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大僧正④

 「これで全員確認し終わったのう。かなりしんどかったが、これでこの国のためになったのならわしも本望じゃわい」


 大僧正のじいさんはしみじみと肩をなでおろしている。


 「キョウドウ様、ありがとうございます」


 リィンが深々と頭を下げると、


 「なあに、わしもこの国が好きなのじゃ。この国のためならこのじじいの命などいつでも投げ出す覚悟なのじゃよ」


 キラキラした目で宣言するキョウドウ。その目はリィンの顔をまっすぐ見ていて嘘をついているようには見えない。


 「ありがとうございます!・・・なんか気持ち悪いですね」


 笑顔のリィンだが後半は小さな声で俺にだけ聞こえるように言ってくる。


 うん。我ながら気持ち悪い事をしたな。

 俺の『認識操作』でキョウドウの認識をちょっと変えたのだが、まさかここまでなるとは思わなかった。


 「礼にはおよばないぞ。姫よ。わしはこの国が大事なのじゃ。この国が生きがいなのじゃ。この国がなければわしは生きていてもしかたないのじゃよ」


 キョウドウはすっかり国のためなら何でもする気になって熱く語っている。


 「これってどうやったんですか?」


 リィンはまたしても小声できいてくる。キョウドウは耳が遠いからこれなら聞こえないだろう。


 「キョウドウの大事に思っているモノをすり替えたんだよ。キョウドウが大好きなモノに対する熱意をこの国を思う気持ちに変えたらこうなったんだ」


 「キョウドウ様が大事にしているモノってなんですか?すり替えたって事はそれはキョウドウ様にとって大事に思えなくなったって事ですよね?なんだか少し可哀そうですね」


 ん~。なんか甘い事を言っているなあ。俺は全然可哀そうだとは思わないんだが。


 「元に戻すか?もうこの城に入り込んだ魔族は全部調べ終わったし、戻しても問題はないが・・・」


 あんまりお勧めしないけどな、俺は。


 「お願いします。やはり人の心をゆがめるのはあまりよくありません。あっ、リエル様が悪いわけじゃないんですけど」


 いや、そんな気をつかわなくてもいいぞ。いまさら俺は人の心を操ることをどう言われても何とも思ってないからな。

 

 まあ、そういう事なら戻すことにするか。どうなっても知らないけどな。


 「じゃあ、戻すぞ・・・。ほらよ」


 俺の言葉でキョウドウは悪い夢から覚めたような顔つきになる。そして目をクワっと見開くとリィンをまっすぐ見つめている。


 「な、なんでしょうか」


 今までにないようなキョウドウの真剣な眼差しにリィンはたじろいでいるが、どうせこのじじいはろくな事を考えてないだろう。


 「姫よ・・・」


 キョウドウはリィンの手をしっかり握って引き寄せる。


 そして・・・。


 その巨乳をガン見している。鼻の下を伸ばしまくって。


 「あの・・・やっぱりさっきの状態に戻してもらっていいですか」


 ほら、言わんこっちゃない。


 まあ、戻さないけどな。これはこれで面白いし。


 「ちょっと!面白がってないで何とかしてください!」


 おお!俺の心を読んだなリィンよ。成長したなあ。でも、人の心をゆがめるのはよくないんだぞ、リィン。

 俺は生あたたかい目でリィンを見つめるのだった。

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