子連れは大変
俺が魔軍統括司令に十二魔将の任命は間違いだったと知らされた次の日には『魔王軍組織改革』が発表された。
あいつ(もう魔軍統括司令というのもムカつくぜ)の言っていたように十二魔将は廃止されて八魔将制にするとのことで、俺を含めて四人の魔将のリストラ発表された。
俺はあいつに言わせれば魔将の任命自体が間違いだったらしいが、俺は大魔王様に任命された事実だけはないものにする気はない。
ちなみに八魔将として残ったのは
魔軍統括司令にあからさまに媚びへつらっている魔将×4
魔軍統括司令が暗黒魔界から呼び寄せた留学時代からの友人である魔将×2
魔軍統括司令の妹、つまり大魔王様の娘×1
誰もが認める最強の魔将×1
の八名で、俺を含めてリストラされたのが
魔将一の古株で魔軍司令にもハッキリ意見していた魔将×1
俺や古株の魔将と仲がよかった魔将×1
一番魔将歴が浅く、大魔王様の子飼いだった魔将(俺)×1
支配地域が人間どもに押されており失脚しても仕方のなかった魔将×1
この四名だ。
うわーい。わかりやすうーい☆
あからさますぎてこれ以上突っ込む気にもなれないぜ!
しかし、これからどうするかね。
魔将にもなれなかったし、その上で八魔将制になるとより魔将になることは難しくなるだろう。それどころか以前よりも役職が減ってさらに俺の身分は悪くなるかもしれない。
・・・ここらが潮時かもな。俺がそんな事を考えていると
「お前、どうするんだ?」
いきなり声をかけてきたのは俺と仲の良かった魔将で今回リストラされたアンドロマリウスだ。
「どうって・・・、そっちはどうなんだ?」
決心のついていない俺は質問に質問で返してしまう。
「俺はダンタリオンの配下になることしたよ。まだ子供も小さいしな・・・」
あのインケン野郎か。
個人の戦闘力では俺やアンドロマリウスよりもはるかに劣るが、八魔将として残った中でもあからさまに魔軍統括司令をにゴマをすっているやつだ。
典型的な上に弱くて下に強いタイプでミスをした部下には当たり散らしているから評判は良くないが、それも魔軍統括司令に言わせれば「部下をちゃんと叱っている」と評価されているらしい。
あのインケン野郎の部下になってまで魔王軍にいないといけないなんて子供がいるやつは大変だな。
「そうか・・・。ちびちゃんはいくつになったんだ?」
「157歳だ。かわいいぞ」
「まだ、100歳代か。それは確かに親としての責任があるよな」
100歳代の子供を抱えてるなら確かに下手なことはできないよな。俺なんてに親なんていなかったから幼いころは苦労したもんだ。
「ちなみに役職はどうなったんだ?」
俺の質問にアンドロマリウスはため息をつきながら答えてくる。
「・・・支部長補佐だよ」
「支部長補佐?支部長ですらないのかよ」
マジかよ。仮にも魔将の地位いた男だぞ?1階級どころか3階級はさがるじゃないか。
「仕方ないさ。放逐されなかっただけでもマシだ。お前はどうするんだ?」
今度は俺の方にきいてくる。
正直、俺にもいくつかの誘いはあった。当然、魔将よりは地位は落ちるがそれなりの役職をくれるという話もあったが・・・。
「俺は魔王軍を辞めることにしたよ。お前と違って独身だし、金もあるし、しばらく自由気ままに生きてみるさ」
俺はアンドロマリウスと話しているうちに自分にもう魔王軍に対して未練がないことに気付いていたのだった。