#11 フルーツゼリーとペンダント
大晦日
二人は改めてデパートに来ていた。
「大晦日にデパート来たの初めてだけど、人多すぎ」
「うん、こんなに多いんだね。亜沙美、僕の手を掴んで」
人の混雑をすり抜けて歩こうとするがなかなか前に進めない、二人は離れないように強く手を握り歩いていった。
「あっ、ナオ、ここだ!」
亜沙美が見つけた店は果物で有名なお店でそこには果物が入った見るからに上品なゼリーが売っていた。
「美味しそう。どれにする?」
「…この15個入りにしようか」
「そうだね、そのぐらいがいいかも」
「すみません、この15個入りのください」
「かしこまりました。熨斗紙はいかがされますか?」
「あっ、そうかタイミング的にどうしよう」
「なにが?」
「御年賀か無地の結び切りか」
「………ナオに任せた!」
「えー、いや、そりゃそうか僕が持っていくんだもんね。……じゃあ御年賀でお願いします」
「かしこまりました」
亜沙美は不思議そうな顔で直人を見た。
「そのこころは?」
「お父さんがいるときに改めて挨拶に行く時は結び切りにしようと」
改めて挨拶にという言葉に亜沙美はニヤニヤしながら直人の背中を優しく数回叩いた。
そして最後に頭を叩いた。
「痛っ!何で?」
「んー?ふふふー、かっこいいなぁって思って」
「ごめん、意味がわからない。じゃあ頭撫でてよ」
「お?じゃあ今度からそうしてあげるね」
一瞬、亜沙美の目が何かを企んだ目に見えたが直人はとりあえず見なかったことにした。
「お待たせいたしました」
直人は会計を済ませ店員から商品を受け取った。
「すみません、ありがとうございます」
直人は来た道を歩こうとしたがあまりの人の多さに
「これ、潰れないようにしないと……」
「後ろのエスカレーターから上に行かない?地下よりは空いてそう」
直人はエスカレーターを見て
「そうだね、そうしよう」
一階で降りるとちょうど目の前が広場でベンチがあった。
「ナオ、ちょっと休んでいこう」
「うん、なんか疲れたね…」
たまたまベンチが空いていたので座り、直人は買った袋の中を確認した。
「喜んでくれるかな」
「大丈夫だよ、コンビニとかで売ってるゼリーをよく食べてるから」
「あぁ、あの大きいゼリー?」
「そう、みかんとか桃とかゴロゴロ入ってるやつ、あれでも良かったかも」
「いや、ダメでしょ。僕が怒られるよ」
「多分ね」
二人は笑い合った。
「ナオ、お腹空いた」
「じゃあここで食べていこうか」
「うん!」
二人はデパートの中にある洋食レストランに入った。
「意外と待たなかったね」
時間はまだ11時半にもなっておらず早めに来たため並んでいたのはカップル一組だけだった。
亜沙美はそのカップルがお揃いのペンダントを着けているのが目に入りそれを見てとても羨ましくなった。
そして自分達もお揃いの物が欲しいと必然的に思っていた。
ペンダントなら服で隠せるし仕事中もお揃いの物を着けて働いている、想像するだけでニヤニヤが止まらなかった。
「ね、ねぇ、ナオ…」
「ん?何食べたいか決まった?」
「え?う、ういやー」
「どっち?ハハハ」
亜沙美はとりあえず店を出たら話そうと思った。
直人はオムライス、亜沙美はビーフシチューを頼んだ。
「ナオ、初詣はどうするの?」
「二日に亜沙美の実家行った時に行ければなぁとは思ってたけど」
「今日は行かないの?」
「夜中までいることになっちゃうから、朝から帰るんでしょ?亜沙美辛くないかなとか思って」
「私は大丈夫だよ、あっ、ナオも帰るからきついか」
「ん?僕は何だかんだ昼頃に着くように帰るから大丈夫だよ。じゃあ今日二人で行こうか」
「うん!行こう」
「一つだけいい?」
「なに?」
「混んでない所がいいなぁ」
