魔族たち②
「そう言えばあの話は聞いたか?」
あの話?ずいぶんもったいぶった言い方をしているな。
「ああ。例の実験の事だろ?」
「例の実験は機密なのだ。ダンタリオン様は例の実験のためにこの国に我らを送り込んだようなものだ。作戦の要になる事をこのようなところで軽々しく話すべきじゃないだろう」
魔族の中で年かさの者が他の魔族をいさめるようにいうと魔族たちはうなづきあってだまってしまう。
ここまで聞かされて黙るのはなしだろう。
しっかり話てもらおうか。強制的にな。
「上位魔族がこの城でどれだけ力を削がれるか試されるらしいな」
俺の『認識操作』で魔族たちは『自分が知っていることをできるだけ詳しく話して情報を共有する必要がある』と思い込んでつぎつぎと話し始める。
「その実験に使われる上位魔族が近々この城に侵攻してくるらしいぞ」
「しかし、いくら上位魔族とはいえ同じダンタリオン様の部下が実験に使われるのは少し心が痛むな」
「なあに、それは心配することはない。今回実験に使われるのはダンタリオン様の部下と言ってもごく最近配下になった者だ。むしろこの実験のために部下にしたっていう話だ」
「使い捨てにしてもいい魔族か。その程度のものなら上位魔族と言っても大したことないんじゃないのか」
「いや、魔族としての力ならダンタリオン様を上回っているそうだ」
魔族としてダンタリオンを上回っている?!まさか・・・。
「では、その魔族というのは・・・」
「そうだ。アンドロマリウス様だ。あのアンドロマリウス様ですら力を抑えられるとしたらこの城の効力は本物だろう」
「力を削がれたアンドロマリウス様を俺たち下級魔族で倒すことができれば実験は成功ということか」
「そうだ。あのアンドロマリウス様ですら俺たち下級魔族で倒せることになれば、魔将クラスを俺たちで倒せることになる」
「なにしろアンドロマリウス様は十二魔将の中でもトップクラスの力をもっていたからな。そのアンドロマリウス様が倒せれば他の魔将も同様だろう」
「そうなればダンタリオン様が覇権を握る日も近くなると言うことだな」
わかりやすく解説を続ける魔族たちだった。