロバートの聖剣がアンドロマリウスをとらえる前に俺は素早く近づいてアンドロマリウスをはるか後方へ蹴り飛ばす。
ガンッ!
あっ、柱に当たった。
うわー、頭から青い血が流れてるなあ。痛そうだ。
ちょっとやりすぎたか?まあ、聖剣で真っ二つにされるよりはマシだろ。
「師匠!?」
ロバートが非難の声を上げるが俺は無視してアンドロマリウスに念話で話しかける。
(アンドロマリウス!聞こえているか?ここから立ち去れ!)
(何をバカな!人間なんぞに負けて逃げる事などできん!)
こいつ、この状態でもあきらめないのか。
相変わらず強情な奴だ。
(あきらめろって。この城では魔族は力を奪われるんだ。しかも魔族としての力が強ければ強いほどその影響が強くなる。超上位魔族のお前ならそのうちここにいるだけでくたばるぞ!)
(うそをつけ!お前は全く力を奪われているように見えないぞ。どうせこれもお前の仕業だろう)
あー、そう受け取ってしまったか。
俺の計画ではアンドロマリウスにこの城の聖なる力を実感させてから速やかに逃がそうと思っていたのだが、いろいろやり込めてやったおかげか俺の言葉が信じられないらしい。
まっすぐな奴だったのにずいぶん疑りぶかくなっちゃって・・・。
まあ、俺のせいかもしれないけど。
(どう思おうが勝手だが、勝ち目がないのはわかっているだろう?このまま戦って死んだら幼い子供はどうなるんだ?まだ100歳代なんだろう?)
(それは・・・)
アンドロマリウスの一番痛いところをついてやるとさすがに口ごもる。
(とにかくさっさと帰るんだな!)
俺は念話で捨て台詞を言うと空間転移でアンドロマリウスを城外に飛ばしたのだった。




