金の民救出作戦、其の肆
捜索班
「いやーやっぱり怖いなぁ。これ見つかったら死ぬよな・・・」
「ほら無駄口叩くな。兵士に見つかるぞ」
捜索班は一小隊四人で形成されている。
主な任務は金の民が幽閉されている地点の発見。
そしてその座標を情報伝達班に伝えるというものだ。
勿論、全員がクレア王国による不当、残虐、理不尽な仕打ちを経験しているため、この作戦に参加する意味はある。
クレア王国陥落が最終目的ではないが、一矢報いてやろうという気持ちは同じである。
「ダァハさん。前を見て。危ないですよ」
「おっとっと。ひいぃ。天井の梁の上って、こんな危険なとこ通らせんなよ」
捜索班第3班のリーダーはダァハという若人だ。
彼は狩猟を生業としているが、クレア王国に激安の値段で売ることを強いられている。
彼には守るべき家族がいるが、当然、賄うことは出来ないでいた。
「けっ。大判のひとつでも盗まなきゃ、割に合わねっての」
小隊はクレア王国・クレア城内に既に侵入しており、城中枢に聳える龍の塔を目指す。
ーーー
「さて、それで私たちだが。情報伝達班からの伝達を待つとして、その間は各班のリモ電から入力される情報を集めていく」
ボルダーはそういうと、一際大きなリモ電を取り出した。
「これはリモ電マスター。複数のリモ電の反応を見れる優れ物だ」
リモ電マスターの画面には、場内に侵入している各班の現在位置が示されている。
しかし、一つ疑問があった。
「一度ブロウさんは龍の塔まで行ったんですからそれをあてにすればいいのでは?」
ブロウは今作戦が始まるその前から、クレア王国に潜伏し、情報を集めていた。
金の民が龍の塔に幽閉されていることも、その過程で知ったようだ。
「確かに、儂は龍の塔の入り口までたどり着いた。しかしそれは長期にわたる潜伏の過程でたった一度に過ぎない。儂が用があったのは別件でな」
別件、というのは置いておいて。
つまり、龍の塔は随分と奥に存在するということだ。
その外形は、遠目から見ても目立つ大きな塔だが、隠密に侵入するには城内から入るしかない。
慎重な探索が不可欠だったのだ。
「まあそういうことだ。そこで、問題なのは龍の塔を見つけた後だ。捜索班は拠点に帰還。その後私たちが木の葉スーツを着て足早に目的地まで走り抜ける。ミオウくんは正面から行くしかないな」
俺は、常に着ている漆黒のスーツを自身の意思で脱ぐことはできない。
それどころか、上に何かを羽織ることもできないのだ。
「勿論、九里香嬢ちゃんと一緒にな」
「はい。ラインが作ったとはいえ、一度は七剣を倒しました。どんな敵にも負けません」
九里香は初めて会った時と大分印象が変わった。
今でも時頼おどおどするが、根はしっかりしているのだろう。
今では頼もしく感じる。
「何事も起きずに金の民全員を救出できるのがマストだ。絶対に成功させよう」
ーーー
「情報伝達班です!たった今、捜索班第3班が龍の塔の入り口を発見しました!座標をみなさんのリモ電に」
来た!
思いの外早かったが、早いに越したことはない。
「神拝終了までおよそ三時間。それで全てが終わる」
いよいよ、実行の時。