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13.ようこそミラドルト家へ

日間ランキング1位をいただきました!

ありがとうございますっ!

 

 俺の家族構成は、両親と兄夫婦と妹だ。

 俺以外の人は全員母屋に住んでいて、俺もこの前まではそうだった。


 アンジェは表向き、結婚準備と婚家での花嫁修業でうちの家に滞在することになっているんだけど、実際の扱いは結婚とほとんど変わらない。


 俺の男兄弟は兄と俺の二人だけで、兄が実家を継いで母屋をもらうから俺には離れが与えられた。

 特別大きいわけではないけど使いやすい二階建ての家だ。


 もう少し向上心の強い人だったら兄の下で働いて一生を終えるのは嫌だと思うかもしれない。実際、俺の友人でもそういって騎士になったり商人になったりしたやつもいる。

 でも俺はそうしたいと思わなかった。

 幼いころから兄を支えて領地経営をすると思っていたし。


 そんなわけで、俺は安定してる代わりに特別なことは起こらない、ローリスクローリターンな人生を送ることになっている。

 これはアンジェと生活するのにはとてもいいことだと思うし、この選択をした過去の自分を褒めたいくらいだ。

 身体にハンデのある彼女にとって、毎日同じような生活を送れることや将来のビジョンがはっきりわかることは大切なことだと思うから。




 家についた俺はまた四苦八苦しながらアンジェを馬車から下ろした。

 アンジェに頑張ろうって言ったけど俺も練習しないといけないことがいろいろあるなぁ……



「アンジェ、ついたよ。ここが俺たちの家だ。離れをもらって準備もしてるけど、先に母屋の両親と兄に挨拶してくれるか?」


 こくり、と頷く。


「あの、セトスさまの、ご両親は、どんな方ですか?」


「そうだなぁ……別に普通の人だと思うけどな。父は厳格な人だけど愛妻家だと評判だし、母は見てるこっちの気が抜けるくらいおっとりした人だ。

 おっとりというレベルじゃなくて……天然、かな?

 兄は父をそのまま若くしたような見た目をしてるんだ。本当にそっくりだから、もし見えてたら笑っちゃうかもしれないくらい。

 でも中身は母に似ていて優しい人だよ。領主になるには少し覇気が足りないとも言われるけど。

 父が言うには、優しく領民思いな兄と、はっきりものを言う俺とでちょうどいいバランスらしい。俺はあんまりそう思ってないけどね」


「わたし、あんまり、たくさんの人と、いっぺんに、会ったことないから、へんなこと、しちゃうかも。変なら、言ってね?」


「大丈夫。みんなアンジェの身体が不自由なことも知ってるから。そんなに細かいことを言う人いないから、心配しないで」


「うん。がんばる」



 先触れをだしておいたものの、父は忙しいからまだいないだろうと思ってたのに、サロンについたら両親がいてびっくりした。


「ようこそ、ミラドルト家へ」


 父がそう言ってアンジェを出迎えてくれた。


「ありがとう、ございます。よろしく、お願いします」


 たどたどしく返事をするアンジェ。


「まぁ! 可愛いらしい子じゃないの! アンジェちゃん、こっちおいで」


 可愛いもの大好きな母の琴線に触れたらしい。

 アンジェはそんなこと言われたことがないからか、かなり戸惑っているようだけど。


「アンジェ、動かすよ」


 声を掛けてから、母のとなりに車椅子を動かす。

 この家の最高権力者は母だから、母に気に入られた時点でもう安心だ。

 むしろお気に入りのものはなんでも構いたおす人だからそっちの心配があるくらいだ。


「わたしの、なまえは、アンジェ、です。

 目がみえません、でも、頑張って、いろんなことができるように、なろうと、思っています。

 よろしく、お願いします」


 父と母の方を向いてきちんと挨拶してから、俺の方を振り向いた。

 うまくできた?と問いかけるように。


 後ろから攻撃を受けるまでだけど。


「アンジェちゃん、かわいいー!」


 唐突に母がアンジェに抱きついた。

 アンジェからしたら本当にいきなりのことだから、めちゃくちゃびっくりしたみたいで、表情で俺に助けを求めてくる。


「母上、アンジェは見えてないんですから、いきなりそうやって抱きついたりしたら、びっくりしますよ。

 というか、母上はいきなり飛びつくのをやめてください。普通の人はびっくりしますから!」


「ふつうの、人じゃ、ないけど、びっくりした」


「あらあら、ごめんなさいね!」


 テンションの高い母に何を言っても通じないけど、とりあえず言うだけ言っておく。


「リサ、もういいか?」


 しびれを切らした父が割って入った。


「ワシはアトラス・ミラドルト。こっちは妻のリサトータだ。

 妻はこのとおり少し変わった人だが、仲良くしてやってほしい」


「アンジェちゃんはもううちの子なんですもの。仲良くするのはあたりまえですよ!」


「そりゃあお前はそうだろうがな……」


「ありがとう、ございます。わたし、へんなこと、しちゃう、かも、しれない、けど、よろしく、お願いします」


「いいのよ、何したって大丈夫! それよりね、何して遊びましょう?」


 こんな自由人に会ったことなどないアンジェは困惑を通り越しておどおどしてるけど、父は止める気がないらしい。


「母上、アンジェと遊ぶのはいくらでも出来ますから、先に兄上に挨拶してきてもいいですか?」


「……うーん、それもそうね。アンジェちゃん、終わったら私の部屋にきてね?」


「……はい」


 母上の心理攻撃ともいえるテンションにあてられて、すでにぐったりしているアンジェだが、まだ兄夫婦との挨拶があるんだ。

 まぁ、母よりはダメージは少ないだろうけど。


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― 新着の感想 ―
[良い点] お母様が思ったよりグイグイ来てて笑ったw
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