表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フェイクマイナス  作者: 海鮮メロン
45/77

#45 初めまして

一月十九日 日曜日


二人は昼頃に直人の実家に向かう為、直人の部屋の最寄り駅で待ち合わせをし、電車に乗っていた。


「ねぇ、本当に何も持ってこなかったよ?」

「大丈夫だよ、初めに僕から話をするし」

「うん……」

「…大丈夫だよ」

直人は亜沙美の手を握った。



実家前

「…来ちゃった」

「緊張しなくても大丈夫だって」

「…う、うん」


直人は家の玄関を開けて

「ただいま」

と声をかけた。


「はいはいはいはい」

母 圭子が出てきた。

「お帰りなさい。そちらの女性が?」

「今、お付き合いしてる竹下亜沙美さん」

直人が圭子に亜沙美の事を紹介し、亜沙美が軽く一礼をしたあと

「初めまして、直人さんと交際させていただいております。竹下亜沙美と申します」

と自己紹介したあと改めて頭を下げた。


「母の圭子です。ささっ、どうぞ上がってください」

「お土産いらないって言うから本当に何も持ってきてないよ。亜沙美は持ってくるつもりだったけど」

「いいのいいの!そんなに気を使わなくて」

二人は玄関を上がり、案内されるままに居間に入った。

今には父の博史がおり、二人が入ってくると立ち上がり

「いらっしゃい。あなたが亜沙美さんですね。父の博史です」

「初めまして竹下亜沙美です。本日はお邪魔いたします」

「これはご丁寧に。いやはや直人には勿体ないぐらいしっかりとした方だ」

「父さん、余計な事を言わないように」


「まぁまぁ座ってくださいな、座布団で申し訳ないけど」

「あぁ!いえいえ、失礼いたします」

直人と亜沙美は隣同士で空いている座布団に座った。

「そんなかしこまらないでちょうだいな!直人、ご飯は食べたの?」

「いや?昼でしょ?食べてきてないよ」

「もう食べるかい?」

直人は亜沙美の顔を一度見てから

「そうだね」

「じゃあちょっと待ってて、コロッケ買ってあるからそれも出すわね」

「あぁ、ありがとう」

「コロッケって、あの?」

「そう」

「あれ?亜沙美さん知ってるのかい?」

「智美と会ってるし話してるからね」

「……そ、そそそそうか」

「…父さん、どうした?」


離れた台所から圭子が話し始める。

「父さんは智美ちゃんが会ったことで修羅場になってんじゃないか?とか言い出してたのよ」

「そんなわけないだろう…。何を言ってるんだよ」

「そ、そうだよな!そんなことあるわけないよな。すみませんね亜沙美さん」

「いえいえ!」

「そういえば直人、あんた智美ちゃんと部屋隣なんだって?つくづく変な縁だねぇ、考えてることが一緒なのかね」

「あれ?知ってたの?」

「佳江さんから聞いたんだよ!あんたは何にも言わないから」


「佳江さんって智美のお母さんね」

直人が亜沙美に説明する。


「はい、お待たせ」

圭子がいくつか大皿で料理を運んできた。

「直人、小皿とか出すから手伝いなさい」

「うん」

「あっ、私も」

「亜沙美は今日はお客さんなんだから座ってて」

「う、うん…」


居間には博史と亜沙美だけになった。

「直人が色々ご迷惑をお掛けしてるでしょう」

「いえいえ!私の方がいつも助けられてます。仕事もプライベートも」

「そう言っていただけると助かります。職場では上司と部下の関係だとか?」

「はい、そうです。私の至らない所をいつもフォローしてもらってます」

「へぇ、あいつがねぇ…」

博史は当然直人の仕事っぷりなど知るよしも無く、亜沙美の言葉を少し意外に感じていた。


「何を疑ってるんだよ」

直人が小皿と箸を持って戻ってきた。

「いや、お前がどういう風に働いてるか想像できなかったからな」

「そうね、学生の時はいつものらりくらりやってたからねぇ」

圭子はお茶を持って戻ってきた。

「なんか言い方にトゲがないか?」

「そう?まぁちゃんと仕事して、いい人とお付き合いも出来て。いつも上手いことやってるわって思ってるよ」

