脳筋紳士・謎スキルの検証をする
さて、イベントが開催すると知ったならばやらなくてはいけないことがある。そう準備である。
ということで酒場を出た訳だが何をしようか。余談だが飲んだくれは置いてきた。
「と言っても何もないんですよねえ」
この町で買える装備は最初の町だけあってあまり値段に沿う性能とは言えないものばかりだし、じゃあ誰かに装備を作ってもらうとしても今からじゃイベントまでに間に合う可能性は低い。
なので面倒だから初期装備のままいくことにした。そもそもVITに1ポイントも振ってない俺に最初の町で作れる程度の装備なんて焼け石に水だろうし。
そうなるとする事と言ったらレベル上げとアイテム補填くらいだろうか。え? PT方針? そんなものあるわけないじゃないですか。強いて言うならガンガン行こうぜ?
「う~ん……それにしても何か忘れてる気が」
なんか昨日めんどくさいから明日、つまり今日に後回ししたことがあった気がするんだよなぁ……あっ、いつの間にかスキル欄に入ってた謎のスキル【寂寞の凶狼】のことだ。思い出した。確か公爵令嬢ちゃん達を宿まで送った後、疲れてすぐログアウトしたからまだ確認してないはずだ。
思い立ったが吉日、近くにあったベンチに座り、スキル欄にある【寂寞の凶狼】をタップしてみる。普通のスキルはタップしたスキルの詳細が表示されるのだが。
===============================================
【寂寞の凶狼】
『孤高と装飾された獣は生まれながらに虚を抱き、絶え間なく湧き続ける憎悪は拒絶の現れ。己を縛るものすら喰らい、すでに歩みは止めることはできず。骸の山で獣は思う、朱に濡れた月のなんと美しいことかと』
〈拒絶〉
【寂寞の凶狼】発動毎、自動発動。
===============================================
【寂寞の凶狼】のテキストはこれだけだった。
不気味なテキストとスキルと思われるの最低限の説明のみ。
「嘘だろ……使わせる気あんのか」
かろうじて〈拒絶〉が反撃系統のスキルと予想できるくらいだ。こんな不親切なテキストある?
「どこで使えばいいの? このスキル?」
これは……検証必須ということなんですかね。えぇ……めんど。
===
「さてと」
という訳でやってきました森林地帯。レベル上げをしつつスキルの検証もできる。まさに一石二鳥だね!
周りにだれもいないことを確認して、とりあえず普通のスキルの発動と同じ方法を試してみる。
「【寂寞の凶狼】」
バチィ! と勢いよくあの時と同じ紅い稲妻のエフェクトが散ったのと共に眼前に――【寂寞の凶狼】――が表示される。ひとまず発動は問題ないようだ。
「さて、問題は【寂寞の凶狼】がどんなスキルを持ってるかなんだが」
メニューを操作してステータス画面を表示させる『ステータス』って言えば一発なんだけどちょっと恥ずかしい。
=============================================
PN:シルン 『寂寞の凶狼状態』〔9:24〕
LV:18
所持金:23.830メル
ジョブ[ユニーク]:紳士
ジョブ[メイン]:蛮族
ジョブ[サブ]:――
HP(体力)295/295
MP(魔力)16/16
VIT(耐久力):0(0) 【*1.5】
STR(筋力):270(486) 《*1.2》【*1.5】 [*■.5]〔9:24〕
DEX(器用):0(0) 【*1.5】
AGI(敏捷):0(0) 【*1.5】 [*■.5]〔9:24〕
MND(精神力):0(0) 【*1.5】 [*■.5]〔9:24〕
LUC(幸運):0(0) 【*1.5】
※振られていないステータスポイントが30ポイントあります。
スキル
【寂寞の凶狼】
【スマッシュ】
装備
武器:合金の戦槌+
頭:【空欄】
胴:初心者の胸当て
腕(右):【空欄】
腕(左):【空欄】
腰:【空欄】
脚:【空欄】
靴:初心者の靴
装飾品
【空欄】
【空欄】
=============================================
「なるほど」
『寂寞の凶狼状態』ってのがスキルが発動してる時のこのエフェクトバチバチ状態のことを言ってるのは分かる。となりの数字はおそらくタイムリミット的なそれだろう、多分10分……短くね?
とりあえず『寂寞の凶狼状態』についてはこれでいいだろう。問題は[*■.5]だ。ステータスに関与してるのは分かるが一番大事な1の桁が■で塗り潰されてる。ここが0か1かでこのスキルの有用性が変わってくるんですが……。
脳裏に封印安定の文字がちらつくが見なかったことにしてステータス画面を消す。流石に0.5倍じゃないでしょ。そう信じたい。
「……気を取り直して〈拒絶〉の検証やりますか」
検証のため、右手に持っていた戦槌の柄でツンっと軽く突いて目の前の大岩ことビッグベアーさんを起こす。
『グルァァ?』
寝ていたところを邪魔されたビッグベアーさんは俺を見るや毛を逆立て、臨戦態勢に入ったと思った次の瞬間には剛腕を振り上げていた。殺意MAXかよ。
それを俺はさあ来いと言わんばかりに堂々仁王立ちで待ち受ける。
(〈拒絶〉が自動反撃ならきっと発動するはず……!)
ゴォッ
勢いよくが剛腕を振り下ろされる。なんかギロチンみてぇだなぁ……
いやあ、ちょうどいい所にビッグベアーさんがいたから勢いで〈拒絶〉試そうとしたけど人選ミスった感がパない。いやこの場合は熊選かHAHAHA……
「よし! 逃げよう!」
いや怖い怖い怖い! でも今から逃げても間に合わないんですよねぇ! 嫌だ死にたくな――
===
さて、最初の町の噴水にリスポーンした訳だが。
「どう使っていきましょうか」
結論から言わせてもらうと〈拒絶〉はやべぇ。あれだけで【寂寞の凶狼】を使う価値があるくらいには。
ただ一回しか発動しないのは教えて欲しかったなぁ。もう一回試そうとちょうど近くにいたホーンラビットの攻撃を喰らったら普通にクリティカルで脳天ぶち抜かれて一撃で殺されたんだが。ふざけんなよ。
ビッグベアーさんお目覚めからの殺意MAX振り下ろし記録 タイム9.98




