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フェイクマイナス  作者: 海鮮メロン
56/77

#56 手作りチョコ大作戦

バレンタインデー 早朝


亜沙美は焦っていた。昨日の夜からチョコ作りを始めたが全く上手く作れなかった。


「まずい!まずいまずいまずいまずい!!」

時計を見ては焦り、その焦りが更なる失敗を生んでいた。


「もう!また!!…チョコ溶かして型に入れて冷やすだけ。それは何か嫌だったからこだわろうとしたんだけど」

何を作っても上手く出来なかった。


「やっぱりこういうのは普段からやってる人向けよね」

亜沙美はこの時の為に買ったチョコのレシピ本をパラパラとめくった後に放り投げた。


「…よし、チョコ無しでバレンタインデー乗りきろう」

亜沙美はキッチンの散らかり方を見ては少し思考停止状態になっていた。


「ふわぁーあぁ…眠いわね、今は…五時前か。今寝たら遅刻ね。さて、どうしようかしら…」


亜沙美はソファーに座った。

「…さて、どうしよう」

チョコ無しのバレンタインデー。どうするかを考えた。


「あ!なんか聞いたことあるな。全身にチョコを塗って……、って私のバカ!!」

想像した自分を叱った。


「……仕方ない。溶かして固めるか」

亜沙美はオーソドックスに行くことに決めた。

「でも、固まるかしら…。冷凍庫に入れる?…考える前にチョコを溶かそう」

亜沙美はとりあえず再度チョコを溶かす事にした。


「…型が無い。アルミホイルでハート作ろうかな?」

しかし作れなかった。

「こうしてこうして、ああ!もう!丸でいいや!」

いびつな丸の形をしたアルミホイルを数個作り、溶かしたチョコを入れた。


「さっ!冷凍冷凍!」

それを冷凍庫に入れた後で

「よし!メイク始めますか」

出勤の準備をした。



会社


「私ってひょっとしてバカなのかしら…」

亜沙美は見事にチョコを冷凍庫に入れっぱなしで出勤した。つまりチョコは忘れた。


「竹下さん、花見商品のラインナップです。確認お願いします」

直人が書類を持ってきた。

「…はい」

「…?具合悪いですか?」

「ん?ううん。大丈夫だよ」

「なら、いいんですが…」

「これは去年と同じ?」

「いえ、去年は競合他社にアイデア商品でごっそり持っていかれてしまったので、今年は定番と合わせて今年のメーカー新商品を入れています」

「勝負に出たわね」

「はい」

直人は小声で

「統括の件もあるからね」


「オーケー、信じるわ」

「ありがとうございます」

直人はデスクに戻っていった。




「さとみ!はい、チョコ!」

「ありがとう!はい、私からも!」

さとみと由香はお互いにチョコを渡しあい、二人でそのままシェアして食べていた。


「肩肘張らずにああいうので良かったのかもなぁ、しかも忘れるなんて…」

亜沙美は心底嫌気が差していた。


その様子をさとみが気付き昼食に誘った。



「どうしたんですか?まさか藤堂さんとケンカしました?」

「ううん、手作りチョコを作ったんだけど忘れちゃって…」

「えっ?」

「あんなに失敗したのに…徹夜したのに…」

「…あ、えっと、その」

「バカだよね…私って」

「い!いえ!」

「…はぁ、どうしよ」

亜沙美はうなだれた。


「あ、あの…」

「ん?」

「家にはあるんですよね?」

「うん…」

「じゃあ、家に呼ぶってのは…」

「……!!それだ!!」

亜沙美は身を乗り出した。


「えっ?えっ??」

「保坂さん、ありがとう!それだよ!!うちに呼べばいいんだ!」

「あっ、はぁ…」

「うん!そうか!そうだよね!」

亜沙美はその方向で行くことにした。


亜沙美はスマホのメッセアプリを開き直人に連絡した。

「今日は私の部屋に来て。っとこれでよし」

数分後、直人から返事が来た。内容は「知らないから一緒に行きたいけど帰りはどうする?」だった。

何時に仕事が終わりそうか聞いて駅で待ち合わせることにした。


その頃、直人はデスクで色んな女性からチョコをもらっていた。


「…モテモテじゃん」

智美がやってきた。


「はい。ちょうだい」

直人は笑顔で手を差し出した。

「腹立つ…。はい!」

智美は板チョコを直人に放り投げた。


「おい…」

「文句あるの?なんだかんだそれが一番おいしいでしょ!」

「…そう言われればそうだな」

「お前、これ見よがしにデスクにチョコ置くなよ。…考えろよ?」

智美は主語を言わずに話した。


「…しまっておこう」

「ねぇ、一回でいいからビンタしていい?」

「何でだよ!ダメに決まってるだろ!」

「だって腹立つんだもん…。一回だけ!」

「ダメ!」

「嬉しいだろ?」

「全く!」

「とか言いつつ?」

「したら本気で怒るからな?」

「…つまんないの」


智美は帰っていった。




時間は十九時を過ぎていた。

「藤堂くん」

「…はい」

「まだ終わらないのかな?」

「あっ、これ入力したら終わります」

「よろしい」

亜沙美は直人の後ろからプレッシャーをかけていた。

「あの、竹下さん」

「なに?」

「近いし、何か怖いんですけど…」

「もう、皆帰ったからね。あとは藤堂くんだけだよ」

「…何かやらかしましたっけ?」


亜沙美は直人の耳元で囁いた。

「今日が何の日か知らない訳じゃないでしょ?昨日応援行ってるんだし」


「…はい」

「敬語じゃなくてもいいんだよ?言ったでしょう?皆いないって」

「何かあった?」

「別に?」

「…怖い」

「私の愛が怖いとか酷くない?」

「凄いチョコがあるの?」

「…そ、そそ、それはお楽しみ」

「……」

「何か言いなさいよ」

「今日、胃薬持ってない…」

「何か言った!?」

「何にも言ってません…」

「今日は真っ直ぐうちに帰るからね」

「ご飯作ってるの?」

「…無いよ?」

「え?」

「え?」

「ご飯…」

「チョコで充分でしょ」

「どんだけ作ったの」

「…さぁ?」

「……ご飯食べてから行こうよ」

「よく考えたらそうだね。って口より手を動かす!」

「理不尽……」

「ねぇ、ナオ…」

亜沙美は後ろから抱きついた。


「な、何?」

「早く終わらせなさい」

「…じゃあどいてください」

「ちっ!」

「舌打ち!?」

「ふーんだ」

亜沙美はデスクに戻った。


十五分ぐらい経ったあと、直人は仕事が終わり

「終わったよ」

と亜沙美に声をかけた。

「じゃあ帰るよ!」

亜沙美はすでに帰る準備を終えて待っていた。


しかし、亜沙美は忘れていた。キッチン等諸々片付けていなかったことを。

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