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聖女の覚悟

 「それじゃあ、どいつが魔族なのかまだ見当はついていなんだな?」


 俺がクロス王国に魔族が入り込んでいるであろう事を伝えると、リィンは自信なさそうに答える。


 「はい。最近、王宮内におかしな空気が流れているのは私も感じてはいたのですが、それが誰のものかと言われてるとはっきりとはわからないのです。怪しいと思われる魔気を発している者も多すぎて、収拾がつかないのです」


 魔気は魔族じゃなくても多少魔法の素養がある者なら皆持っているからな。

 その上あのお茶で魔気がそこら中にあふれる状態にされていたら、さすがに聖女様の探知能力をもってしても判別するのは難しいだろう。


 「自分の能力に頼り過ぎたらダメだぜ?いざというときに役に立つのは自らの考える力だぞ」


 俺だって能力に頼らずにバカンスを楽しんでいるのだ。

 国の一大事なら姫さんとして頭を使って頑張らないとな。

 バカンスと一緒にされたくないかも知れないが、力のない者はそれだけ頑張らないと何も守ることができないのだ。

 魔族だろうと、人間だろうとな。


 俺の言葉にリィンは悔しそうに唇をかんでいる。


 「すみません。私が馬鹿でなければ自分でなんとかできたのですが、難しいようです」


 リィンは涙を流してこそいないが、その大きな瞳に涙をためている。


 うっ、これはさすがに人間とはいえ心が痛むな。

 俺も大人げないよな。2000歳も下の小娘にこんな追い詰めるような事を言うなんてなあ。

 もしかして俺ってリストラされたショックでこいつに当たってるんだろうか?

 さすがにこれは格好悪すぎるだろう。

 

 俺がちょっと言い過ぎたと反省していると


 「リエル様、どのくらいの報酬が出せるかわかりませんが、誠意は見せるつもりです。身勝手なお願いだとは承知していますがクロスを救って頂けないでしょうか」


 俺がリィンに返事する前に

 

 「姫様!このような者に頭を下げる必要はありません!そもそも魔族がクロス王国に入り込んでいるなどどいうのはこの者の妄言に違いありません!」


 ノインが口をはさんでくる。

 しかし、リィンはそのノインを手で制して、


 「ノイン、私にはリエル様がおっしゃっていることが正しいと思えます。馬鹿な私ですがそれくらいはわかります。そしてリエル様は信頼できる方と思います。自らの力で解決できないのは国の恥になりますが助力していただくべきです」


 信頼できるかどうかは知らないが、俺が今回の件で頼りになるのは間違いないだろう。

 魔族のやり口はどんな人間よりも(たとえ大賢者であっても)よく理解しているし、何より敵の総大将で八魔将のダンタリオンが自ら出てきても叩きのめしてやれる自信はあるからな。


 もっとも、あのインケン野郎が自ら出てくるとは思わないがね。あの野郎は部下を使って陰から滅ぼすのが大好きだからな。


 むしろ気を付けるべきはあのインケン野郎の配下になった元十二魔将のアンドロマリウスだな。確かアンドロマリウスの配属先はクロス王国からは離れた都市国家だったから大丈夫だろうが、もしヤツが出て来たら俺でも勝てるかどうかわからない。

 魔軍統括司令に嫌われていたから魔将から外されただけで戦闘力だけで言えば十二魔将でもトップクラスだったからなあ・・・。


 ん?俺はアンドロマリウスを敵に回してまでこの国に肩入れするのか?

 インケン野郎のダンタリオンなら嫌がらせに邪魔してやってもいいと思っていたがアンドロマリウスとやりあってまでこの国を助けるのはさすがにリスクがでかすぎるな。

 バカンス気分で相手をできるヤツじゃないぞ。

 やっぱりこのバカンスやめようかなあ・・・。


 俺が弱気になっているいるのがわかったのかリィンはさらに踏み込んでくる。


 「リエル様、魔族との戦いに巻き込む事は命懸けになると思いますが、私の全てを差し上げますのでなにとぞお願いいたします!」


 「全てって言うとリィン自身も含まれるのか?」


 俺が意地悪く言うと、リィンは少し震えて下を向いたが、すぐに顔上げて俺をまっすぐ見てくる。


 「私自身も含みます。どうかクロスをお救い下さい」


 いや、冗談だったんだが。

 うーん、今更冗談だったから引き受けないって言ったら怒るかな。


 俺はもう一度リィンの顔を見る。


 うわー。マジだわ。これ。真剣な顔してやがる。

 『ごめーん、冗談だったわ』って言ったら怒るだろうな。


 いや、人間如きが怒っても怖くはないが、こんな小娘にそこまでの決心をさせておきながらビビって逃げたらヘタレすぎるだろ。

 そんな奴は魔将になれなくて当然だよな・・・。


 「わかった。ただし、やり方は任せてもらうぞ」


 俺の言葉にリィンは力強くうなずいたのだった。

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