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フェイクマイナス  作者: 海鮮メロン
53/77

#53 私の朝

二月一日

亜沙美は目を覚ました。またソファーで寝てしまっていた。

隣を見ると直人はまだ寝ている。

昨日、直人の家に泊まりに来てから今までに無いほど色々と話に話した。


亜沙美は少し悔しかった。自分の弱いところ、出来ない事、そういった所を話したが直人は全て知っていた。

知らなかったのは自分だけだったことが悔しかった。

直人はそういった部分も含めて好きでいてくれていたのに、自分は直人の弱い部分等は知らずに好きになっていた。いや、正確に言うと見ていなかった。


思い返すと以前に交際していた男性の事もちゃんと知っていなかった事に気が付いた。

また同じ失敗をするところだったと少し怖くなり反省をした。


隣では直人がまだ寝ている。

それはそうだ、昨日ほとんど寝ていなかったのだから。亜沙美は途中から記憶が無い。

恐らくそのタイミングで寝てしまったのだろう。

部屋はとても暖かくいつものように毛布が掛けられていた。


亜沙美は少しの間、天井を見上げ呆けていた。自分もまたほとんど寝ていない。と思う。

スマホで時間を確認する、七時を過ぎたところだった。

いつも起きる時間よりも全然遅い時間。それは直人にとってもそうだろう。亜沙美はそれは知っていた。


掛けられていた毛布を剥いで、それを丸めてソファーの横に置き、洗面台に向かう。

案の定、目の下にクマが出来ており、当然の事ながらメイクも落ちており、直人を起こさないようにカバンからメイクポーチを取り出し、再度洗面台に向かい軽くメイクを直した。


またいつものように朝御飯を作るかとキッチンに向かい、冷蔵庫を開け味噌汁の材料になるものを取り出し、シンクの下から米を二合ザルに入れて洗米を始めた。


炊飯器のスイッチを入れてから、鍋に水を入れて火にかける。米の隣には箱が置いてあり、中には色々と調味料が入っていた。

亜沙美はその中から和風だしの素を取り、鍋に適量入れてから具材を切ることにした。


沸騰した鍋に具材を入れ少し火を弱めた亜沙美はまだ何か無いかと冷蔵庫を開けると卵があったので目玉焼きを作ろうと思った。


フライパンに卵を割り落とすと黄身が割れてしまい、亜沙美はムッとした顔に変わる。

これは自分で食べようと皿に出し、もう一つを再度割り落とした。

今度は上手く出来たので少量の水を入れて蓋をした。


鍋に味噌を溶いている頃に直人が目を覚ます。


「いい匂い…」

まだ眠くてちゃんと開かない目にとても小さな声でいつもの台詞を言っていた。

亜沙美はそれを言われるのが嬉しかった。


フライパンの蓋を外し目玉焼きを皿に盛り、我ながら上手く出来たととても良い気分になった。


直人が立ち上がりキッチンに向かってくる。

「…いつもありがとう」

そう言われた亜沙美はニコッと笑う。


「手伝うことある?」

これも直人がいつも言う台詞だった。なので亜沙美はいつもこう返すようにしている。

「大丈夫だよ、座って待ってて」

これが毎朝の会話にならないか…、亜沙美は頭の中にある未来の一ページに書き留めた。


「…うん、ちょっと歯を磨いてくるよ」

直人はそう言ってあくびをしながら洗面台に向かった。


その間にご飯と味噌汁をよそい、目玉焼きと順番にテーブルに運び、箸とコップを用意した。

直人が再度こちらに来たときにはもう食べられるように準備を終えた。


食事中、昨夜話しすぎた為にこれといって話すことが無くお互いに無言で食事を進めた。

恐らくこれからもこういうことがあるだろう、だからこそ一言でも会話があるだけでも違うのかもしれない。

亜沙美は直人が変わらないことを信じることにした。



午前九時を回った頃、亜沙美は帰り支度をしていた。


玄関に向かい靴を履く前に直人に呼ばれ、振り向くと抱きしめられた後にキスをされた。

笑顔で見つめあった後に亜沙美は靴を履き、直人を手招きして呼んだ。

近付く直人を今度は亜沙美から力強く抱きしめ、キスをした。


「じゃあね」

亜沙美は笑った。


「うん、じゃあ、気を付けてね」

直人も笑っていた。


亜沙美は外に出て手を振りながら扉を閉め、鍵は以前に受け取った鍵でかけた。


扉から数歩歩いたところで部屋の中から何かが倒れたような大きな音が聞こえた。


亜沙美は振り返り

「…何?今の」

すぐに戻り、扉の鍵を開けた。

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