「あぁ有名な所は人がすごいもんね」
「うん、なんか危ないイメージが何となく強くてさ」
「危ない?」
「うん、ほらそういう所って色々あるじゃん、何かしらの被害を聞いたりしてるからさ。新年早々にそういうのはちょっと」
「まぁね、縁起悪いよね。じゃあ後でどこ行くか調べて決めよ」
「うん」
二人がレストランを出てから少し歩いたところで
「あ、あのさ、ナオ…」
「……下にアクセサリー屋さんがあるみたいだから行こうか」
「えっ!?何でわかったの?うわ、ちょっと怖い…」
「ちょっと!引くのは酷くない?亜沙美がわかりやすいの。前に並んでたカップルをずっと見てたでしょ。女性の方がちょっと怖がってたよ」
「えっ!?私そんなに見てた?」
「見てたよ、これからは気をつけてね」
「…はい」
「そのあともニヤニヤしたりモジモジしたり僕も何だろうと考えたけど、ペンダントでしょ?」
「その通りです……」
直人は右手を出して笑いながら
「行こう」
亜沙美はとても嬉しく弾けるような笑顔で
「うん!!」
二人は手を繋ぎながらアクセサリーショップに向かった。
「いらっしゃいませ」
店に入ると亜沙美は一目散にペンダントのケース前に行った。
「シンプルなのがいいよね?」
「うん、そうだね」
「…ナオが、フッ…大きな宝石を首から下げてたらフフッ、笑っちゃって仕事が出来ないかも、フフッハハハ」
「笑いながら話さないでって」
店員が声をかけてきた。
「ペンダントをお探しですか?」
「はい、ペアで付けられるのを探してるんですけど」
「それではこちらなどいかがでしょう?」
亜沙美は店員とああでもないこうでもないと色々と話していた。
その間、直人は話に入れず辺りを見回していた、その時に指輪を見つけた直人は亜沙美の指輪のサイズを知らないことに気付いた。
「そういえば……」
直人はどうサイズを聞こうか考えなくてはならないと思った。
「ナオ、これどう?」
不意に声をかけられた直人は
「ん?あ、あぁ、それ?」
咄嗟の返答が上手く出来なかった。
「…何見てたの?」
「い、いや別に……」
「私、8号だからね」
「言っちゃったよ!今色々と考えてたのに」
「言っておくけどナオだってわかりやすいんだからね!」
「…はい」
亜沙美の接客をしていた店員は少し笑っている。
「じゃあ改めてこれどう?」
直人は近付きペンダントを見た。トップには輪郭のみのハートの中央にジルコンが付いた比較的安価な物だった。
「いいね、え?これがいいの?」
「うん、私これ気に入った」
「亜沙美が気に入ったのならこれにしよう、僕もいいと思うし」
「それじゃ決まりね!じゃあこれ二つください」
「はい、かしこまりました」
「……指輪のサイズを聞き出す時間分、サプライズ期待してるからね!」
亜沙美は直人の肩をパンッと叩いた。
「…はい、期待しててください」
「えっ?」
亜沙美は右手を振り上げた。
「ちょっと待って!その罰まだ生きてたの?」
「あはは、うそうそ。でも期待してるのは本当だからね?」
「…うん!任せて」
ペンダントを受け取った二人はデパートから外に出た。
時間は午後三時を過ぎていたが何をするにも中途半端な時間だった。
「どうしよっか」
「うーん、とりあえずお土産を持ち歩くのはちょっとあれだから一度置きに帰りたいんだけど…」
「おっ?それを口実に彼女を自宅に連れ込む気だね?」
「言い方が悪い!置きに帰るだけ」
「へー、ほー」
亜沙美はニヤニヤしてる。これは一緒に帰らないといけないパターンだと直人の中で危機管理が働いた。
「じゃあ一旦うちに帰ろう」
「えー、何されるのかしらぁ」
「大丈夫、何もしないから」
「それはそれでどうなのよ!」
直人は強めに肩を叩かれた。




