番外編 クリスマス2
アンジェは、イリーナと相談してから、早速ティアリスとのピアノ練習のために母屋へやってきた。
「あのね、ティア、セトスさまに、クリスマスプレゼントを、あげたいんだ」
「プレゼントにピアノ演奏を贈るというのはとっても良いアイデアだと思いますわ!
セトスお兄さまの喜ぶ顔が今から見えるようですもの」
「ティアも、そう思ってくれるの?よかった」
「えぇ、全力で賛成しますわよ。
それで、何の曲にします?」
「それが、わかんないから、ティアに、聞いてみてるの」
「なるほど、私は選曲要員だと。ロマンチックなクリスマスになるような曲、というと……」
ティアリスが幾つかの曲名を上げたけれど、アンジェはイマイチピンときていない様子。
「アンジェお姉さま、やっぱり私では力不足でしょうか?」
「ごめん、ティア。そうじゃ、ないの。わたしが、わかんないだけ。ごめん」
「あ、そもそも曲自体をご存知ありませんでしたか」
普通なら、曲名を聞けばサッとメロディが出てくる程度にはメジャーな曲を選んではいたが、そもそもアンジェはクリスマスソングを一曲足りとも知らないようだ。
「ごめん、ね?」
「いえいえ、私の方こそリクエストにお応えできず、申し訳ありません。では、サラッとにはなりますが私が弾いてみましょうか。
どれが気に入るでしょうね?」
「ありがと!ティアのピアノ、きれいだから、だいすきなの」
にこにこと笑うアンジェはティアリスのピアノが沢山聞けると楽しみにしているし、ティアリスとしても素直にピアノの腕を褒められて嬉しい。
ピアノを囲んだ2人の少女の間に、柔らかな空気と共に華やかなクリスマスソングが流れ始めた。
アンジェがクリスマスプレゼントの練習を始めて数日後。
セトスが帰宅してからの、アンジェが一日で一番幸せな時間のこと。
アンジェをソファに座らせて俺もその隣にぴったりと寄り添うように腰掛ける。
「アンジェは、サンタさんって知ってるかい?」
「うーん、しらない、と、おもう」
考え込む仕草すらかわいいんだからやっぱり俺のアンジェは最高だな。
「クリスマスの前の夜には、サンタクロースっていう赤い服を来た人がやって来て、一年間いい子にしてた人にはプレゼントを持ってきてくれるんだ」
「お客さん?プレゼント持ってきてくれるの?」
「お客さんではないかな。アンジェが寝てる間にこっそり来てくれるんだって」
「えっ?じゃあ、お礼、言えない……」
「別にサンタさんはお礼がないのは気にしないと思うけど、アンジェが気になるならお手紙置いておいたらいいんじゃないか?」
「なるほど!そうする!」
「でも、サンタさんには誰がプレゼントを欲しがってる子か分からないだろう?」
「うん」
「だから、『プレゼント欲しいですよ〜』っていう意味を込めて、枕元にくつ下を置いておくんだ。そうしたら、そこにプレゼントを入れてくれるから」
「くつ下、おいとくの?変わってるね?」
「まあ、サンタさんはそういう人なんだ」
「じゃあ、わたしも、くつ下おくね!
サンタさんが、くるの、楽しみ!
ちょっとだけでも、会えたり、しないかな〜!」
ワクワクした笑顔でいつもよりハイテンションに話すアンジェが可愛すぎて、思わず抱きしめると彼女からもすり寄ってきてくれて、それがとても嬉しい。
だけど、本来なら10年も前に終わっているはずのワクワク感を今味わっているアンジェが可哀想になる。
その分、俺が全てをアンジェに与えて挙げられるからいいんだけどね。
クリスマス番外編はクリスマスまでに終わりません。申し訳ありませんm(_ _)m
なんなら年越すかも知れません……(´・ω・`)




