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フェイクマイナス  作者: 海鮮メロン
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#4 恋人気分と胃痛の原因

第三営業部は衣料品を担当している。

といっても会社の方針で色々な洋服よりも普段着や部屋着として着るような安いTシャツや下着類がメインとなっている。


その第三営業部の経理担当の女性が二人の目の前に現れた。


保坂さとみ 二十六歳


大学の経済学部を卒業後新卒で入社、それ以来ずっと経理として勤務している。

多少世間知らずな一面もあり、時折周囲と会話が噛み合わない事に悩みを持っている。


「竹下さんと藤堂さん、そういう関係だったんですね…やっぱり」


亜沙美は咄嗟に腕を離した。

「ほ、保坂さん……ど、どうしてここに?」

「やっぱり付き合ってたんですねぇ…」

「保坂さん!?どうしてここに?や、やっぱりって?」

「そっかぁ…」

「保坂さん!?聞いてる?」


さとみは振り返って歩きだした。

「ちょーっと待ったー!」

亜沙美はさとみの肩を掴んで止めた。


「え、えーっと、ちょっと話を聞いてくれない?そうだ!ご飯食べに行こう!ご飯」

「えっ?今から二人で食事なんじゃないんですか?私、二人の邪魔になるの嫌ですけど」

「うん、よし!ようやく会話できるね!?」


亜沙美は何故かどっと疲れた。

「これには深ーい事情があってね?」

「事情ですか?」

「そう!それを話したいから今から三人でご飯行かない?」

「腕を組んでラブラブで歩いてたことに事情?何ですか?自慢ですか?」


さとみが何故か少し怒っている事を亜沙美は不思議に思ったがここで逃がしてはいけない強く思った。

「さとみ、ちょっと話を聞いてほしい。全部話すから近くの店に入ろう」

直人がさとみに話しかけた。


「さとみ?えっ?」

「あっ、大学の後輩なんです。同じサークルにいて」

「あっ、そうだったんだ」

直人がさとみと呼んだ事に亜沙美は苛立ちにも似た不安感のようなものを感じた。


「わかりました、藤堂さんが言うなら」

直人の言うことにはすんなりと従うさとみを見て亜沙美は気付いた。

「まさか、この子……。」



三人は近くにあった居酒屋に入った。

少し複雑な感情を持ちながら亜沙美は事情を説明した。

「だからね、私も藤堂くんにしか頼める人がいなくてそれで」

「うん、そういうこと」


さとみは少し下を向いてから

「だとしてもさっきみたいに腕を組んで歩く必要は無いんじゃないですか?」


「っ!……」

亜沙美は言葉に詰まってしまった、確かに自分の説明だけだとさとみが言ってることの方が正しい。

しかし真の目的だけは言うことは出来なかった、そして本当にその気になって腕を組んでた事も説明出来なかった。


「普段からそうしてないといざというときボロが出たら台無しだろ?」

直人がフォローの為にさとみに説明を始めた。

「いざというとき?」

「あぁ、竹下さんのご両親に会った時にそこを見抜かれた時点でもうおしまいだから」

「それは藤堂さんがやらなきゃいけないことなんですか!?」

またさとみは少し怒っている。


「さとみ、俺は日頃から竹下さんに世話になってるし以前クビになりかけた俺を守ってくれた人だ。恩人なんだ。恩人からのお願いに恩で返したらダメか?」

「い、いえ…」

「だろ?あとすまないがこの事は他言無用でお願いしたいんだけど」

「はい、それは別に誰にも言うつもりはありませんけど。もし本当に付き合ってたとしてもそのつもりでしたから」

「悪い、ありがとう」

直人は頭を下げた。


「あ、ありがとう!」

続けて亜沙美も頭を下げた。


その後、大して弾まない会話の後に三人は帰ることにした。

「あっ、すみません、ちょっと僕トイレ行ってきます」

「はーい」


直人が席を外すとさとみが話を始めた。

「竹下さん、本当に藤堂さんの事何とも思ってないんですか?本当は好きなんじゃないんですか?私が竹下さんの立場なら何とも思ってない男性に頼みません」

するどい…亜沙美はそんな質問が来るとは思ってはおらず突然の矢継ぎ早な質問に上手く言葉に出来なかった。

「う…うーん。えー…それは……」

亜沙美はどう答えるか迷ってしまった。


「やっぱり……私負けませんから!」

「えっ?保坂さん……?まさか」

亜沙美は焦った。自分以外にも直人の事が好きな女がいるとは予想もしていなかった。



長い沈黙のあと直人が戻って来て三人は店を出た。

「それじゃ私はここで」

さとみは一礼をして帰っていった。


「…何か話してました?」

「ん?……ううん、特に」

「そうですか、じゃあ僕らも帰りますか」

「うん、そうだね!」

二人も帰ることにした。



家に着いた亜沙美はさとみの言葉を思い出した。

「うーん、なんか胃が痛い……」

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