#17 思い出のコロッケと女心
商店街
「懐かしいなぁ、よく行ってたお肉屋さん行こうよ」
「あぁ、やってるかなぁ。ちょっと行ってみようか、もしやってるなら俺もコロッケと唐揚げ食べたい」
二人は10代の頃よく行っていた精肉店に向かった。
そこは肉だけではなくコロッケや唐揚げ、ハムカツ等多くの揚げ物も売っており、非常に安かった為地域の子供達の思い出の味にもなっていた。
「コロッケ40円だもんね、しかも大きくて」
「そうそう、学校帰り食べてたよな。……また思い出した、いつも先に食べ終わっては俺のコロッケ勝手にかじりついて食べてたよな」
「直人が遅いからお腹一杯なのかな?って気を使って食べてあげてたんじゃん」
「智美が早いの、二口で食べてたじゃん」
「美味しいからね」
「おばちゃん、いつも笑いながら見てたな」
「うちのお母さん達もよく行ってたから私たちの事も知ってたからね」
数分歩くと店が見えてきた、どうやらやっているようだ。
その前に見覚えのある姿が見える、圭子だった。
「あんた達何してんの!スーツは?」
「買ったよ、三日後以降に受け取りだって」
「そう、それでここに来たの?」
「そう、やってたらコロッケと唐揚げ食べたくて」
「そうだと思って買っておいたわよ、たくさん。智美ちゃんも食べて行きなさい、お母さんも呼んであるから」
「わぁ、ありがとう!」
「あれま、もしかして直ちゃんと智ちゃんかい?大きくなって」
肉屋のおばちゃんが店頭に出てきた。
「ご無沙汰してます」
「智ちゃん、また背が伸びたかい?」
「コロッケいっぱい食べてたからね!」
「ハハハ、そうだね。ほとんど毎日来てたものね。二人はもう結婚したのかい?」
「えっ?ここの二人が?しないしない」
「あらぁ、おばちゃんの目も狂っちまったかねぇ、てっきり二人はすぐに結婚すると思ってたのに」
「直人がずーっと決断してくれなくて……」
「ちょっと!直ちゃん!なんて事だい!」
「誤解を招くことを言わないように!おばちゃん、そういうのじゃないから」
「あらぁ、そうかい。残念ねぇ、奥さん」
「でもね、どうやら歳上の彼女がいるらしいのよ」
「あれ!そうなのかい!?」
「歳上の魅力にやられちゃって、私を捨てていったの」
「まぁ、なんて事だい!!」
「だから違うから!いい加減な事を言わないように!!」
「しっかし、相変わらずだねぇ二人とも」
「ほんっと、図体だけ大きくなって、中身は変わらないんだから」
「息子とその幼馴染にひどいことを言うね」
全員で大笑いした。
「じゃあおばちゃん、またねー」
「はいよ、体に気を付けるんだよ」
「うん、ありがと」
三人は店をあとにした。
「直人、これ!」
圭子が紙袋を渡してきた。
「ん?何これ」
「お土産だよ!八百屋さんに行ってイチゴを包んでもらったから、それ持っていきなさい」
「ん、わかった。ありがとう」
「それでうちの分も買ってきたから、智美ちゃんも食べていきなさい」
「はーい」
「そういえば今日親父は?」
「麻雀だよ、ったく元旦からやることかねぇ」
「まぁ麻雀やってる分にはボケそうにないからそれはそれでいいんじゃない?」
「そうなのかねぇ?」
「あれ?まさかうちのお父さんも一緒かな?」
「多分ね」
両家の父親同士も幼馴染で直人達が小さい頃はどこに行くにも何をして遊ぶのも大体両家一緒だった。直人達が一人暮らしを初めた今では父親同士は休みの日はほとんど麻雀で遊ぶようになっていた。
「そういえば彼女のお母さんに会ったときは病院だったんだよ」
「なんでまた」
「お父さんがお酒を飲みに行ってたらしいんだけど階段踏み外しちゃって、手をついた時に骨折しちゃったみたいで救急車で運ばれたって連絡が来てその時は骨折ってわからなかったから焦って病院に行ったんだよ」
「あらあらそれは大変じゃない、ちゃんと挨拶したんだろうね」
「いや、お父さんには会えなかった。その時は寝てたみたいで、治ってからまたちゃんと挨拶に来るって約束して帰って来た」
「じゃあ明日は何なんだい?」
「単純に家にお邪魔するだけ」
「そうかい、まぁ粗相の無いようにね」
「わかってるよ、母さんも親父達に気を付けるように言っておいて」
「そうだね、今更世話なんか嫌だからねぇ」
「何だ、てっきり結婚の挨拶かと思ってた」
どことなく智美はにやけている。
「何で嬉しそうなのかな?」
「えっ?そ、そう?」
「今から言っておくけど、入社後にチーフを探しに来るなよ?」
「何でバレた?」
「わかるに決まってるだろ、高校時代に俺の事が好きだって言ってくれてる子を調べて、わざとその子の目に入るようにオレにちょっかい出してきたろ」
「あぁ、あれね。怒ってる?」
「いや別に怒ってはないけど、その子もそのあとすぐに別の奴と付き合ってたし、結局長続きしない子だったんだと思うよ」
「じゃあ私に感謝しないとね」
「怒ってはないけど感謝もしません」
「何でよー」
「何でも」
やり取りを聞いていた圭子が小さな声で
「うちの息子はなんでこうも女心がわからないのか…」
そしてため息をついた。
「ん?どうした?母さん」
「何でもないよ、ほら帰るよ」
「コロッケ食べよ、直人」
「はいはい」
「あっ智美ちゃん帰り際にお母さん呼んできておくれ」
「うん、わかった!」
三人は家路に着いた。




