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アンドロマリウス来襲

「師匠、例の魔族が来たようです!」


 ロバートが慌てた様子で報告してくる。


 「よし、手はず通りにいくぞ。間違って兵士たちに手を出させるなよ!死人が増えるだけだからな」


 「わかっています!」


 ロバートはうなづいて出ていく。



                     *

  

 大柄な魔族がたった一人で城門の前に立つと、空も張り裂けそうな大声で宣言してくる。


 「我が名はアンドロマリウス!八魔将ダンタリオン様の配下である!人間たちよ、大人しく降伏せよ! 抵抗すると無駄な死人が出ることになるぞ。それは私も望んでいない。降伏せよ!」


 アンドロマリウスのやつ、変わってないなー。

 俺と話するときは子煩悩な普通の男だが、昔から人間に対してはこういう時代がかった言い方をするのが好きなんだよなあ。こいつは。


 「師匠!あそこまで言われても我慢しなくてはいけないのですか?」


 悠々と歩いているアンドロマリウスの様子を窓から見下ろしながらロバートは悔しそうに歯ぎしりをしている。

 こいつも一応この国の騎士団長だからな。作戦上必要だと納得していても、やはり抵抗もしないで城の中に魔族を入れるのを見るのは受け入れがたいのだろう。


 「今は我慢しろ。城の外で戦っても勝ち目はないぞ。あいつの言うようにそれこそ無駄死にだ。ただ、俺はそんなバカな弟子を持った覚えはないけどな」


 弟子と言われたことでロバートは少し冷静になったようだ。


 「・・・わかりました。このまま城の奥に通します」


 「それでいい。どうせお前は戦う事になるんだ。その時には存分にやるといい」


 俺の言葉にロバートはいつになく真剣な顔でうなづくのだった。



                *

 「それ以上は進ませんぞ!」


 アンドロマリウスがクロス城のダンスホールにたどり着いた時にロバートが声をかける。


 「ようやく現れたか。この城には人間が一人も残っていないのかと心配していたが。ちゃんといるではないか。しかし、降伏の使者ではないようだな」


 アンドロマリウスは余裕たっぷりに答えている。

 その姿が癇に障ったのかロバートは怒りの声をあげる。

 うん、単純だな。我が弟子。


 「当たり前だ!魔族に降伏などあり得ぬわ!」

 

 なんかお前も昔風の話し方になってないか?影響されやすい奴だな~。


 「それがわからんな。なぜお前たち人間は無駄に死のうとする?それほど長い寿命でもないだろうに。どこの国でもお前の様なやつが何人も死んでからようやく降伏するが、それなら初めから降伏した方がよかろう。この国はここまで抵抗をする者がいなかったから少しは賢いと思ったのだがな」


 アンドロマリウスはやれやれとため息をついている。

 だが、その余裕もここまでだぞ?


 「そう簡単にいくかな?」


 「お前は・・・」


 俺がカーテンの陰から姿を現わすとさすがにアンドロマリウスも動揺している。

 

 「なんのつもりだ?」


 アンドロマリウスは探るように聞いてくる。

 俺の目的がわからないからこういう聞き方になっているんだろう。


 俺が魔王軍のおたずね者になっているのは知っているだろうが、こんなところにいるとは思っていなかったのだろう。いくら魔王軍のおたずね者になっていても人間の味方をしているとは考えられないらしいな。


 だが、この迷いは時間を稼ぎたいこちらからしたら好都合だ。


 「当ててみろよ」


 「くだらないクイズに付き合うつもりはないぞ。どうもここは嫌な感じがする。お前であろうと邪魔するなら容赦はしない」


 おいおい、マジかよ。

 まだこの城の聖なる力はほとんど効いていないはずなのになんとなく感じ取ってやがるのか。


 こいつにこの城の聖なる力が効き始めるまではまともに戦いたくはないが・・・。


 「まあ、あわてるなよ。俺の今の雇い主を紹介してやるから」


 「なに?就職したのか?」


 なんかその言い方は嫌だな。って言うか素が出てるぞアンドロマリウス。


 「そんなとこだ。俺の雇い主はこの城の姫で聖女でもあるリィンだ」


 「聖女だと?人間なんぞに雇われたのか?!」


 驚くアンドロマリウスに


 「聖なる封印!」


 リィンの聖なる封印がかけられるが、それはアンドロマリウスの動きを一瞬止めただけですぐに封印を力任せに砕いている。


 「私がリィンです。魔族アンドロマリウス。この城での勝手は振舞いは許しませんよ!」


 アンドロマリウスは俺、ロバートそしてリィンの姿を順番に見てニヤリと笑う。

 

 「三対一か。人間よ。いくらサリエルの力を借りたと言ってもその程度の数でこのアンドロマリウスを止めれると思うなよ!」


 こうして戦いの火ぶたは切られたのだった。

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