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フェイクマイナス  作者: 海鮮メロン
28/77

#28 竹下藤堂コンビ

家に到着する手前で直人のスマホが鳴った。

「ん?智美からだ」

「智美さん?」

「うん、何だろ?……あっ、具体的な時間か」

「明日の事?」

「うん、ランチとしか言ってなかった。明日も混みそうだから11時半ぐらいにする?」

「そうだね、早い方が良さそうだね」

直人は時間と駅で待ち合わせの事を打ち込み返信した。


二人は部屋の中に入り、直人はコーヒーを入れ亜沙美はソファーに座った。

二人分のコーヒーを直人が運び、隣に座った。

「あっ!持ってきたマグカップ!」

「うん、早速使おうと思って」

「嬉しい!」

二人はコーヒーを一口飲んだ。



「ナオ、聞いてもいい?」

「ん?なに?」

「智美さんってどんな人なの?」

「…食いしん坊かな」

「そうなの?」

「うん、よく僕が食べてるのを取ったりしてたよ。さっき食べたのにまた食べるの?とか。それなのに痩せてるから解せん!ってなると思う」

「痩せの大食いってやつだ」

「そうだね、本当になんで?ってぐらいだよ。運動もあまりしてないはずなのに」

「……明日、食べ放題行く?」

「うーん、喜ぶかもしれないけど。そこまで気を使わなくても大丈夫だよ」

「まぁ明日探せばいいか」

「そうそう」


「性格は?」

「さっぱりしてるかな。切り替えが早くてずっとくよくよしてたり落ち込んでるのは見たことない。まぁそこは無理してるのか本当に気にしてないのかはわからないけど」

「うちの総務だからそういう人の方がいいのかもね、無理してたらフォローしてあげないと」

「亜沙美に会うのすごい楽しみにしてるよ」

「なんで?」

「どんな人かなぁって、結構誰とでも壁を作らないタイプなんだよね。作られても壊していくし」

「すごい人だね」

「高校の時は皆友達みたいな感じですごかったよ、廊下歩くと皆から声かけられるの。だから色んな人と積極的にコミュニケーション取らないといけない総務には合ってるかも」

直人は思い出しながら笑っていた。


「高校まで一緒だったの?」

「そうだよ、さっき話したコロッケの店も学校帰りによく行ってたよ。どっちかの母親がそこで買い物してたら買ってもらったり」

「なんか漫画でありそうな光景だね」

「うん、本当にそうだと思う。僕の母親が世話焼きというかお節介というかそういう人だから商店街に顔が利いて、僕の事も知られてて買い物行くとおまけしてくれるみたいな」

「なんかそういう作品あったような気がする」

亜沙美はクックックッと笑っている。


「顔知られてるから悪いこと出来なかったな」

「何でしようとしてるの」

「え?なんでだろうね。ハハハハハ」

亜沙美は少し直人の事が聞けて嬉しい気持ちになったが、聞きたいことがあったので切り出してみた。


「直人のご両親に一度会いたいんだけど」

「そうだ、今日話そうと思ってたんだけど、昨日お母さんからお土産そのまま実家に持っていったんだ」

「あのあとに行ったの?」

「うん、そしたら凄く立派なリンゴでうちの両親とも美味しい美味しいって食べてたよ。ありがとうございますって伝えておいてって。僕も食べたけど美味しかった」

「じゃあ良かった。伝えておくね。…それで?」

「それでその時にうちにはいつ来るの?って言ってたんだ。だから仕事初め後になると思うから聞いておくって答えておいたんだけど…」

「私はいつでも大丈夫だよ!」

亜沙美は少し前のめりになった。


「う、うん、じゃあ今月のどこか土日で聞いておくよ」

「はい、お願いします」

「あ、あとお土産はいいからって」

「え?それは失礼じゃない?」

「お土産と御返し合戦になっちゃうからって」

「あぁ、そういうことね。でもなんか試されてる感がある…」

「ハハハ、そういうのは無いよ」

「でもなぁ、うーん…」

「もしあれなら皆で食べたくてって感じで持って行くのがいいんじゃない?僕も食べたいから買ってきたって話すから」

「あぁまぁそれなら良いのかも。でもナオってそういうの上手いよねぇ、手馴れてるよねぇ」

「あれ?なんか嫌な言い方」

「アハハ、でもそういうやり方…やり口が思い付くってすごいと思うよ」

「なんで言い方を変えたの?何となく悪い印象になるでしょ」

「職場でもいつも助けてもらってます」

亜沙美は軽く頭を下げた。

「本当に思ってる?」

直人は笑いながら指を指した。


一点集中型の亜沙美には足りない部分がある。それは事前に根回しをしておく事や会議の場での周囲の印象操作等、亜沙美のみの意見では簡潔すぎて反発を感じてしまう人もいるため直人が近くにいる場合は全てのフォローを直人が担っていた。

それにより亜沙美のやりたいこと思うことが伝わり上手くいくことが今まで何度もあった。

その他には資料の準備では足りない部分を直人が作り、亜沙美に展開事のシミュレーション別に適した別資料を渡すこともあった。


亜沙美の企画の発想力や行動力は直人には無いが直人のそういう細かい部分は亜沙美には無い能力であった。


ただし直人が他の社員に付いても同じように出来るかと言ったらそれは出来るものではなかった、亜沙美への理解があるからこそ出来ることであり、それ故社内でも竹下藤堂はコンビでの起用が基本となっており、亜沙美より上の立場の社員達もそれを承知していた。


一度亜沙美より直人の存在の方が大きいのではないかと一つのプロジェクトに直人だけが参加する事があったが結果としては可もなく不可もなくの出来で上司の期待する活躍は出来なかった事があった。


しかし亜沙美と直人が組むと期待以上の成果を出すことが多く、社内での直人のポジションはその時点で亜沙美と組ませるということに決まっていた。

ちなみにこの話は本人達は知らない。



亜沙美は少し下を向いて黙っていた。

「ん?どうしたの?」

「なんか緊張してきちゃった」

「今から?早いって」

「なんか受け入れてもらえるかとかそういう事考えたら急に怖くなっちゃった…」

「大丈夫だよ、母さんは元旦の時にはなんで今日は一緒に来ないの。とか昨日も、いつうちに来るの。とか会いたくて仕方がないみたいだし、父さんも亜沙美によろしく言っておいてくれって言ってたから」

「そうなの?」

「ややこしいことはないから大丈夫だよ」

「……うん、ありがと」


亜沙美は優しく微笑み、直人の肩に頭を乗せた。

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