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フェイクマイナス  作者: 海鮮メロン
54/77

#54 絆っていうか信頼っていうか

直人は目を覚ました。

「……っ!」

起き上がろうと体に力を入れたら何故か胸の辺りが痛い。

何があった?亜沙美を見送ったところまでは覚えている…。いや、見送ったか?…夢?どこまでが?

ここはどこだろうと痛みを我慢しながら体を起こした。

周りは水色のカーテンで仕切られており、気が付くと電子音や台車のガラガラという音が聞こえていた。


左腕には点滴が付けられており、何となく状況がわかってきた。


そういえばずっと眠れていなかった。

先に進もうとしても進まない、進めない。どうしたらいいのかわからなかった。

考えて考えて結論を出してはまた考えて、別の結論を出してもまた初めから考えて。

その繰り返しが頭の中でごちゃごちゃと混ざり、眠ることが出来なかった。


昨日の夜は久々に何も考えずに眠ることが出来たが、どうやら逆にそれで蓄積されたモノが表に出てきてしまったのだろう。

張りつめていたナニカが良い意味で切れていた。


カーテンが開き看護師が様子を見にきた。

「あっ、気が付きましたね、ちょっと待っててください」

「…はい」

看護師は医師を連れてきて直人はいくつか質問をされたのでそれに答えた。



「…じゃあ原因の自覚はあるということかな?」

「恐らくそれじゃないかと」

「うん、過労に近いものだね。今打ってる点滴が終わったらまた様子を見に来ます」

「…はい」


直人はまた仰向けに寝た。



しばらく時間が経ち再度医師が入ってきた。

また会話をした後にもう帰っても大丈夫だと言われたので直人は帰ることにした。


しかし直人は気掛かりがあった

「あれ?財布、家だよな……。事情話せば取りに帰っても大丈夫なのかな」


直人が受付に行くとそこには亜沙美がおり、直人の姿を見つけると駆け寄ってきた。

「だ、だだだだ大丈夫なの!?」

亜沙美は焦っている。

「う、うん。大丈夫だよ?どうしてここに?」

「帰ろうとしたら大きな音がしたからすぐに戻ったのよ!そしたら倒れてたから…」

亜沙美は感情が昂っているのか声が大きかった。


「…ちょっと落ち着こう、もう大丈夫だから」

直人は周辺の人達に会釈をして、亜沙美をなだめた。

「…ちょっと先にお会計してくるよ受付の人こっち見てるし、あっ…」

「ん?どうしたの?」

「いや、財布無いから保険証もない。そこから話してくるよ」

「大丈夫だよ、持ってきてるから。はい」

亜沙美は直人の財布をバッグから取り出し渡した。


「持ってきてくれたの?」

「うん、そばにいることが出来なかったし困るだろうなって思ったから、一旦帰って持ってきた」

「ありがとう、助かるよ」

「ううん、大丈夫。ほら、お会計お会計」

「うん、じゃあ行ってくるね」


直人は受付に会計に向かい、亜沙美は近くの椅子に座った。



「…私のせいだよね、きっと」

木曜日の仕事中、今までに見たことのないほどの直人の疲れた表情が亜沙美は気になっていた。

仕事量は変わってはいない。だとしたら自分の言葉が直人を困らせてしまっていたのではないか。

それが原因ではないかと自分を責めていた。


「難しいな、本当に…」

「ん?なにが?」

直人が戻ってきた。


「んー?ちょっとね…」

「…もう解決してるからね?」

「解決?」

「多分、亜沙美が考えてたこと」

「わかってたの?」

「自分のせいだとか思ってるんじゃないかなって」

「私のせいでしょ?」

「そうだけど、解決したから」


「…そこはウソでも違うよとか言わない?」

「もっと亜沙美との間は踏み込んでいこうと思って。じゃないとこれ以上先に進めない」

「うん…、そうだね。どこか気を使ってたかな」

「それがダメなことってわけじゃないけど、それだけでもダメなんだって事に昨日気付いた」


「具体的にはどうするの?」

「基本的には変わらないよ」

「えっ?どういうこと?」

「でも、ケンカになりそうな時はケンカしよう」

「なるべくならしたくないけど……」

「今の僕達なら言い合いをしても壊れない絆っていうか信頼っていうか、そういうのがあると思うから大丈夫」

「…本当に?」

「うん、大丈夫!」

直人の言葉には不思議と力があった。

「わかった、信じるよ?」

亜沙美はそれを受け入れ、信頼することにした。


二人は病院を出て帰ることにした。

「…そういえば今、何時なの?」

「んーと、昼ちょっと過ぎ」

「ご飯食べていく?」

「食べられるの?」

「多分むしろ食べなきゃダメだと思う」

「…そうね、あっ!ナオ!今週は夕飯食べてたんでしょうね!?」

「…何を食べに行こうか」

「ちょっと!こっち見なさい?」

「…見ない」

「見なさい」

「食べてません」

「はぁ…。はい!じゃあガッツリしたもの食べるよ!」

亜沙美はため息をついたあと直人の腕を組み、半ば強引に引っ張るように歩いた。


「亜沙美…」

歩いている途中で直人が話しかけた。

「なに?」

「これからもずっと一緒にいてほしい」

亜沙美は急に立ち止まり直人の顔を見た。


「当たり前でしょ。逃がさないから」

「……い、いや、あのそういう意味じゃ」

「はい!行くよ」

また引っ張るように歩きだした。


しかし斜め後ろから見る亜沙美の顔はニヤけてるように見え

「まっ、いいか…」

直人は笑顔になった。


しかし言っておかなければならないこともあった。

「亜沙美、胸の辺りを打ったみたいで痛いから、ちょっとスピード抑えてくれない?」

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