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大魔王の娘

 俺は魔王軍を辞める事にしたがとりあえず部下たちの身の振りようは考えてやらなければならないだろう。


 いくら自分が辞めると言っても部下たちをほっておいては無責任すぎるってもんだ。


 なにしろ十二魔将から八魔将になったのだから当然魔王軍内の役職の数も減っている。


 残った八魔将の下に元々いたやつらはいいが、俺の部下のように魔将ではなくなった者についていた魔族は新たに八魔将の下に入らなくてはいけない。

 そうなると必然的によほどうまくやらないと今よりも低い役職になってしまうだろう。


 もっとも部下たちの多くは、俺に従って魔王軍を辞めると言い出していたが(泣かせる連中だよ全く)俺はそれをいさめて他の魔将につくように説得したものだ。

 俺ならいざしらず、それほど強くない魔族が一人でやっていくのは大変だろう。

 孤児だった俺は何度も死にそうな目に合ったからよくわかる。未熟な魔族は強い後ろ盾がなければ人間界ですら生きていくのは難しいのだ。


 だから俺はこいつらができるだけいい条件で他の魔将の配下になれるようにしなくてはいけない。

 そうなると他の魔将に部下たちの事を頼まなくてはいけないわけだが、今の八魔将の中で俺が頼みに出来ると言えばあいつしかいない。



             *


 「それであたしのところに来たってわけ?」


 俺の頼みに面白くなさそうな顔をするのは大魔王様の娘のジャンヌだ。

 ジャンヌは残った魔将の中でも本当に実力のある魔族の一人だ。

 その実力もさることながら美しさでも魔族中でも群を抜いている。かなりプロポーションもいいしな。

 いろんな面で高スペックなやつだよ。


 「すまない。他に頼める奴がいないんだ」

 

 今の八魔将の中で俺と仲のいいと言えるのはこのジャンヌくらいだ。

 大魔王様の娘で俺より500歳下のくせに生意気な口をきくがなぜか俺とうまがあった。


 口は悪いが大魔王様の娘という立場なのに意外と気遣いのできる女だしな。

 俺より後に魔王軍に入ったのに先に魔将になった時もジャンヌは「あたしは大魔王の娘だからね」と気にしていたようだった。

 俺はジャンヌなら実力的に申し分ないから納得していたんだがな。


 「嫌なら他をあたるが、正直な話を言うと他に頼れるとことはないんだよ」


 俺が拝むようにすると、ジャンヌはあわてて手を振ると、

 

 「別に嫌ってわけじゃないんだけど、それってあたしのところじゃなくてもいいの?」


 「他の魔将の下につけるって事か?贅沢を言えない身分なのはわかっているができたらジャンヌの下に付けてやってほしいんだが」


 「うーん、あたしもちょっと考えることがあるのよ。あたしの下には付けれないけどバエルやお父様の直属ならどう?それなら世話をできると思うけど」


 ジャンヌが名前を挙げたバエルは魔将最強の魔族で八魔将の中では信頼できるやつだ。それに大魔王様の直属なら待遇も悪くないだろう。


 「助かるよ。それで頼む」


 俺が素直にお礼を言うとジャンヌは意を決したようにきいてくる。


 「それはいいけど・・・。サリエル、あんたは辞めるんだよね?お父様はあんたには期待してたみたいよ?」


 「そうなのか?それは嬉しいな」


 俺が素直に喜ぶと、ジャンヌはあきれた様に「あんたって本当にお父様が好きなのね」

と苦笑いしている。


 「それで魔王軍を辞めてどうするつもり?」


 「実は暗黒魔界に行ってみようと思ってるのさ。俺たち魔族の故郷らしいし、一度くらいは見てみたいからな」


 「そう。でも、あんまりお勧めしないわね」


 つまらなさそうなジャンヌの言葉に俺は少し不安になる。暗黒魔界はそんなにヤバいところなのか?


 「俺の実力では危ないっていうのか?」


 「逆よ。逆。たぶん行くとガッカリするわよ。たいしたことないから」


 「でも魔軍統括司令はいつもスゴい所だって言ってるだろ?」


 「あのアホ兄は暗黒魔界かぶれだから。実際はくだらないところよ。男だってキザなだけでロクなのがいないしさ。少なくともあたしからみたら人間界よりも退屈で刺激のないところね」


 ジャンヌはうんざりしたように言うのだった。

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