「多分母親が言う言葉ではないよ、それは」


「さっ!亜沙美さん、召し上がってください」

「はい、いただきます」


「取るよ」

直人が小皿を持ち、いくつか取り分けた。

「ありがとう」

「…直人、成長したな……」

「何を言ってるんだよ」

「いや俺は智美ちゃんと取り合ってる姿しか見てないからな?」

「……そういえばそうか」

「あんた!あんまり智美ちゃんの話をするんじゃないの」


「…いや、何かがあった前提で話してるけど何も無いからね?」

「え?そうなのかい?亜沙美さん」

「はい、智美さんとは連絡先も交換してちょくちょくお話もしてるので」

「え?そうだったの?知らなかった…」


「正直にお話しすると初めは嫉妬というか何て言うかそういうのがありましたが、お話しして一緒に買い物もして、一昨日も食事をして。もう私はそういう感情は無くなってますので」

「そう?それならいいんだけど。親から見てても仲が良すぎるからね。それを亜沙美さんが見たら嫌な気持ちになるんじゃないかと思ってたのよ」


亜沙美は少し笑い

「初めは思いましたけど、今は慣れました」

「今ではもう僕らをあしらうようになってるもんね」

「え?そんなことしてないよ?」

「いや、僕らが何か言い合いしてると。はいはい、行くよ。とか言うじゃん」

「あれはもう慣れたの、私がいなかったらずっとやっててどこも行けないでしょ?」


「直人、あんた会社ではやめなさいよ?」

「それは智美に言って」

「あれ?亜沙美さんは智美ちゃんの上司にもなるのか?」

「いや?部署が違うから今のところはそうじゃないよ」

「今のところ?」

「異動とかあるじゃん」

「あぁ、そういうことか」


食事をしながら話したからか、亜沙美から少し緊張が無くなり、直人と智美の言うとおりで良いお母さんで良かったと安堵した。

その後もしばらく会話をし気付けば夕方になっていた。


「あら?もう西日が差してきたわね」

「…もうこんな時間か、そろそろ帰るかな」

「もう帰るのかい?」

「明日仕事だからね」

「そうね、遅くなっちゃうと悪いわね。亜沙美さんまたいつでも来てくださいね」

「はい、ありがとうございます」

「亜沙美さん、至らない点もあるかと思いますが、直人の事をよろしくお願いします」

博史が頭を下げ、続けて圭子も下げた。

「あぁ!いえいえ!私も至らない点があると思いますがこれからもよろしくお願いいたします」

亜沙美も頭を下げた。


直人はどうしていいかわからなくなった。

「よろしくお願いします」

とりあえず亜沙美に頭を下げた。


「よろしくお願いしますじゃないよ!何を言ってるんだい。努力しますでしょ!」

圭子は直人を叱った。


「…亜沙美と釣り合うように努力しますのでよろしくお願いします」

「私も努力しますのでよろしくお願いします」

二人は向かい合って礼をした。



玄関


「それじゃ」

「お忙しいところお邪魔しました」

「いえいえ、またいつでもいらしてください」

「ありがとうございます、また是非」

「直人、しっかり送っていくように」

「わかってるよ」


二人は実家を出た。



直人の両親は居間に戻り

「ものすごくしっかりしたお嬢さんだったわね」

「…直人には勿体ないな」

「緊張してたみたいだけど、次来るときは緊張してない亜沙美さんとお話ししたいわね」

「まぁ、今日は仕方ないだろ。俺もお前もお互いの両親に会うときは緊張したろ?」

「それもそうね」



電車内

「…ナオ、私どうだったかな」

「どうって?」

「お母さんとお父さんに失礼無かった?ちゃんと良く思われたかな」

「…大丈夫。うちの両親は細かいこと気にしないし、何よりまた来てとか次の話もしてたでしょ?」

「う、うん」

「だから大丈夫」

直人はどうして来たときと同じように亜沙美の手を握り

「今度は僕が亜沙美のお父さんに会う番だね」

「うん!」

そう言いながら直人は亜沙美の父親に会う前にちゃんとプロポーズをしなければと考えていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