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フェイクマイナス  作者: 海鮮メロン
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トゥループラス

七年後

ゴールデンウィークも終わり世間が落ち着いていた頃

三階建てにリフォームされた店で一人の女性がカウンターで伝票整理をしていた。

「お客さん来ないなぁ…」

そう言いながら数多くの伝票の打ち込みをしていた。


少し経つと店に中華料理屋の主人が入ってきた。

「おっ!今日は由香ちゃんが店番かい?」

「あっ、おじさん。いらっしゃい!今日はどうしました?」

「いやぁ、うちもそろそろ息子に店を譲る頃かなと思ってさ。カッコつけて名前入りの中華包丁をあげようとか思って相談に来たんだよ」

「素敵じゃないですか!きっと喜びますよ!今、社長呼びますね!」

「おぅ、悪いね!」

由香はカウンターにある電話で社長に電話し、事情を説明した。


「すぐに行きます。ですって!」

「…しかし、先代は夫婦二人だったのに従業員雇うまでになったかい。すごいねぇ」

「先代もまだご夫婦で働いてますからね。今、凄く楽しいみたいですよ」

「そりゃ良かった!またうちの店に来てくれよ、サービスするからさ」

「はい!じゃあ今日のお昼はおじさんの所で食べようかな」

「大歓迎!餃子付けちゃうよ」

「やったぁ!」


その時カウンターの後ろからドタドタと足音が聞こえた。

「…ハァハァ、お待たせしました!!」

「別にそんな急がなくてもいいって!息切れてんじゃねぇか」

「ハハッ、ありがとうございます」

「そんで包丁なんだけどさ」

「はい、ではこちらで」

社長は店の端にあるテーブルのソファーに案内した。



「本当、さすが竹下藤堂コンビって感じ…」

由香は店に飾られている写真を見た。

写真は結婚したばかりの直人と亜沙美が店の前で撮ったものだった。


二人は退職した二週間後には店の近くに部屋を借り引っ越したあとに婚姻届を提出した。

式は夏に二人の家族と智美の家族、さとみ、由香、そして海野と千聖も呼び、都内臨海地区のホテルの式場で小さく挙げた。


余談だが千聖はそこをすごく気に入ったらしく翌年に千聖達も式を挙げていた。



結婚後、店の仕事を始めた二人はまず得意先や取引先との関係作りと店の仕事を覚えることに注力した。

二年目からは茂樹は一線を退き、今はまた仕事に戻っているがその時は二人に全てを任せることにしていた。


その後は度々ケンカをしながらも二人で店を経営し始めた。

離婚するんじゃないかと茂樹と裕子がハラハラするぐらいのケンカの連続だったが店を出るとイチャイチャし始める二人にプロ根性が過ぎるなと苦笑いをしたこともあった。



直人は得意先へのサービスを強くすることにした。

すると得意先から別の店へ話が行き、その店から別の店へと話が広がりクチコミでどんどん利用客が増えて売上が伸びていった。


一方、亜沙美は直人の提案でシーズンの飾り付けなどの商材の取り扱いを始めた。

初めは在庫を抱えてしまう事態になってしまったが、数年続けることで次第に利用が広がり今ではクリスマスが近付くと周辺の飲食店の飾り付けは全て二人の店が売った商品という快挙と言っても過言ではない事態になっていた。



