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無限スキル使いの男〜クソザコだけど幼女と世界を救います〜  作者: ちゃこる
金の民救出作戦【クレア王国編】
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金の民救出作戦、其の壱

作戦は始まった。

俺たち特別班はフィリアを守りつつ、正面から突入する手筈だ。

俺達の侵入を補佐する戦闘班と同じ船に乗っていた。

四元島はそれぞれの島が目視で確認できる位置にあるため、目標のクレア王国があるダム島までそう遠く感じない。

俺は武者震いとも呼べる感覚を覚えた。


フィリアと出会ってから長い月日が流れ、ついに悲願が達成される日が来た。

フィリアはこの世界で最も長い時間を共にした中だ。

なんとしても守り、約束は果たしたい。


「フィリア。もし危険を感じたら迷わず逃げろよ。俺達は強い。九里香のおかげで強くなった。俺の力が有効活用される時がやっと来たんだ」


当の九里香は緊張からか、もしくはボルダーと同じ船酔い体質なのか、身を船体から乗り出し吐き気を催していた。

すこし不安を感じたが、今までの九里香の態度を思い出すと心強く感じた。


神は何を思って俺をこの世界に送ったのか。

どうして全てのスキルを与えたのか。

どうしてそれらが使い物にならないのか。

どうして九里香に『複製』を与えたのか。


よくよく考えてみればこの世界のことをほとんど知らなかった。


「あとどれくらいで着く」


「あと三◯ほどかと」


結局俺は服を脱ぐことができず、木の葉スーツを着ないことになった。

木の葉スーツは隠密行動に長けたスーツで、着用すると周囲の色と同化する能力を持つ。

どこかの国の巨大なカメレオンから作られたとか。


霊切刀を磨きに行こうとした、その時。


「なんの音だ!」


ひゅぅ、と何かが落ちるような音が聞こえた直後、俺たちが乗っている船に巨大な何かが落ちてきた。

船艇を大きく破壊したそれは動き出し、軽やかに数メートル飛んだのち、次はしっかりと着地した。


「どんどーん♪おまいらなにしてんどーん?」


「なんだこいつは・・・!」


ダム島から飛んできたことは間違い無いが、その顔はボルダーに見せられた写真のどれにもなかった。


「おいどんはパティってんだどーん♪おまいらそんなに大群で何たくらんでやがる」


パティと名乗った大男はギロリと睨む。

船員の何名かは萎縮したように見えた。


これほどの威圧感。

只者ではない。


「すぐに情報伝達班を通して全船に伝えろ!敵に気付かれてる!作戦失敗だ!」


俺は九里香に合図をし、戦闘態勢に入った。

しかし、九里香はやはり本調子が出ず、吐き気を抑えきれずに嘔吐し、へたりこんだ。


「おい!九里香!しっかりしろ!」


俺が九里香の元へ駆けると、それを合図に戦闘班は一気にパティ目掛けて攻撃を仕掛けた。


「どんどん♪振動ん♪」


パティは空気に向かって正拳突き。

戦闘班はこれを好機と見て懐に飛び込んだが、皆吹き飛ばされ海へと落ちていった。


「ま、まさか・・・」


「おいどんの所持スキルは『振動(バイブレーション)』」


俺は脳内を泳ぎ『振動(バイブレーション)』についての情報を得た。

しかし、そのスキルにそこまでの力があるとは思えなかった。


「おっと。ちょいと違うどん」


最悪だ。


「おいどんのスキルは『(スーパー)振動(バイブレーション)』。レベルは86だどん」


俺はすぐに海を確認した。

残念ながら、落ちたものは誰一人として生きているとは思えなかった。


絶望した。


「この・・・クソ野郎が」


俺は怒った。

同時に恐怖した。


レベル86。

『超振動』は『振動』の何倍もの効果を示し、時に対象の心拍数を振動させ、心臓をパンクさせることもある。


ブロウが所持しているスキルにも『超回復』があるが、これらは上級スキル書から得られる。

彼も選ばれたものというわけだ。


「お前は・・・何者だよ」


パティは陽気に答えた。


「おいどんはティナシオスグループの虹剣の一人だどん。おまいらの作戦は筒抜けだどんどん♪」


考えうる最悪の状況だ。

神拝が行われる時期を狙ったのにそれが裏目に出た。

予定日がわかっている分対策もしているはずだ。


「クソォォォォォォオ」


「何が目的かは知らんどんが、大方王国転覆でも目論んでるんどんね。駆除するどん!」


金の民救出の目的はバレていない?

どこで情報が漏れた。


今は考えても仕方ない。

まずはこいつをなんとかする。

それからだ。


「おまいはどうしてそこの女の子が気分悪そうにしてるかわかるかどん?」


パティは九里香を指さした。


「おいどんがそいつの臓器に振動を送ってるからだどん。どんどーん♪これ程までに繊細なスキル捌き。すごいどん?すごいどーん?」


パティは陽気に笑った。


俺は心底怒った。


「おめぇみたいなふざけた野郎に・・・計画止められてたまるかってんだ!俺らはクレア王国をぶっ潰しにきたんだ。まずはてめぇだ」


俺は霊切刀を構えた。


「錬金っ!」


フィリアの声が響き、パティの腕が空気となって消え、腕の断面からは赤黒い血液が噴き出した。

振動に合わせて流れる血を止めるために、パティは九里香への振動送信を止めたようだ。


「フィリア!よくやった!九里香、いけるか?」


「は、はい。よくもやってくれましたね」


俺は九里香に複製させるためにスキルを発動。


「超振動!」


九里香がそれを複製し、レベル35で出力。


「超振動!」


パティが首から下げていたゴーグルが割れる程の威力。

脳震盪くらいは起こせただろうか。


「まだだ!カマイタチっ!」


「カマイタチっ!」


ザンッ。

九里香が飛ばした斬撃はパティの腹部を切り裂き、臓器を露出させた。


「とどめだ。錬金っ!」


「錬金っ!」


露わになった臓器を気体に錬金。


目の光を失ったパティは崩れ落ちた。


「はぁ・・・はぁ・・・やったぞ」


『超振動』レベル86の怪物をこうも簡単に倒せるとは予想外だった。


しかし、先の戦いで活躍するはずだった戦闘班の殆どは殉死してしまった。

弔う暇もなく、俺達はティナシオスグループが完全武装しているであろうダム島への一方通行の航路を進んだ。

遂にクレア王国に突入します。

ここからヒートアップしていきますので次回もぜひご覧ください

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