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滅んだ国

今日も稽古場ではするどい気合が飛び交っている。


 「師匠!今一本お願いします!」


 「うむ、いい気合だ!なかなか上達してきたぞ!」


 ロバートの言葉に俺は満足する。

 なかなか魔族が見つけられない中で俺は時折こうやってロバートに稽古をつけてやっている。


 俺が教えるようになってからロバートはかなり剣術の腕前が上がっている。

 以前は俺の担当地域の基準で言うとB級ギリギリの実力だったが、今はA級レベルの実力になっている。


 俺が教えているのもあるがロバートのバカだが素直な性格が上達を助けているのだろう。

 話を聞いてみるとこいつにはまともな師匠がいなかったようだ。

 なにしろこいつはこの地域ではS級に認定されていたのだ。

 こいつより強い者がほとんどいないのだからこいつに剣術を教えれる者もいないというわけだ。

 逆に言えばこいつは師匠もなしにこれだけの強さをもっていたのだから、才能だけで言えば人間にしてはかなりのものなのだ。バカだか。

 

 上手く教えれば人間どものS級とやらになるだろう。

 人を育てるのはなかなか面白いものだ。


 「師匠!もう一度!」


 「よーし、その意気だ」

 

 俺たちがけいこを続けているとリィンが血相を変えて稽古場に入ってくる。


 「ここにいたのね、ロバート!リエル様も!ちょうどよかったです」


 「どうされました?姫様」


 ロバートもリィンのただならぬ様子に思わず真剣な顔になっている。


 「都市国家テーベが魔族によって陥落したらしいの!」


 「テーベが?!わかりました。さっそくテーベとの国境沿いに偵察隊を派遣します!それから避難民の保護の準備を始めます!」


 リィンの言葉にロバートはテキパキと部下に指示を出していく。

 こいつバカだかさすがに騎士団長だな。

 しかし、都市国家テーベか・・・。

 あわただしく動き出した人間どもをみながら俺は複雑な気持ちになっていた。



             *



 俺とロバートはリィンの部屋に来ていた。

 ロバートはすでにあらかたの対処を終わらせている。こいつ意外とできる男だな。


「テーベと言えば一昨年に魔族の魔将自ら軍勢を率いてきた侵攻を防いだほどの備えがあったはずです!そのテーベがどうして陥落してしまったのですか?」


 ダンタリオンのやつ一度失敗していたのだな。くくくっざまあねえぜ。

 ロバートの言葉に俺は思わずにやけてしまう。


 「それが・・・たった一人の魔族によって制圧されたとのことです」


 「たった一人!?魔将ですか?」


 驚くロバートにリィンは首を振る。


 「それが魔将どころか、その配下でも高位ではなく中程度の者らしいのです。それがたった一人で・・・」


 「まさか・・・」


 ああ。やっぱりな。

 

 俺はその一人に心当たりがある。

 おそらくそいつは元魔将のアンドロマリウスだ。


 あいつ張り切ったなあ。小さな子供のいる父親は強いなあ。

 まさかこの短期間であの都市国家を制圧するとはねえ。しかも、一人で。


 ただ、この結果はある程度予想できた。

 なにしろこの地域はS級レベル認定されている人間が他の地域の基準ではB級程度の実力しかもっていないのだ。

 アンドロマリウスの強さがあれば一人で国を制圧することは十分可能だろう。

 ただ、俺の予想よりだいぶ早かったが。


 「そんな化け物みたいな魔族がもし、こちらにきたら・・・」


 リィンもロバートも絶望的な顔になっている。ただでさえ魔族に入り込まれているかもしれないのにそんな魔族が来たらどうにもならないと思っているんだろう。


 「おそらくその心配はないだろう。しばらくはな」


 「それはどういうことですか?」


 「俺が思っている魔族なら恐らくすぐには動かないはずだ。そいつは制圧した国を安定させてから次の国に移るからな。ただ滅ぼすだけの奴とは違うはずだ」


 アンドロマリウスはただ滅ぼすだけの奴じゃない。その後もその国を使えるようにする合理的な奴だからな。


 「だから、たぶん避難民も少ないだろう。国ごと手なづけるのが奴のやり方だよ」


 「ずいぶん、詳しいのですね」

 

 「こういう安穏とした国にいなかったからな。嫌でもいろんな事を知るようになったのさ」


 俺はリィンに答えながら少しあせっていた。

 しばらくは大丈夫だが、もしアンドロマリウスがこちらに来ることになったら・・・。


 早くこの国の魔族を見つけて国を安定させなければならないな。

 俺はそう決心するのだった。

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