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無限スキル使いの男〜クソザコだけど幼女と世界を救います〜  作者: ちゃこる
僕の夢への第一歩です!【大闘技会編】
36/63

End eavor

5日間にわたって開催される大闘技会。

1~3日が個人戦、4、5日目は団体戦という構成だ。

二日目の今日、レアド、ボルダー、リトーが、初戦に赴いた。

フィリアの気持ちも背負って。

大闘技会の後起こるであろう事件も見据えて。

事情を知る俺とボルダーさんは余計に気がたっていた。


ーーー


『大闘技会もついに折り返し!第六試合を始めます!ここ、Dチームで争うのは、新進気鋭の金髪少年!レアド!そして、ローブに身を包む謎の男、スパル〜!』


レアドはその黒いローブに見覚えがあった。

つい最近、メリーナ戦で窮地に立たされたレアド達を、形式上助けたパーティー、悪魔の下僕の一員である男だ。


過去に、レアドの母、メルティアを殺した一団と酷似していたため、勘違いをして目の敵扱いしてしまった相手でもある。

もっとも、その事を相手が気にしている素振りも見せなかったが。


「よぉ!久しぶりじゃね?金髪くんもこの大会参加してたんだ?」


「どうも…力試しもかねてですけどね。そして僕は金髪くんではなく、レアドです」


ドゥン!


開始の合図。


「そんじゃ、お前の力を見せてくれや」


呼吸を整える。


焦るな。

相手をよく見ろ。

ローブの下は?

どう動く。


レアドは『心眼』を殆どマスターしていた。

グーラからのアドバイスのみでここまでの飛躍に成功して見せた。


スパルは、相手が初めてあった時とは大きく異なっていることを感じ、一歩後ずさり。

その動揺を、レアドは見逃さなかった。


『心眼』は極度の集中ゆえ、時空さえもゆっくりに見える。

時には止まって見えることも。


紅範囲・絶対禁止(レッドパージ)


体技、紅範囲・絶対禁止(レッドパージ)

