男のノリ
「師匠!また、稽古をお願いします!」
「うむ、精進せよ!」
俺に向かって最敬礼をするロバートをリィンは冷ややかな目で見ている。
あれは完全にバカを見る目だ。
この聖女様は可愛い顔して案外性格がキツイぜ。
「リエル様。遅くなってすみません。父上への報告と着替えをしなくてはいけなかったのです」
そう言って謝るリィンは神官服から王女らしいドレスに着替えている。
うーむ、この服装になるとさらに凶悪なオッパイをしているのがわかるな。
と言っても特別過激なドレスではないのだが、リィンが着ると普通に胸元が開いているドレスでもなかなか刺激的になってしまうのだ。
「あの・・・聞いてますか?」
リィンがロバートに向けていたような冷たい目で俺を見てくる。
うん。聞いていたぞ。なかなかいいオッパイだ。やはりバカンスにオッパイはつきものだな・・・。
「えーと、確かリィンの部屋で今後について話をするんだったな?」
「そうですけど・・・」
ほら、聞いてた。俺はちゃんと聞いているのだ。
それなのになぜか大きなため息をつくリィン。
「どうしてロバートと関わると男性はみんなこんな感じになるのかしら。これもある意味、人徳なのかしらね」
はっ、確かに。
バカのノリに合わせているうちに俺まで男特有のバカなノリになっていたな。
恐るべし、ロバート・・・!
・・・うん。これくらいにして俺もキャラを戻そう。あんまりするとリィンが本気で怒り出しそうだからな。
リィンの部屋についたら真面目に話をする事にしよう。
*
「ノインが私を呼びに来た時はびっくりしましたよ?
ロバートはバカですがこの国で一番強い騎士ですから。しかし、止めに来た時はもっとびっくりしましたけど。どうしてああなったんですか?」
なるほど。王女であるリィンから見ても強くてバカなのか。
「俺もよくわからんが、とりあえず軽く叩きのめしていたらああなったんだ」
「軽く叩きのめしたって・・・。リエル様は魔法主体の冒険者ではないのですか?」
「魔法主体だぞ。剣はほとんど使えない」
俺は正直に答えるがリィンは絶句している。
「・・・っ、リエル様の規格外ぶりは魔法だけじゃないですね。ロバートを子ども扱いできる剣の使い手なのに魔法が主体なんて、ほとんど噂にきく魔王軍の幹部クラスですよ?」
えーと、正解だぞ。それ。
まあ、正確には一日だけなってそのあとリストラされたけど。
「ははは。まさか」
とりあえず否定しておこう。ザコ魔族が入り込んでいるのを心配している姫さんには魔族の幹部クラスが目の前にいるとなると刺激が強すぎる真実だろうからな。
「そうですよね。冗談ですよ」
そう言いながらもリィンは少し安心しているようだ。
「ところであいつは昔からバカなのか?」
俺がロバートの事を名前で呼ばなくても誰の事を言っているのかすぐわかった様でリィンは即座に答える。
「はい。この国で一番強いバカです」
そうか。てっきりお茶の影響でバカになっていたのかと思ったが元々バカらしい。
なら大丈夫だな。
いや、大丈夫ではないか。あれでも騎士団長だからな。
「それで・・・ロバートは魔族なんですか?」
リィンが恐る恐るきいてくる。やはりその点が気になっていのだろう。
「いや、あいつは魔族じゃないだろう。絶対とは言えないが違うと思う。あの戦い方はまず人間だよ」
俺の言葉にリィンはほっと胸をなでおろしている。
「あいつが魔族じゃなくて安心したのか?」
「ええ。ロバートはバカですけどイイ人ですから。魔族であって欲しくなかったのです」
それは確かに言える。あいつはバカだがいい奴だ。
俺に突っかかってきたのも純粋にリィンを守る使命感から怪しんだ俺を試すために行動しただけだろう。
「とりあえず、騎士団長は白だな。恐らく魔族はそこそこ地位のある立場の奴と入れ替わっているはずだ。
俺は次のターゲットにあたってみたたいんだが、頼めるかな?
あいつのように挑発したら勝手に突っかかってくる簡単な奴ばかりじゃないだろうしな」
「わかりました。めぼしい相手をノインに案内させましょう。差し当たって大僧正様に合って頂いてもよろしいですか?」
「大僧正様ですか?」
ノインはあからさまに嫌そうにしている。何かあるのか?
「大僧正様は最近ご様子が変わられたのです。ノインもそれは知っているでしょう?」
「それは知っていますけど・・・でも、あれは・・・」
リィンの言葉にノインも同意するがいまいち納得していない。
「よくわからんが、その大僧正様とやらに会わせてみてくれ。話はそれからだ」
「・・・はあ。わかりました」
俺の言葉になぜかノインは疲れたようにため息をつくのだった。