#19 いつもの二人
智美は居間に戻った。
そこにはイチゴを食べてる直人がいた。
「あ!イチゴ!!何勝手に食べ始めてんの?」
「ん?早い者勝ちでしょ」
「私が戻ってくるまで待ってなさいよ」
そう言いながら一粒手に取り食べ始めた。
「んー、おいしい」
そのままいくつも食べ進めた。
「おい、食べすぎだって。食べるの俺達だけじゃないんだから」
「あぁ、つい…。そうだ直人、メッセの連絡先教えてよ。スーツ渡すとき連絡するから」
「あぁ、わかった」
二人は連絡先を交換した。
「そういえば出社初日の事とかもう決まってんの?」
「ん?まだ、年明けに封書で送るって。来なかったら電話くださいって言われてる」
「そっか」
「ねぇ、直人ってどんな仕事してるの?」
「俺は日用品の買い付け、販売計画に基づいて限定品やシーズン品とかをメーカーと仕入価格の交渉したり、各店舗への割り振り考えたり」
「えっ?直人そんな仕事出来るの?」
「どういう意味?」
「大変な仕事じゃん」
「大変じゃない仕事は無いでしょ」
「………」
「痛っ!何で今頭叩くんだよ」
「なんかイラッときたから」
「会社でそれやるなよ?うちの会社そういうの厳しいからな?」
「会社の外で直人にしかしないから大丈夫、あっ、あと彼女に私の事話しておいてよ」
「なんで?」
「ややこしいことになりたくないから」
「……あぁ、まぁ、そりゃそうか。事前に話しておいた方がいいか」
「うん、明日話しておいて」
「わかった」
直人は昨日の電話後の亜沙美の表情を思い出した。
確かに事前に言っておいた方が亜沙美の為でもあるな、と強く思った。
「内縁の妻とか言っちゃだめだよ?」
「言うわけないだろ。って内縁の妻ってなんだよ」
「昔からおしどり夫婦って周りから言われてたじゃん」
「言われてたけどさ、あとさっき流しちゃったけど会社の外でも他の人がいたら頭叩くなよ?」
「二人きりの時は?」
「それでもだめ」
「わかった、じゃあ周りからバレないように脇腹を突くようにする」
「攻撃自体をやめなさい」
「でも職場で私と直人が会うことってあるの?」
「多分あるよ、うちの会社の総務は本当に何でも屋だから。総務部の人達がいなかったらうちの会社は回らない」
「……なんとなく想像ついた、だから良い条件なのに求人がいつも出てて、私でも受かったのか…」
「うーん、まぁ激務だねぇ。仕事面で助けられることはないけど、何か飯奢ったり愚痴聞いたりはするから連絡してこいよ」
「言ったな?」
智美はスマホを取り出し何か操作した、すぐに直人のスマホがメッセを受信した。
「海鮮丼おごれ?何で今送るんだよ。しかもメニュー指定で」
「マグロがメインのやつね」
「うるさいよ」
夜九時に近づいた頃
「それじゃそろそろ帰るよ」
「あぁもう行く?」
「うん」
「それじゃスーツ受け取ったら連絡するから」
「うん、頼んだ」
「イチゴ忘れないようにね」
「…どこ?」
「えっ?」
「あっ、台所だ」
圭子は取りに行った。
「はい、これ。くれぐれも粗相の無いようにね」
「わかってるよ」
「あと暖房つけるならイチゴは冷蔵庫に入れておきなさい。悪くなっちゃうから」
「うん」
直人は実家の外に出た。見送りに智美が玄関まで来た。
「ちゃんと私の事を話しておくように」
「わかったよ」
「一度会いたいなぁ」
「……いや、でも実際会っておいた方がいいかもな。総務の仕事でうちと関わるとき知ってると知ってないじゃ全然違うから。その事も話しておくよ」
「おっ?じゃあ楽しみにしてるよ」
「うん、それじゃあ」
「うん、連絡するから」
「ほいよ」
直人は家に帰っていった。
そこから数十分後、智美が居間でくつろいでいると玄関から何やら騒がしい声が聞こえてきた。
どうやら父親達が帰ってきたらしい。
佳江が台所から玄関へ向かった。
「お前ら酔っぱらって帰ってくるとは良い度胸してんな、毎年毎年」
「あ、あのー、いや。そうだ!これお土産、包んで貰ったんだ」
佳江はお土産をぶんどり、二人を玄関から追い出した。
「お、おい、開けてくれ。悪かった。ごめんなさい!!」
智美は気にせずテレビを見ることにした。