対象の周囲の空気を付近にある固体と『空間交換(チェンジ)』し、逃げられなくした上で、その固体を剣の胴で打ち飛ばし、対象に四方から命中させる。

レアドの剣術とスキルから成る体技である。


スパルはニヤリと笑ってみせると、人技を超えた跳躍をみせ、レアドと観客を圧倒した。


「上ががら空きだ。そんなんじゃ俺にかすり傷もいれられないぜ?」


「どうせここで攻撃当たっても傷できないですよね。術式結界貼られてるんですから」


攻防は続く。


「そんじゃ、俺も見せたりますかね」


スパルは左で掲げ、振り下ろす。


「ハタキ!」


「ぐあっ!」


スパルは空中にいるはずが、レアドは見えない何かに押し潰されるようにバランスを崩した。


『一体何が起こっているでしょうか!?解説のモラルさん!』


『スパルは悪魔の下僕屈指の力量を持ちます。未だに謎の多い集団ですが、メリーナとの戦闘でも、見えない攻撃を操っていたとの報告があります』


「おいおい。王都が秘密裏に結成したパーティーがこんなに大々的に紹介されていいんかね?」


「あなたたちが自由すぎるせいだと思いますが…それと、ちゃっかりモラルさんもいるんですね」


「モラルっていうと、メリーナ戦を指揮していた時の村の衛兵所の管理人か…ここにはもっとすげぇ奴らも来てるぜぇ」


スパルは親指を特別席に向けた。


「あそこに居んのは王都ボスフォアが誇るかっこ笑いの貴族長マリア様かっこ笑いだ。俺たちを直接雇ってる偉い貴族様だぜ」


貴族長マリアといえば、様々な戦争を指揮していた王都軍部最高責任者、ガウスと協力し、黄金教徒の進軍を退けた英雄として称えられる貴族だが、その裏、黒い噂は絶えない。


「そんなことはどうでもいいです。さあ、再開しましょう。ここから本気です」


「それは楽しそうだね」


レアドは再び制止。

先程よりも深くに意識を持っていく。

心臓の音さえも感知しなくなった瞬間。

感覚は研ぎ澄まされる。


「亜次御・壱の舞」


瞬間、レアドはスパルの背後をとった。

観客は反応に遅れるも、鳥肌が立つほどの迫力を受けた。


「なっ…!」


スパルは力が抜けたように振り向くも、


「亜次御・弐の舞」


すぐさまレアドの追撃。


「ぐぁぁぁ!このっ…!アドヘイシブ…」


スパルが体技を発動させるまでの瞬間さえ、レアドの研ぎ澄まされた感覚は逃さなかった。


「亜次御・参の舞」


「クソォアァァァォォ!」


剣が放つ爆風が会場を内側から弾いた。

特訓と時の村の村長から預かっているバルクレア製の短剣のおかげで、これほどまでの力を手に入れた。


『判定により!レアド選手の勝利ィィィ!』


観客は圧倒され、魅了された。


レアドの放つ体技のうち、亜次御シリーズは最近あみ出したものだ。

亜種、次世代、どんな敵でさえ討つという意味だ。

黄金教徒も、魔王軍も、イレギュラー性が増す今、『心眼』も覚え、対抗できる技を編出す必要があった。

三段階攻撃で確実に討つ。

舞のような荘厳な体技。


「ちくしょー。金髪にこんなところで負けちまうなんてな…マリア様はさぞお怒りだろうな」


スパルは余裕そうな顔をして立ち上がった。


「そういえば、悪魔の下僕は団体戦に出るんですか?」


「いんや。でねぇよ。ちょっといざこざがあってな。出場してんのは俺だけよ」


スパルは砂をはたくと、手をヒラヒラさせて退場してしまった。

特別席に貴族長マリアの姿はなくなっていた。


ーーー


『第七試合、Aチーム!ここで行われるのは伝説の戦い!元A級冒険者!エフォートビレッジの隠居!ボルダー・フイッシュvs言わずと知れた天才魔法少年!グロウ・グリーム!』


ボルダーはエフォートビレッジに留まっているあいだ、冒険者などの戦闘職業からは著しく離れていた。

その為、今活躍している冒険者などのことを把握できていなかったのだ。

レアドはよく調べていたようだが、まさか旅に出るとは思わなかったため、特に気にしていなかった。

竜殺のブレアやグーラがいい例だ。


パン!


試合開始。


「…観客の反応を見るに、随分と有名人みたいだね。去年は参加していたかな?」


「ええ。去年は運悪く、初戦で竜殺のブレア様と当たってしまいましたからね。悔しくて一年間、臥薪嘗胆の思いで魔法研究を続けていました。天才なんて呼ばれるようになったのはその道程です」


グロウという少年は、期待を背負うには随分小さな体をしていた。

白髪赤眼。

ボルダーはその儚さに危うささえ覚えたが、ここで負けるわけには行かない。


「あと…決勝まで一試合。ここで負けられんのだが」


「それは僕もおんなじですよ」


試合の合図とは関係なく、双方の集中力がゴングとなって聞こえてくるようであった。


「インベスト・ライフ・アドベント・スカイ・シャーク」


超高位魔法である、召喚魔法。

それも、空の番人と呼ばれたスカイ・シャーク。

この魔法で、既に力量は規格外であった。


しかし、それは西の都市で鍛え直したボルダーも然り。


即危険・駒切(チェックメイト)


一瞬にしてスカイ・シャークは細切りとなり、料理に化けた。


「随分と屈辱的なセレモニーですね」


「生憎、こんな雑魚を相手にするほど落ちぶれてはいないんだ。是非、君自身に相手してもらいたいね」


両者挑発。

そして即発。


「エンチャント・アペタイト・ブースト」


突如ボルダーを襲う空腹感。

胃のひっくりかえりそうな空腹感に体が強ばる。


「なるほど。下手に時間停止すれば、その間この苦しみを味わうことになりかねんな」


『時間停止』の欠点として、体のコンディションも持続される。

怪我の痛みは時間停止中もずっと味わうことになる。


「この術式結界。物理攻撃は反映しませんが、精神魔法は反映するようなんですよね。もっとも、あなた以前の相手はスカイ・シャークでイチコロでしたが」


思ったよりも厄介な相手だ。

ボルダーは抗えぬ空腹感に滑稽ささえ覚えた。


「ふはは…滑稽だな。数ある精神魔法の中で空腹感を選択するとは。そんなに私の侮辱が悔しかったのか」


「ええ、それはもう。できるだけ恥ずかしい決着を与えるつもりです」


少年はニッコリ笑うと、恐ろしく早い詠唱を次々と完成させる。


「さあ、あと一句唱えればあなたの負けは確定です。言い残すことはありませんか?」


ボルダーは歩く。


「さあ、君に一つ教えてあげよう。冒険者のことだ」


グロウは眉を(ひそ)める。


「ある冒険者は餓死寸前。空腹感さえ感じなくなったその時。獲物を見つけた。自分よりも何回りも大きく、通常なら勝てないであろう猛獣だ。しかし、その冒険者はそいつが食料に見えて仕方がなかった。その冒険者は戦った。そして勝った」


