#27 二枚のピザと夫婦の光景
二人はランチを食べられる店を探していた。
三ヶ日の最後だからかどの店もそこそこ混んでいるようだった。
「ちょうど昼時の時間だから混んでるね」
「そうだね、どうしよっか?この辺に住んでるナオに任せる」
「うーん、あっ、そういえばちょっと歩いた先にピザ屋があったなぁ、でもやってるかな?」
「とりあえず行ってみようよ。もし入れなくてもブラブラしてたらどこか入れるかもしれないし」
「じゃあ行ってみよう」
二人はピザ屋を目指した。
朝の曇りが嘘みたいに空は晴れ渡っておりコートを着ていると少し暑く感じ、歩いているのも相まって少し汗が出てきた。
しばらく歩くと直人が店を見つけて指を指した。
「あっ、あそこだ。やってるっぽいね」
「入れるかどうか見てみよう」
店の入口の前に着くと特に客が並んでる様子も待っている様子も無かったため扉を開けた。
「いらっしゃいませ、二名様ですか?」
「はい」
「あちらの窓側の席が空いておりますのでそちらにどうぞ」
「はい、ありがとうございます」
二人は示された席に座った。
テーブルにあるメニューを見るとピザ以外にもパスタやサラダもあり、ピザ屋というよりイタリアンの店という感じだった。
「何にする?やっぱりピザにする?」
「そうだね、ナオ、違うピザ頼んで半分こしない?」
「いいね、そうしよう」
「私は定番でマルゲリータ食べたい」
「じゃあ僕はトマトソースじゃないやつから選ぼう。あっ、このカルボナーラピッツァってやつにしようかな」
「ビザだけでいいの?」
「どれだけの大きさなんだろうね」
「聞いてみよっか?それで決めよう。もし頼むとしたら何?」
「……生ハムのサラダ?」
「いいね、今日はワインも飲んじゃわない?」
「うん、それだったら別にピザの大きさ関係なく生ハム頼んじゃおう」
「そうだね。……お願いしまーす」
亜沙美は店員を呼んだ。
注文を済ませ直人が外を見ていると、やはり人の流れが多く何故かしばらく見てしまっていた。
「ナオ?何か見えるの?」
「ん?いや人が多いなって、よく考えると三ヶ日にこんなに出掛ける事無かったなぁって思ってさ。毎年こんな風に人がいるんだね」
「あれ?そんなに外に出ない方だっけ?」
「そうだね、何か用事が無い限りは家にいるね」
「じゃあ今年はもう疲れてる?」
「疲れてはないよ、亜沙美と会えて嬉しいし」
「私もナオと会えて嬉しい」
二人はヘラヘラ笑いあった。
テーブルに生ハムのサラダと赤ワインが運ばれてきた。二人はいただきますと言ったあとに生ハムを一枚食べ、ワインを飲んだ。
あまりにも同じ行動を同じ早さで取っていたのでお互い気付いていなかったが、ワイングラスを置いた時に亜沙美が気付き、思わず笑ってしまった。
「ん?どうしたの?」
「いや、なんかおかしくて」
「なにが?」
「今お互いに全く同じタイミングで食べて飲んでってしたから」
亜沙美はクックックッと下を向いて笑っている。
「あれ?もう酔った?」
「酔ってません」
「そういえば亜沙美の大好物って何なの?」
「大好物…、笑わない?」
「笑いそうなやつなの?」
「んー、意外に思うかもしれない」
「高級なやつ?」
「ううん、真逆。唐揚げだから」
「唐揚げ好きなの?」
「そう、でも普段からは食べないよ?」
「確かに食べてるの見たことないかも。じゃあ今度の外食は和食屋さん行こう。唐揚げ定食とかあるでしょ?」
「いいの?ナオは洋食好きじゃないの?」
「好きだけど和食が嫌いってわけでもないよ。唐揚げとかコロッケも好きだよ」
亜沙美は一つ疑問を持った。
「コロッケって和食なの?」
「確かヨーロッパのなんかの料理をアレンジして作ったものだって聞いたことあるよ?」
「そうなの?」
「うん、だから言葉もコロッケで通じるって」
「何でそんなこと知ってるの?」
「地元で安くて大きいコロッケが売ってるお店があるんだけど、そこのおばちゃんに聞いたことがある。小さい頃から行ってたから」
「そういうお店があるのいいよねぇ、うちの方は無かったから」
「学校帰りに買い食いしてたよ」
