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フェイクマイナス  作者: 海鮮メロン
60/77

#60 私達は恵まれている

月曜日 昼


直人は昼食後、どこの店に行くべきか考えていた。というのも一つ思うところがあった。

「…始まりはあのクリスマスツリーなんだから、やっぱりあのお店かな」

二人が見に行ったクリスマスツリーは商業施設の前にあり、その中に宝石店があるようだった。


「亜沙美に話してみるかな」

直人はデスクに戻ることにした。



午後


「藤堂くん、進捗は?」

亜沙美が聞いた。

「順調です。今日は定時で上がれるよう頑張ります」

「よろしい」


「……?」

周りの同僚は疑問を感じた。いつもは聞かないようなことを亜沙美が聞き、直人も別に今まで定時上がりにこだわってた事は無いのに…。と。


「…何かやらかしたの?」

隣のデスクの同僚が聞く

「え?」

「いや、いつもそんな会話してないからさ。何か問題でも起きたのかなって。例えば残業しすぎで注意受けたとか」

「…まぁそんなところです。効率っていうか何て言うか」

直人はその話に合わせることにした。

「…そっか、藤堂の担当は波があるからな。難しいよな」

「そうなんですよ、アハハ」

上手くやり過ごせたかな?と直人は少し安堵した。



夕方に亜沙美から連絡が来た。

仕事が終わったら先に会社から出て待ってて。との内容だった。

わかった。クリスマスツリーを見に行った広場で待ってる。と返事を送り、直人はあと少しで完了する仕事に集中した。


18時頃


周りの同僚が少しずつ帰る頃、まだ直人はデスクにいた。

「藤堂、頑張れよ。定時過ぎたけど出来るだけ早く帰れるように…。なんかチーフ怖いから」

「はい、お疲れさまです。って、え?」

隣の同僚は帰っていった。


ふと亜沙美を見ると睨むに近い目で直人を見ていた。

あと少しとジェスチャーで伝えると亜沙美は視線を外した。


そこから十分後

「お疲れ様です。上がります」

と直人は帰る準備をして亜沙美を見た。

亜沙美は早く行きなさいという感じで扉を指差した。


その様子をさとみが目撃し

「…あの二人、月曜日からデートなのかな」

「そうじゃない?なんか早く上がれみたいになってたし」

由香に話をした。


「でもなんか、いつもと違うような」

「…もしかしてまた?」

「どうだろ?その割には険悪な感じではないし」

「さとみ…、面白そうな事思いついた」

「多分私も同じ事を思いついた」

二人はフフフと笑い、あと少しで終わる仕事を早く終わらせる事にした。



直人は会社の外にいた。

「なんか外で待ってばかりだな…」

クリスマスイブから始まり、今日まで本当に色々な事があった。

「まだ二月だもんな…。こんなに日々が遅く過ぎるのはいつ以来だろう?」

いつの日からか忘れたが、日々が、一年が、あっという間に過ぎる年月を直人は感じてきた。

だがこの数ヵ月は違った。

色々な事があった。充実していた。大変だった。好きな人と一緒に過ごすという事だけでここまで濃密な毎日が過ぎていくとは考えてもいなかった。

世界が輝いて見えるというのはこういうことなのだろうか。直人は少しニヤけた。


「まだかな…。早く会いたいな」

直人は寒い風が吹く中、亜沙美との未来に胸馳せていた。


その数分後、亜沙美から連絡が来た。

今、会社を出たという連絡だった。


そのまた数分後

「…待った?」

「待った…。寒い…」

「ごめんて、行こう!」

「うん」

二人は施設の中に入っていった。


その後ろでさとみと由香、そして智美が様子を見ていた。

「ケンカじゃないね」

智美が分析する。


「むしろ逆じゃ?」

「…逆って?」

さとみは由香を見た。


「…さぁ?」

「あっ、移動したよ!」

三人は直人と亜沙美についていった。


ついていった先は宝石店だった。

「ほら、逆だ」

「そういうことね、確かに逆ね」

「直人、どっちを買うんだ?」


三人は柱の影に隠れていたがすでに直人は気付いていた。

直人が三人に近付く。

「やばい!バレてる!逃げて」

由香が二人に言ったが時すでに遅く

「何をしてるんだ?何を」


智美は咄嗟に

「か、買い物だよ、買い物。私がピアス欲しいから付き合ってって」

「へぇー。ピアス…、へぇー。」

「直人達がいたなんて偶然!!どうしたの?」

「智美、店に入る前から気付いてるからね?隠れようとする行動が目立ちすぎ」


「ちっ、バレてたのか。それにしても気付いてないフリとか上手くなったねぇ」

「人聞きの悪いこと言うな」


「藤堂さん、決めたんですね」

さとみは悲しそうに嬉しそうに話を始めた。


「…うん、詳しいことはまた話すけど会社も辞めるよ」

「えっ!?」

「はっ!?」

「あっ!?」

三人は三者三様の言葉で反応した。


「ハハハ、ごめん。ちょっと笑っちゃった。またあとで、ちゃんと話すから待ってて」

直人は戻っていき、その隣で亜沙美は笑顔で一礼した。


三人はそう言われたからには待ってるしかなかった。



亜沙美は指輪を一通り見ていた。

「ねぇ、ナオも結婚指輪は一緒に見ようよ」

「それも一緒に探す?」

「探す。婚約指輪はもう決めたけど」