由香が店に来たのは約四年前、会社では大きな人員削減が行われ由香はそのリストに入ってしまった。

初めは抵抗していたが精神的に疲れきってしまった時に直人と再会した。


その頃の由香は精神的にノスタルジーに浸りたくなり、学生時代によく行っていたレストランで食事をしようとさとみと行くことにした。

するとそこに一人でハンバーグを食べている直人がいたので由香とさとみは今の会社での出来事を話すことにした。


直人は考える事もなく

「なら、うちに来ればいい」

と言ってくれた。

それから二人は働くことになった。


何故、一人でハンバーグを食べていたのかは怖くていまだに聞けてはいない。


さとみはネット販売担当として二階で梱包作業をしていた。



「おいおい、社長!いいのかい!?」

「いいんですって」

何やら大きな声が由香に聞こえてきた。


「名前入れが無料で包丁も三割引って店潰れるぞ!?」

「大丈夫です!」


「また大サービスしてるな?」

由香はテーブルの二人を見た。


それに気付いた中華屋の主人が

「ほら!由香ちゃんが睨んでるだろ」

「大丈夫ですって!これは僕からの餞ですよ」

「…本当、おめぇって奴は。わかった!恩に着る!」

「その代わりなんですけど……」

「何でい…」

「実は…」

コソコソと話を始めた。


「ハッハッハ!!わかった!わかったよ!御安い御用ってなもんだ!」

「よろしくお願いします」

話が終わり中華料理屋の主人が帰っていった。


「藤堂さん、何を話したんですか?」

「ん?ほら、もうそろそろ…」

直人はカレンダーを指差した。

その日付にはハートマークのシールが貼ってあった。


「あぁ!そういうことですね!!」

「去年は忘れてて怒られたからさ、今年は貸し切りでサプライズ」

「今年こそ二人でお祝いしてくださいよ?」

「…何を言ってるのかね?君は」

「あ?」

「あっ、ごめん。由香達も参加してね…」

「良いんですか?」

「もちろん!」


「ん?何が?」

亜沙美が店に出てきた。


「な、ななな、何でもないよ?」

直人は焦っている。


「…鈴木さん?」

「今夜二人きりで飲みに行かないか?って口説かれました」

「お前、良い度胸してんな」

「おい!ウソはやめろって!」

「……」

由香は伝票整理を再開した。


「ちょっと上で話そうか!」

亜沙美は直人を強引に連れていくが、亜沙美は由香に笑いかけた。


「まっ、このぐらいのスパイスがあった方が盛り上がるでしょ!…プッ、ハハハハ!」

由香は吹き出して笑った。



「ナオ……」

「あの、口説いたりとかしてませんからね?」

「それは大丈夫。わかってるから」

「ありがとうございます」

直人と亜沙美は三階にある小部屋で話をしていた。


「で?何時に店に行くの?」

「…な、何の話かな?」

「こっちにもスケジュールってものがあるから言いなさい!!」

「十九時です!!」

「わかったわ、二年分だからね?」

「…はい」

「じゃあ今日は病院行く日だから行ってくるね」

「行ってらっしゃい」

亜沙美は部屋を出ていき、産婦人科に向かった。



直人一人が残る部屋の入り口から女性が話しかける。

「本当、去年は最低だったな」

「うるさい…。めちゃくちゃ反省したからもう言うな」

「まさかキャバクラに飲みに行くとはね」

「智美……、それ以上言わないで…」

「まぁ、亜沙美さんもわかってると思うけどね、商店街の会合の二次会だって」

「……今、思い出すだけでも泣きそうになる」

「すっごい怖かったもんね…」

「すっごい怖かった……」

直人は少し震えている。


「じゃあ私は子供の迎えがあるから帰るね」

「おぉ、お疲れ…。智美も来てくれよ?」

「わかってるよ、旦那は?」

「もちろんオッケー…」

「わかった、そんじゃね」

智美は保育園に行くため帰っていった。


結局よく挨拶されていた年下の男性と付き合ったあと授かり婚をし、会社を辞めていた。

その後は保育園に子供を預けている時間だけ働くことに決め、直人に連絡をした後であれよあれよという間に在籍していた。

細かな雑務は全て智美が処理している。



「さてと…」

直人は立ち上がり、取引先へ電話をすることにした。とある業者を紹介してもらうために。



翌週


「おはようございます」

『おはようございます』

直人の挨拶に全員が返す。


「今日はスパッと仕事を終わらせましょう!よろしくお願いします!」

「えっ?」

亜沙美が不思議そうな表情で直人を見るが

『よろしくお願いします』

亜沙美以外の全員が返したので、自分に気付かれないように根回ししたな?と、すぐに察した。



「由香、さとみ!」

直人は二人を呼んだ。

「頼んだぞ」


「任せなさい!」

「準備オッケーですよ」

「ありがとう」


そのやり取りを見た亜沙美は

