クレア王国
俺は泣いた。
いつぶりだろうか。
俺は大切な仲間を、俺自らの手で殺した。
ほかの仲間たちも同様だ。
しかし、数人はまだ気を張っていた。
ボルダーは俺の前に立つ。
「ボウズ。何してんだ」
ボルダーさんは冷静に見えた。
「まだ、作戦は終わってないぞ!」
顔を下に向けていたものたちが一斉に顔を上げる。
「悲しむのは、作戦が終わってからだ!」
そう言っているボルダーさんの鼻頭が赤くなっていることに気づいた。
辛い、悔しい、不甲斐ない。
でも、今はまだ。
そうだ、まだ作戦は終わってない。
「ミオウさん。もう体動かないでしょ。拠点に戻っていてください」
そこに、リモ電から通信が入る。
皆一斉に確認する。
「金の民、救出成功?」
理解に時間がかかった。
長い戦いが終わった。
たくさんの笑顔が戻ってくる。
「うおおおぉおおおおおおおおおお!!!」
仲間たちの歓声。
俺もめいっぱい声を出した。
そして、涙も。
帰ってこない損失はたくさんある。
俺自身で壊したものも。
そんな中での作戦成功。
俺はぐちゃぐちゃの感情をそのままに、深い眠りについた。
ーーー
「私達も撤退だ!金の民と合流するぞ!」
ボルダーの指揮下、大勢の戦士たちは戦場を駆け巡った。
「ミオウさんのこと。頼みます」
レアドは仲間に気絶した美扇の体を預けると、周囲を見回した。
大破した街。
血。
戸惑うクレア王国民。
彼らはこれから一体どうするのだろうか。
九つの神と崇めた一団は崩壊した。
バルトが死んだのだ。
当たり前だろう。
国民は、
何かを呟いている?
「我らの神に、お力を与えたまえ」
悪寒。
そうだ、まだアイツらがいる。
破壊音。
「な、なんだ!」
煙の中から現れたのは、五人。
「あ、あいつら」
ウェブ、ムース、サーキュラー、パティ、そして恐らく副団長の女。
撤退中の仲間に近づかせるわけには行かない。
「ドンドン!振動ん!」
パティ!
『超振動』レベル80越えの化け物!
あまりにも大きな振動に、瓦礫は粉々になっていく。
「リトー!」
「カマイタチ!」
リトーの『切風』で振動を相殺仕切ることが出来ず、とてつもない衝撃が全身を打った。
「キリキリ、蜘蛛の糸」
ウェブがスキルを放つと、レアドとリトーの体はあやつり人形のように吊るされた。
「動くと苦しいよ」
キリキリと首の糸がしまる。
唐突に、プツンと切れた。
咳き込む。
ぼやける視界には、
五人?
「ば、バルクレア!それに、スピノスも!」
「だーってあんたたちが死んじゃいそうだったんだもん。そしたら人間観察出来なくなるじゃない」
2本のアンロックキーが無理やり開かれた。
「リトーよ。貴様ほど我に適したホルダーもおらん。ここはひとつ、手助けしてやろう」
陽気な声。
「俺っちたちも忘れんなよ!」
「儂ら、まだ完全燃焼してないからの」
「ブレアさんに、ブロウさんも」
もう一人、弓を持つもの。
「そしてこの俺っ!ダァハ様だぜ!よろしく!」
「だ、ダァハって、捜索班第3班の?」
「ああ、元はと言えばこんなにめちゃくちゃになったのは俺のせいなんだ。クリカちゃんの言ったことも守れなかったしな」
拠点の結界を率先して抜け出したのは彼だったのか。
「ありがとう」
「はっ!ありがとうなんて言われる筋合いねえや!俺はただの狩人。あんな化け物に太刀打ちできるかわかんねえぞ」
そこに近づくもうひとつの足音。
「それなら心配しなくていい。俺が魔法をかける」
美扇に匹敵するほどの超高速詠唱で、ダァハに何十もの魔法をかけた。
「グロウさん!傷だらけじゃないですか!早く手当を!」
「いい!今はこの戦いを見届ける」
集まった豪傑たち。
今、最後の戦いが始まる。