「いいなぁ、そういうの」
「亜沙美は高校の時とかそういうの無かったの?」
「学校が家からそこそこ遠かったからね。毎日駅との往復だったよ。…寄り道もしてなかったな」
「そんな余裕はあまり無かった?」
「そうだね、無かった…いや、あったのかもしれないけど、真っ直ぐ家に帰ってたなぁ。うち門限あったから」
「結構厳しかったんだ?」
「他の子と比べるとそうだったかもね。ナオはそういうの無かったの?」
「うちは何にも無かったよ。まぁ部活もやってなかったから夜七時ぐらいには帰ってたけどね」
「真面目君だ」
「真面目ではないでしょ、真面目な人は買い食いしないで真っ直ぐ帰るよ。亜沙美みたいに」
「うん、私は真面目ちゃんだったからね」
「あっ、自分で言ったね」
そこから数分後ピザが運ばれてきた。
「そこそこ大きいよ?」
直人は少し笑ってしまった。
「大丈夫でしょ、食べられるよ」
六等分に切られていたので単純に一人三枚ずつなのだが、直人は少し多いかもと焦った。
周りを見てみると同じように二人で来ている人達はピザ一枚をシェアしている。
「そうか、このお店はそういう感じだったのか…」
「ん?何が?」
「いや、二人で来ててピザ二枚頼んでるの僕達だけだと思って…」
直人は苦笑いをした。
「大丈夫だって!ほら、食べるよ!」
「はい」
二人は食べ始めたが意外にも食べた感じは軽く、次から次へと食べ進めることが出来た。
なんだかんだ言いながら完食してしまった。
「ほら、食べられたじゃない」
「うん、どんどんいけたね。美味しかった」
二人は満腹になり、ちょびちょびワインを飲んだ。
「そういえば聞きたいことあるんだけど」
「なに?」
「一番初めに話があった時に、彼氏のフリしてって時だけど、その時にもう少しで出世出来そうって言ってたでしょ?」
「……ああ、言ったねぇ」
「なんかそんなような話が出たの?」
「なんか少し組織の形式変えようとしてるんだって」
「形式?」
「うん、食品と非食品をそれぞれ統括するポジションを作ろうと考えられてるみたいでそこを目指して実績を上げてくれって専務から言われたの」
「そうだったんだ」
「もう一つ考えられてるのが非食品の部署をまとめる話」
「日用品と衣料品を?」
「そう、ただこっちは最悪のパターンだね、だって人員が減らされるんだから。今より抱える仕事多くなるよ」
「そうか、単純に二つ合わせるだけなら今のままでいいじゃんってなるもんね。目的は人員削減か」
「そっ、だからそうならないように頑張らなければいけないのよ?藤堂くん」
「急に職場モード…」
「仕事の話になったからね。あと仕事初め後に間違えてナオって言わないように気を付けないと」
「そういえばそうだね。僕も亜沙美って呼んだら大変な事になるから気を付けないと」
「もしそうなって変な空気になっても説教する感じでおもいっきりビンタするからそれで誤魔化せるよ」
「誤魔化せないしこっちが痛いだけじゃん!」
亜沙美は大笑いしている。
「それじゃそろそろ出よっか」
亜沙美が伝票を持って立とうとしたが、すぐに直人がコラコラと伝票を受け取った。
「いつもナオが払ってるから悪いよ」
「悪くないよ、行こう?」
亜沙美は少しむくれていたが仕方なく直人の後ろを歩いていった。
店を出た二人。直人は亜沙美がむくれていることに気付いた。
「どうしたの?」
「別に…」
「夕飯の材料は亜沙美持ちでいい?」
「夕飯?作るの?」
「二人でね。その買い物の時は亜沙美に払ってほしいな」
「…わかった」
「これね、少し憧れてるんだよ」
「憧れ?何に?」
「レジで亜沙美がお金払ってて僕が後ろで待ってて、スキャンが終わった商品のかごを僕がサッカー台に持っていってってやつ、よく見る夫婦の光景」
「…プッ、何それ。アハハハハ」
亜沙美が笑顔になった。
「そういうことならわかったわよ、買い物は私で外食はナオね」
「うん、そういうこと」
亜沙美はとりあえず直人の左肩を叩いた。
「え?なんで?」
「フフッ、帰ろ?」
「うん」
二人は家に帰ることにした。




