表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無限スキル使いの男〜クソザコだけど幼女と世界を救います〜  作者: ちゃこる
僕の夢への第一歩です!【大闘技会編】
33/63

FILIA

「あれ?ここどこ?」


フィリアは『過去の写鏡』を手にすると、美扇と同じように回想を客観視したようになった。


「あれ?まま?…まま!ママ!」


必死に叫ぶも聞こえるはずがない。


「今日はフィリアちゃんの7歳の誕生日!はいこれ、欲しがってたタヌポンのぬいぐるみ!」


まだ7歳のフィリアはぬいぐるみを受け取ると、パァと顔を輝かせた。


「ありがとうママ!」


「良かったなあフィリア。よし!お父さんもなんか買ってやろう」


「ほんと!?」


ああ、楽しかったな、と感じながらフィリアは悲しくなった。

どうしてみんなが居なくなってしまったのか。

美扇達と旅をする中で、楽しく感じることも多かったが、やはり家族に長期間会えないのは悲しかった。


画面が切り替わる。


「フィリアだけでも逃がすんだ!」


「あの子は金の民の希望だ!」


大人達が叫ぶ声が聞こえ、目が覚めた。

少女は暗闇で自分がどこにいるのか分からなく、騒音が去っても日が差すまで外に出ることが出来なかった。


「ママ?パパ!お姉ちゃん!」


村にはもう誰もいなかった。

理不尽な現状に涙が零れた。

そんな時、やかましい声が響いた。


「どこじゃここはぁぁぁぁぁ!?」


「ミオ…」


あの時美扇が訪れていなければ、自分はあのまま消えてしまったかもしれない。


「行こう。みんなを探しに」


気持ち悪かったなんて嘘。

本当は温かかったんだ、あのハグ。


視界が再び白く染まりかけたその時。


ガガガ…


ノイズが響きわたり、画面が切り替わった。


「死ね!この疫病神が!」


「おがあざん!」


なに…これ

フィリアの記憶ではない。

裸で木に縛り付けられ罵詈雑言を浴びせられた女性は焼かれた。

周りには家族もいたようだ。


フィリアが困惑している時、自分しか居ないはずのこの異空間に、他人が介入した。


「初めまして。フィリアちゃん…だったかしら」


その顔は正しく焼かれていた女性。

美しい顔立ちにも関わらず、とても不気味で鳥肌が立つ。

本能が拒絶しているようだ。


「あなたは…最近あたしに話しかけてくる人?誰なの?」


その女性はかぶりを振って答えた。


「違う。違うわよ。私はあなたと同じ、奪われたもの」


返答になっていないような気がするが、重要なのはそこではない。


「…名前は」


「悪霊のペザトリア。そう呼ばれてるわ」


ゾッ


悪寒が背中を走る。

フィリアの小さいからだが小刻みに震え出す。

いつの間にか空間は白くなり、体も存在していた。


「ゴーストフォレストでブレアさん達が倒したはずじゃなかったの?なぜあたしに憑いてるの?」


疑問しかない。

最近聞こえる声は疲れてるせいだと思い込んでいたが、どうやら本当に悪霊らしい。


「私はね。生きてた時に酷い残酷な、辛い事を沢山されてきたわ」


美しさ故に生まれた暴力。

妬みや嫉みが噂をかき立て、最終的に魔女だと信じ込まれてしまった。


「…あなたはあたしに入って何がしたいの?」


ペザトリアは嬉しそうに笑った。


「あたしは復讐したいだけ。あなたの行き場のない不安や怒りと同調して私はあなたとひとつになったわ」


理不尽だ。

しかしどうしようもないことも分かっていた。

悪霊のペザトリアはA級悪霊。

相当レベルの高い除霊系スキルを介さなければ引き剥がすことは出来ない。

他にある方法は、未練を満たすことで成仏してもらうしかない。


「あたしはどうすればいいの…?」


フィリアはおかしくなりそうだった。

それもそうだ。

自分の体に醜く美しい悪霊が憑いてるということがどれほど精神的な負担となることか。


「安心してちょうだい。普段は話しかけなければ、体を乗っ取ることも出来ないから。最近話しかけてたのは力が回復した私の存在に気づいて欲しかったからよ」


不気味な微笑をうかべる。


「私にだって息子がいたわ。人間の心は覚えてる。私がA級に指定されたのは利己的なクズ貴族を一族ごと呪ったから…。悪い人以外には手出ししたことがないわ」


フィリアは落ち着きを取り戻した。


「絶対に暴れないって約束する?」


おずおずと質問するフィリアに再び笑顔を向けると、


「もちろんよ。私の目的はあくまで復讐…。タミル村の連中を屠ることだけ」


タミル村。

フィリアは聞き覚えがあった。

ボルダー、美扇と共にバード大陸からディーム大陸に戻る途中、立ち寄った村で、そこで美扇がバード大陸で指名手配を受けていることがわかったのだ。


「確か最近通ったはずだけど…」


「ええ知ってるわよ。そしてもう一度通ることもね…」


一気に雰囲気が逆転する。

フィリアは吐き気を覚えるも、意識のみの空間で実際に嘔吐することはない。


「うぇっ…あたし…うぷ」


ペザトリアがふぅ、とため息をつくと吐き気がやんだ。


「はぁ…んっ…絶対に何も起こさないでよ」


ペザトリアは無言で頷いた。


だんだんと空間が遠のいていく感覚がした。


その空間にペザトリアのみを残して。


ーーー


「っ…!」


「フィリア!大丈夫か?相当魘されてたぞ」


フィリアは悪い夢を見たように冷や汗をかいていた。


「ついに対面したか、フィリア嬢ちゃん」


ボルダーが全てを悟ったように宥めた。


「ボルダーおじさんは知ってたの?」


ボルダーは弱気に頷いた。


「すまない。言い出せなかったんだ」


それを言えば俺も同じだが、フィリアの話に耳を傾けた。


「悪さをするつもりは無いけど、タミル村で酷いことをされたから、そこで復讐するって」


ボルダーは思案。


「タミル村に行けばフィリア嬢ちゃんの中から悪霊のペザトリアは出ていく…。しかしタミル村の人々も傷つける訳には…」


どっちにしろ被害は悲惨だ。

どれほどフィリアの中でペザトリアが我慢できるかすら分からないのだから。


「取り敢えず残り三人、済ましちまってくれ」


すぐにレアドが過去の写鏡を手に取った。

その間、俺とリトーはフィリアを落ち着かせるために、ずっと頭を撫でていた。


ーーー


「よし、チビ共!顔に模様は入ってるな!?じゃあもう行け!行け!」


「ありがとうナガル。お陰で大闘技会にも、ヘヴン海域越えも無事に出来そうだ」


ナガル達、背伸び村の人々には感謝が絶えない。

人っていうのはこんなに心の埋まるような存在だったのだろうか。


「いいってことよ!俺も早くクソチビ共に追いつけるよう!高みの最高点を目指して身長長くして待ってるぜ!」


「いや、待つのは俺たちの方だろ!」


ナガルも仲間にしたいほど槍の使いに長けていたが、無理やり連れていく訳にもいかない。

いつの日かの再会を願ってイデア更新してもらった。


「いつでも連絡くれよな!そんじゃ!」


手短すぎる挨拶を交わすと、ナガルは直ぐにかえってしまった。


「なんたってそんなに急いでんだ…」


これで一先ず、全員神の御加護を受けることに成功し、顔には模様が刻まれた。


「そんじゃちょっと早いけど、向かうか!破邪神の誕生地へ!」


俺達は再び歩き出した。

遂に始まります。

大闘技会!

お楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