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イベント四日目とケモミミ

「どうしてあなたはすぐ一人でいなくなるんです!?」


「……酔っ払いが自分の行動を制御できるとでも? 否、できない!」


 キリッと決め顔する陽の態度は反省の色は無く、完全に開き直っていた。

 その態度を見て、()()の少女は耳をピンと立て、声を張り上げる。怒っている


「んもー! この人は一回ひっぱたかないと分からないんですか?!」


「きゃ~! 叩くとか()()()ちゃんこわ~い!」




 朝、目が覚めると姉がケモミミ少女に怒られていた。

 

(えぇ……どういう状況?)


 いそいそと寝袋をしまいつつ状況の把握に努める。ひと暴れした後、疲れた俺は一応仮眠をとっていた。意味があるかは不明だけど……気持ちの問題ですかね。

 それはそうと恐らく前後の会話からあのケモミミ少女がサツキというNPCだと見当はつく。仮眠をとる前にはいなかったし現在進行形で説教をされてるのを見るに俺が起きるちょっと前くらいに合流したんだろう。


 身支度を終えたシルンは近くあった切り株に座り、陽の説教光景を眺める。思ったより長い。

 廃墟都市にいた時は虚無ってたから気にも留めなかったけどNPCがイベントに参加できるのって珍しくないか? GJOのシナリオに関連するイベントでもない感じだし。


(重要なNPCなのは間違いないだろうなぁ……)


 そう寝袋をしまい終わりアル中が説教されている現場をスクショしながら思う。

 GJOではドワーフやエルフの存在は確認されているがまだ獣人がいることは()()()()()()()()。ゆえに彼女はこのGJOというゲームに獣人が存在することを示す希少な存在のはずだ。

 とんでもねぇな。これが知られればネットニュースの話題になること間違いなしだろう。でも関わったらめんどくさいことになるのも間違いないよな……。

 俺は深く考えるをやめた。ケモミミ少女カワイイ!カワイイ!


 一通りアル中を叱り終えた後、俺の存在に気付いたらしくこちらに歩いてくる。

 俺は身だしなみを整えた。今の俺は紳士、間違っても初対面の相手に悪印象を持たれるわけにはいかないのだ。

 

 狐耳の少女がぺこりとお辞儀をする。

 

「ご挨拶遅れてしまいました。サツキと申します。先程はお見苦しいところを見せて申し訳ありませんでした」


「こちらこそご丁寧にありがとうございます。私はシルンと申します。しがない老人ですが、仲良くして頂けると幸いです」


「くw し、しがない老人www」


(マジでこのバカ黙っててくんないかなぁ!?)


「……ヒナタさん」


 ほらサツキちゃんめっちゃ睨んでるじゃん。

 そうしてサツキちゃんのお説教第二ラウンドが開始された。てかサツキちゃん今お前のことヒナタって言ったよね? プレイヤーネームもしかして(ヒナタ)ままでやってない? この人マジで何してんの???




===




「シン~そっち行ったよ~」


「了解」


 そう言って正面から襲い掛かってきたデカい蜂型のモンスター、スティンビィーを木々ごと屠る。


 サツキちゃんのお説教を終えた一行は森林地帯を探索していた。

 かれこれ三時間ほど探索を行い、モンスターに出会うたびに粉砕してきたが目標のポイントには足りない。

 今日を含めてを残り二日と考えると寝ずに狩りをしても間に合うか怪しいな、とため息ついたシルンは獲得ポイントの確認ついでにちらりと姉のほうを見る。

 ちょうど鷲掴みしたスティンビーの頭を木に思いっきり打ち付けているところだった。


「ふぅ、疲れた~うぷ」


 姉の戦闘スタイルは俺と同じ脳筋戦法だ。

 ただし俺はハンマーを主体とした戦闘スタイルに対し、姉の戦闘スタイルは格闘を主体にしたもので毛色は全く違う。結局どっちも物理全振りなのは変わらないが。


 なのはずなのに姉は自身の身長ほどある大太刀を肩に担いでいる。時々殴打武器として振るっているが正直邪魔にしかなっていない。

 思わずシルンは陽に聞く。


「その刀ってどうしたんですか?」


「ん? これはサツキちゃんのだよ~サツキちゃんじゃこの太刀は重くて持てないからね~私が代わりに持ってあげてるの~えっへん!」

 

「本当はヒナタさんなんかに預けたくないんです……でも、しょうがないのです……」


 しゅん、とするサツキちゃんを他所に陽は大太刀を担いでない方の右手で何か操作する。


「それはそうとシルンさ~目的のポイントまで全然足りないって言ってたよね~」


 現れたのは縦18cm、横30cmほどのスクリーン。それには何かの映像が映っている。おそらくGJOの、配信か動画。探索中も暇さえあれば見ていたものだ。てっきりシルンは暇つぶしだと思っていたが。

 

「ひと狩りいこうぜ」

 

 陽は口角を吊り上げ、獰猛な笑みを浮かべた。


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