「早いね!」

「そっちにあるリングだけのやつがいい」

直人は亜沙美が指差したショーケースの中にリングだけで宝飾がまるで無いものを見つけた。


「えっ?これでいいの?」

「うん、サイズあるか聞いといて」

「…う、うん」


「結婚指輪はダイヤが付いてるのがいい」

「……はい」

直人は一旦リングを店員に伝え、ダイヤが付いている物を探している事を伝え、こっそりと予算も伝えた。


店員が二人をイスのあるカウンターに案内し、

「少々お待ちください」と言うと数分後に三種類の指輪を持ってきた。

どれも結婚指輪として男女問わず付けられる指輪を持ってきたようだ。


「亜沙美に任せる」

「いいの?」

「いいよ 」

「うーん、じゃあ、これ!どう?」

店員が持ってきたデザインの中には一つだけ男女でリングの太さが違うものがあった。

シンプルにダイヤが埋め込まれているリングだった。


「うん!僕もこれなら付けやすいし。これでいいの?」

「うん、いいよ」

直人は店員にそれを伝え

「亜沙美、ちょっと席を外してて」

「え?なんで?」

「何となく支払いのところは見られたくない」

「…はい、わかりました。じゃあよろしく」

亜沙美はさとみ達の所に向かった。


直人は今まで指輪を買ったことがないのでまずサイズを合わす事から始めなければいけなかった。

その後支払いをすることにした。



その頃、亜沙美は三人から質問攻めにあっていた。

「藤堂さん、辞めるんですか?」

「…うん。実はうちの実家は店をやってて、それをナオが継ぐって話になったの」

「先輩だけですか?」

「ううん。私も辞めるわ。ナオだけに背負わすのはおかしいから」

「直人と亜沙美さんの二人で店をやるんですか?」

「しばらくはうちの両親も一緒かな」


「そっか、淋しくなりますね…」

さとみは下を向いた。

「ただまだちゃんと両親には話してないのよ」

「え?」

「両親から話をしようとしたのを私が止めたんだけどナオはわかってて。ナオから言ってくれたの」

「…先輩らしいですね」

「うん…」

「本当に昔から人に寄り添うというか何て言うか…」

その場の空気がしんみりしてしまった。


「で!でもでも、まだだからね?やらなきゃいけないこともたくさんあるし」

「…そうですよね!その時に皆で見送り会みたいなのしてもいいですか?」

「うん!それは嬉しい!!」

「じゃあ考えておきますね」

「ありがとう、でもこれからまず何をやったらいいのかもちゃんとわかってないのよね」


「亜沙美さん、私がいるじゃないですか」

「あっ、そっか!」

「結婚経験者ですよ。離婚経験者でもありますけど」

「う、うん…」

「そうだったね…」

「キャハハ!あっ、ごめん…」


智美は自虐で笑いを誘ってみたが、思ってた以上に笑ってもらえなかった。さとみだけ少し笑った。

「い、いや、笑ってください?」

「ハハハハハ!」

後ろから直人が笑う。


「お前は笑うな!」

智美が睨む。

「笑えって言ったのに?」

「直人はなんか違う」

「で?何の話?」


「具体的にこれから何をしていけばっていうのを智美さんが教えてくれるって」

「離婚したのに?」

「うっさい!」

智美は直人の頭を叩いた。


「ちょっ!ちょっと抑えよう?」

「え?あっ、そうか」

「ほら!こうやって皆引くから皆の前ではやめろって言ってたんだよ」

「嘘だね。今思いついたね」

「違いますぅー」

二人は近付いて言い合った。


「あ、亜沙美さん止めないと」

さとみが亜沙美を見るが亜沙美はケラケラ笑っている。

「大丈夫だよ、これが二人の普通だから」

「えっ?そうなんですか?」


「大丈夫だよ、昔からこんなだから」

「うん、今までが私達にとっては普通じゃない」


「なんか仲が良すぎて、なんか…」

由香は何か言いたそうだ。

「ん?」

「きも…あっ、何でもないです」

「今、気持ち悪いって言おうとしたね?」

「言ってませんから」

「…確かに言ってないけど」


「ナオ、そういえば会計済んだの?手ぶらだけど」

「うん、名前彫ってくれるって言うからお願いした。だから受け取りは後日」

「あっ、そういうのしてくれるんだ」

「ね!僕もしてくれるんですか?って聞いちゃったよ」


「藤堂さん、辞めるんですね」

「あっ、聞いたんだ。でもまだ周りには内緒ね、まだいつにどうなるか全く決まってないから」

「はい、もちろん」

「ありがとう」


「それじゃ帰ろうか」

直人が亜沙美を見たあと三人を見た。


「そういえば今日月曜日ですもんね、明日もありますし」

さとみと由香は頷いて帰ることにした。

「私も一人で帰る、先に帰って直人の部屋のポストに虫入れとく」

「おい!本気でやめろよ!?」

智美は帰っていった。


「ふふっ」

亜沙美は笑った。

「どうしたの?」

「いや、出会いって大切なんだなって。保坂さんに鈴木さん、智美さんのおかげで私達がいるのかなって」

「…確かにね。これからも助けられてやっていくんだろうね」

「うん、じゃあ…」

二人は見つめあってから

「帰ろう?」

「うん」

二人はそれぞれの部屋に帰っていった。

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