「いや、そこはもう少し上手くやりなさいよ…」

少し苛ついたがちょっとニヤけてもいた。


夕方

「はい!じゃあ皆!仕事終了!!」

直人が呼び掛けた。


「はっ!?何を言ってるの?」

「…亜沙美も準備して」

「何の?」

「外食」

「…隠す気無いよね?」

「わかってるでしょ?ならその上を行きます」

「ほぉー…。そう来ましたか。なら従いましょう」



「せぇーの!」


さとみ、由香、智美が同時に叫んだ。

「おめでとう!!」


今日は直人と亜沙美の結婚記念日だった。


直人はプレゼントを用意していた。

「…あのー、亜沙美様、こちら献上品でございます」

「ナオ、ケンカ売ってる?」

「滅相もございません」

「…腹立つからやり直し」


「…亜沙美、これ、愛の証」

「似合わない、やり直し」


「ワイしてるよ、亜沙美」

「何て言った?やり直し。…はぁー、もう!!じゃあ私から!!」

亜沙美はカバンから何かを取り出して直人に渡した。


「母子手帳……?…えっ!?」

「先週病院行ったら八週目だって…」

「やったぁー!!」

直人は亜沙美に抱きついた。


「…ちょ!ちょっと!痛いって」

「あっ、ごめん!でも!!」

直人は再度強く抱きしめた。


「頑張ったね」

「…うん」

「愛してるよ」

「…私も愛してる」

「…僕の方が愛してる」

「いや、私の方が愛してる!!」

「なんで張り合うの!?」

「張り合ってきたのはそっちでしょ!?」

二人はケンカを始めた。


それを見ていた中華料理屋の主人は

「由香ちゃん、止めなくていいのかい?」

「大丈夫です!いつものことですから」

由香は笑っていた。


周りの人達もその光景を見て笑っていた。


それに気付いた二人は

「…お騒がせしました」


「ったく、社長がそんなんでどうするの!?」

「藤堂さん、情けないですよ」

「先輩のバーカ!残念イケメン!」


「…由香は悪意しかないな、夏のボーナス無しね」


「ひどい!!私に飢え死にしろって言ってるよ!?」

「ひどいね、去年の事を蒸し返してあげようよ」

さとみは悪い顔をしている。


「待った!それだけは待った!由香、ごめん!言い過ぎた」

「由香?呼び捨て?」

「由香さん…」

「えっ?」

「由香様」

「頭が高いかな?」

「蒸し返すのは勘弁してください…」

深々と頭を下げた。


「去年はキャバクラ行って酔いつぶれてたもんね」

由香ではなく亜沙美が言い出した。

「本当にすみませんでした」

「…ふんっ!」


「お義父さん、何とか言ってください!」

「……」

茂樹は星空を見ていた。

「お義父さん!?」

茂樹も去年泣くほど怒られていた。しかも裕子からも。



「で?直人のプレゼントは何なの?早く渡しなさいよ」

智美が煽る。


「……今渡すよ!」

直人は亜沙美に改めてプレゼントを渡した。


亜沙美は中身を見て

「飛行機のチケット?」

「今更だけど新婚旅行に行けてなかったから…、あっちでの事も色々と手配はしてある」

「会社はどうするの?」


「亜沙美、その期間は任せなさい」

茂樹とその後ろにさとみ、由香、智美が笑顔で立っていた。


「…ふーん、お得意の根回しをしてたわけだ」

「言い方が悪いよ?」

「ナオ、ちょっと」

亜沙美は手招きをして直人を近付けた。

「ん?何?…っ!」


亜沙美はその場で直人にキスをした。

「ふぅーーー!」

「ラブラブーー!!」

「直人のバーカ!」


「今、悪口言ったの誰だ!」

「まぁまぁ、いいじゃないですか。あなた…」


「え?なんか怖い……」

「何ですって!!」

亜沙美は直人の肩を思いっきり叩いた。


店内は笑いに包まれた。

直人も笑った。亜沙美と出会えた奇跡に感謝した。


亜沙美は直人を睨んだ。だが笑ってる直人を見て次第に笑顔になった。


二人は見つめあい、そしてまたキスをした。

これでこのお話は終わりになります。

途中ダラダラとしてしまう話もありましたがここまでお読みいただきまして、本当にありがとうございます。

結構序盤からタイトルに偽り有りな内容になってしまったことは反省しております、今後はこの経験を活かしてもっと良い作品が作れるように精進して参ります。


最後にもう一度だけ、

ここまでお読みいただきまして、本当にありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 完結おめでとうございます、一切感想を書き込まずにいましたが毎話楽しく読ませてもらっていました、会話の掛け合いが面白く幼馴染みの扱いがどうなるか若干ハラハラしていましたが..穏やかに収まって…
2019/12/09 07:38 退会済み
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