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無限スキル使いの男〜クソザコだけど幼女と世界を救います〜  作者: ちゃこる
遥かなる旅の始まり【エフォートビレッジ編】
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幼女と異世界の旅を始めた俺は勝ち組?

 突如テレポートしてしまったこの過疎地域には村人が一人しかいなかった。

 それが彼女。

 名はフィリア。

 年は12。


 太陽の照りつけるこの地に住んでいるにしては白い肌を持っている。


 日本のロリコンが目の当たりにした途端に興奮による大量出血大サービスは免れないほどのキュートぶりだ。


 しかし。

 まあ俺は?

 上品なお姉様がタイプなのでぇ?

 こぉんなロリには興味ないですけどねぇ!


「あたしの唯一使えるスキルは錬金。大体のものは物質そのものを変えられる」


 金にもダイヤモンドにも?だいすきだぁぁぁぁ!


ーーー


 この子にはトンデモスキルが備わっているらしい。

 もう敵無しじゃないかこのスキル?


 異世界に来て一日目で安眠できるはずもない。

 目の下をうっすらと黒く染めた俺は大きなあくびとともに起きた。


 今日からはどうにか生活できる地を探して歩くしかない。


 俺には取り戻さなくてはいけないものがある。


 寿司Tシャツだ。

 あの糞科学者共め。

 俺のアイデンティティ、そして唯一のお友達を幽閉しやがって。

 次会ったらけつ毛に火花を散らしてやる。


 一方フィリアは突如消えた村人を探しに。


 各々の目的を果たすべく、今日から異郷の地を、進んでいく。




 いやまてよ。

 俺の目的小さくないか?

 この子はもっと深刻な問題抱えてんのに。

 5歳年下の子の方が不憫(ふびん)とかまじ顔が立たないんですけど!


ーーー


「ギャー!なんだこの馬鹿でかいサソリはぁぁぁ!助けてフィリア様ァァァ!」


「錬金っ!」


 ばさぁ、という音と共に巨大サソリは跡形もなく砂となった。


「ふはははは馬鹿め!フィリア様に楯突くからこうなるんだよォあ。ふぁーははは!」


 もう俺はフィリアなしでは生きていけないようだ。


 当のフィリアは疲労困憊(ひろうこんぱい)な様子で倒れ込んだ。


「フィリア!」


 スキルを使うには体力を消費するらしい。

 俺のスキルは敵に効果がない。

 

 フィリアが戦闘のほとんどを請け負っていた。


体力付与(テイクアウト)体力付与(テイクアウト)体力付与(テイクアウト)…」


 『体力付与(テイクアウト)

 その名からわかる通り、相手の体力を回復できるスキル。


 俺は無制限にスキルを使えるらしい。

 早口言葉のように「テイクアウト」を詠唱し続けた。

 ついに、フィリアは立ち上がれる程まで回復した。


「やべ。詠唱しすぎて口がカラカラ」


 砂漠とまでは行かないがなかなかの猛暑だ。


「みおにいちゃんお水どうぞ」


 語呂がいいらしくみおにいちゃんと呼ばれている。 

 受け取った水を適度に口に含み、口内を潤わす。


「ありがとう、フィリア」


 太陽は南中に達している。

 ここまで歩いて村のひとつもないのは流石に心が折れてくる。

 村を見つけたらまずお姉さんを探さないと、とゲスな笑みを浮かべた。


 だってしょうがないじゃないか。

 昨日はフィリアがいたから下手なことできなかったし。

 俺だってお年頃だ。

 持て余してるのだ、色々と。


 さすがにフィリアに手を出すほど愚かではない。

 俺のポリシーに反する。

 意味の無い葛藤をひとしきり終えてから立ち上がる。

 また終わりの見えない砂地を歩き始めた。


ーーー


 夜になった。

 それはもう凍える夜だ。


 フィリアは錬金によって砂を最低限のパンと水に変えた。

 2人が入れるくらいのテントのようなものを張ると、その中で2人で夕食を取った。


 疲れが蓄積されていたのかすぐに眠りについてしまった。


 俺はフィリアを酷使しすぎているのではないだろうか。

 年端も行かない幼女をこんなにこき使って。

 日本のロリ協会とかに怒られないだろうか。


 フィリアの『錬金』は高価なものに変えるほど体力を使うらしい。

 砂をダイヤモンドに変えるのは難しいが、ダイヤモンドを砂に変えるのは簡単らしい。


 なので、見知っている敵対生物が現れたら倒すのは楽らしい。

 心臓や脳のような重要な器官のみを砂に変えれば生き物は絶命するからだ。

 しかしそれには対象の体構造を知っている必要がある。

 未知の生物相手には体全体を砂に変える必要がある。


 また、変える質量が多いほど、体力も大量に消費するらしい。

 体力は休息でも自然回復するが、俺が治す方が早そうだ。


 今日知れたのは、俺の陳腐なスキルも、蓄積すればいくらかは使い物になるということだ。

 例えば、集めた落ち葉の中に手を突っ込み、炎系のスキルを発動し続ければいつかは炎がつく。

 数打ちゃ当たる作戦だ。


 多少希望が見え、静かに嬉しくなる夜であった。


ーーー


 「体力付与(テイクアウト)体力付与(テイクアウト)体力付与(テイクアウト)…」


 フィリアの周りを光が包む。

 「テイクアウト」を何度も連呼する。

 旅に出るより先に、フィリアに増強系のスキルを掛けておけば、多少楽に進むはずだ。

 取り敢えず、『体力付与(テイクアウト)』、『速度上昇(スピードアップ)』、『体力増強(アブズオーブション)』、『防御(ディフェンド)』、『熱エネルギー変換』、『満腹感』、『視力向上(ウェールシーイング)』、『熱源感知(ヒートディテクター)』、『筋力増加(マッスルアップ)』、『聴力』、『帯電』、『炎耐性』、『眼球保護』、『身体防具』、『地形受信』。

 その他沢山のスキルをかけておいた。


 それぞれ何度も詠唱したのでとてつもない時間を要したが、それくらい長旅にはどうってことない時間だ。

 口がとんでもなく乾燥したが。


 きっとこれで昨日よりはマシに動けるはずだ。

 試しに朝ごはんを砂から錬金してもらった。

 体力がいつもより余っているらしい。

 やはり、旅の前に体力補給をした方が良さそうだ。


 テントのような何かを砂に戻すと余計な体力を使うので、そのままにしておくことにした。

 旅に必要な必要最低限の物資を砂から錬金し、2日目の旅へと出発した。


ーーー


 旅の途中で、フィリアの家族について聞いてみた。

 お父さんとお母さん、そして姉が一人いるらしい。

 姉の年は俺と同い年、可愛ければいいなあと妄想が爆発した。


 ある朝に突然村人が消えた事件は、フィリアにとってとても辛いことだっただろうと容易に推測できる。

 できるだけ掘り起こさないようにしようと胸に誓った。


 元引きこもりの俺も気が利くんだな、と、自分に驚く今日この頃。

 逆に今までどれだけ自分を卑下してたんだと自問自答してしまった今日この頃。


「みおにいちゃんの家族おしえて」


 俺は無表情になってしまった。

 フィリアの家族について聞いた俺だが、あまり自分の家族については聞かれたくなかった。

 なぜなら、




 俺のことを人間だと思っていたかも定かではないからだ。

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