ボルダーは笑みを浮かべた。


「窮地は人を成長させる」


会場に衝撃。

爆風。


「な、なんだ!?」


「これが、窮地の進化だ」


魔法陣はかき消された。


「な、何をした!」


「知ってるか?この世の全てはスキルによって構成されているんだぞ。空腹感?生ぬるいな。そんなもの、いくらでも耐えてみせる」


「ひっ…」


「もし君が私を殺す気で魔法を使ったなら、君が勝ったかもね。くだらないこだわりは己を壊す」


ズバン。


やはり刹那。


「見え…ない…」


グロウは倒れた。


「当たり前だ。私の速度は速いとかいうレベルではないからね」


『勝者!ボルダァァァァァ!』


ーーー


「私が勝って、フィリアちゃんを励ますんだ」


『第七試合、Cチーム!元武器屋のスレンダー少女!リトー・バッツェvs七大腕の一人、陸の腕、プレーリー・マックスゥゥゥゥ!』


七大腕(しちだいかいな)

王都ボスフォアの定める七人の英雄。

グーラの家系、ニュートリアス家の長男、クレストもその一人だ。

ともかく、とてつもなく強い。


「やあやあやあやあや?あれ?どこで止まるんだっけ?」


「こ、こんにちは」


リトーはナイフを構える。

ここ、破邪神の誕生地で購入したナイフだ。

値は張ったが、黒曜石製で耐久力がある上、切れ味も良いとのことで購入した。


ゴーン!


試合開始。


「早速なんだけど、決勝の為に、僕の僕の僕のぼの?あれ?どこで止まるんだっけ」


「先手必勝ですよね」


リトーはナイフをしっかりと握った。


熱圏・蒸化(ヒートワールド)


熱圏・蒸化(ヒートワールド)

リトーの細身が可能にした体技。

素早く武器を振り、空気を振動させる。

この振動を対象の体内にめぐらせることで、体内から破壊することを可能にした。


「そしてっ!カマイタチ!」


西の都市での特訓で、狙った場所に打てるようになった『切風(カマイタチ)』。

命中速度も、精度も、攻撃力もあがった。


「うーん…俺って止まれないんだよなぁ」


「なっ!」


その攻撃を、陸の腕プレーリーは片腕で止めていた。


リトーが判定を気にするも、勝利判定が出ず、悪寒を感じた。


「ま、いっか!それじゃあ始める?」


「これが七大腕の力…」


ズドン。


リトーは吹き飛ばされ、壁に激突。

判定はプレーリーの勝利。


「あれ?吹き飛びすぎたか〜。ごめんごめんごめんごめ?あれ?どこで止まるんだっけ」


「ぐふっ…」


術式結界があってもこの衝撃。


ーーー


ドアをノック。


「どうぞ」


フィリアはベッドに座っていた。

少し黒くなった目じりを眠そうに擦っていた。


「ちゃんと寝たのか?大闘技会が終わったら次はお前の家族達を助ける番だ。今すぐにでも行きたいが、どうやら監視してるやつがいるらしい」


そして、ウォンの死体も無くなっていた。


「俺はもう負けちゃったけど、全く参っちゃうよな。あんなに強い奴らがいるなんて」


話が続かない。


「ねえミオ。あたしってなんなの」


「え。え?なんなの…とは?」


咄嗟(とっさ)の質問に返答が見当たらない。


「あたしって何かおかしいんでしょ? 村の皆が襲われた夜、あたしは宝だから守れって言われたの」


伝えるべきか。


「お前は…フィリアは金の巫女なんだ」


「金の…巫女?あたしが?」


フィリアは目を丸くしていた。


「だって金の巫女はあたしのおねーちゃんのことで…」


「いや、お前なんだ」


フィリアは勘違いをしていたらしい。

自覚もなかったようだ。


「だからお前は狙われるんだ。でも安心しろ。俺たちがお前を守るから」


ーーー


結局、ラディアンスは誰一人決勝戦には至らなかった。


ボルダー四位。

レアド七位。

リトー八位。

美扇十四位。

フィリア判定無し。


フィリア辞退により、団体戦も欠場。


三日目は決勝戦を見ていた。

竜殺のブレアvs陸の腕プレーリーによるもので、勝者はブレアだった。

破邪神のアンロックキーは王都に保管されたらしい。


そして俺達は…


ーーー


「皆、大闘技会お疲れ様。来年も参加してみたいな」


大闘技会は残り二日、団体戦を残していたが、ラディアンスは発つことにしていた。

金の民の行方が少しずつわかってきたからだ。

フィリアの当初の目的は村人の救出だ。

それに、クレア王国が関与していることがほぼ自明となった。


「やるしかない。いざと言う時にはリモ電を使おう」


大闘技会で、新たにアルカナ、ブレア、ブロウ、その他10人とイデア更新できた。

これからも積極的にコンタクトを取ろうと思う。


「神の御加護、よし。装備品、よし。お金、ボルダーさんの活躍によりよーし!」


万全ともいえた。

やるしかない。


「行くぞ!今日までに発着上に到達するんだ!」

大闘技会編、ありがとうございました!

補填されていない点がいくつかありましたが、いつか全てを語ることができるように努めたいと思います。

これからもよろしくお願いします。

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