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魔王軍、合理的になる

俺は十二魔将に任命された翌日に魔軍統括司令に呼び出された。


 実は俺はこいつがあんまり好きではない。


 大魔王様の息子だが留学先の暗黒魔界(俺たちが今侵攻している人間界とは別次元にある魔族の故郷だ)から戻ってきてすぐに魔軍総司令に抜擢されたかと思えば、そのあとは自分の考えを押し付けてやりたい放題だからだ。


 まあ、大魔王様の息子だから当然魔力も高いし、実際強いが、二言目には「暗黒魔界ではこんな甘いことはなかった。人間界ごときを攻めるのにこれほどてこずるっているのは魔族として恥だよ」と魔王軍の古株に対してバカにするようなことをドヤ顔で言いやがるのだ。

 暗黒魔界がどれだけスゴいか知らないが、人間界には人間界のやり方があるのだ。

 それをまったく理解しようともしないで暗黒魔界流を押し付けてくるその態度には飽き飽きしてくる。

 現場の苦労を知らないボンボンほど役に立たないものはないのだ。


 「すまないな。サリエル。急に呼び立てて」


 魔軍統括司令は口ではすまないと言っているが、すまないとは思っていないのが丸わかりの態度で言ってくるので、


 「いえ、構いません。何の用でしょうか?」


 自然と俺もついぶっきらぼうに答えてしまう。

 正直悪い癖だと思うが、俺は大魔王様以外には敬意を払うことがほとんどない。

 表面上は一応敬語を使っているが、それは心からのものじゃない。

 これは俺が特別じゃないんだぜ?

 魔族は基本的に自分が一番かわいいからな。


 そんな俺の気持ちを知ってか知らずか魔軍統括司令はやたら冷たい声で言ってくる。

  

 「実は、君の十二魔将就任の件だが、あれはなかったことにしてくれ」


 「はあ・・・。十二魔将の就任がなかったことに・・・」


  一瞬、言われた意味がわかりかねた俺が呆けた顔で繰り返していると、


 「だから、君の十二魔将の任名は間違いだったのだ」


 少しイライラしたように魔軍統括司令は再度言ってくる。


 ふーん、俺の十二魔将は間違いだったのか・・・。

 ん?んんんんんんんー!?

 

 「ど、どういう事だ?」


 思わず敬語を忘れる俺だが、魔軍統括司令はそんな事は気にしないようで淡々と話を続けていく。


 「父上・・・失礼。大魔王様は今でも魔王軍の人事権が自分にあると勘違いされているのだが、今の魔王軍の制度では人事権は魔軍統括司令たる私にあるのだよ。つまり大魔王様は君を十二魔将に任命する権限がないのに任命してしまったということだ。全く困ったことだよ」


 こ、こいつ、何を言ってるんだ?大魔王様に十二魔将の任命の権限がないだと?

 魔王軍の最高責任者は大魔王様のはずだ。

 その大魔王様に十二魔将の任命権がないなんてありえないだろ!

 

 俺が納得いかないという表情をしているのがわかったのか、魔軍統括司令はわざとらしくため息をつきながら、


 「悪いが今回の事は大魔王様が個人的に勝手に決めた事だ。だからハッキリ言って組織としての魔王軍では無効なのだよ。君も魔王軍という組織に属する以上、個人の決定では物事が動かないことを理解するんだな。君は魔将になっていないんだ」


 憐れむような眼で俺を見てくる。


 マ、マジかよ・・・。

 俺の目の前が真っ暗になる。

 あまりにショックを受けると目の前が真っ暗になるってのはあれはホントだぜ。

 今の俺がそうだからだ。

 あれだけ苦労してようやく十二魔将になったと思ったら、間違いだと?


 また、魔将補佐からやり直しか・・・。

 しかし、先代の魔将が引退したのは間違いないはずだ。

 だとしたら一体誰が次の魔将になるんだ?

 魔将は今は11名しかいないから空きが一つあるはずだ。

 そんな俺の疑問を感じ取ったかのように魔軍統括司令は言葉を続ける。


 「実は十二魔将制度は廃止するのだ。十二魔将は数が多すぎる。これからの魔王軍はもっと合理的にしなくてはいけないのだよ。それにはハッキリ言ってそれには十二魔将は多すぎる。十二地域に分けていた支配地域を八地域にまとめて八魔将制度にすることにしたのだ」


 な、なんだって!?八魔将制度???支配地域をまとめる???

 あまりの事に理解が追い付かない俺にさらに追い打ちをかけるように、


 「言いたくはないが、君が担当していた地域の侵攻スピードは明らかに他の者よりも劣っていた。時間をかければ人間界など侵攻できて当然なのだ。ハッキリ言って君やり方は効率の悪い古臭いやり方なのだ。まあ、そんな君にはまだまだ魔将の地位は早いというわけだ。さらに言うと・・・」


 魔軍統括司令はぐちぐちと続けていたが、そのあと俺の耳にはほとんどないっていなかった。

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